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第3幕 溢れる疑惑
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授業が終わり帰り支度をしていると、悠斗が迎えにやって来た。けれど珍しい人物に首を傾げてしまう。悠斗のうしろに多澤雅臣も居たからだ。
今日の下校は不思議な面々揃いだった。なぜか村上も一緒に居る。
「なぁ悠斗、今日なにかあるのか?」
「村上君はどうして着いて来たんだろうね。雅臣は本借りにうちに寄り道」
「悠斗の家、マニアックな本あるだろう?」
「なになに? マニアックって! 王子、俺も行っていい⁇」
村上はどうやら流れに便乗しただけらしい。
「あー、確かにおじさん、凄く本好きだもんな」
「うん、瀬菜はおじさん帰って来てるし、そのまま帰る?」
「んー、そうだよな……。明日までしかいないし、オヤジの相手頑張るわ」
「うん、それがいいよ。たまには水入らずでね」
「柳ちゃんちのパパりんも気になる~」
「瀬菜のうちはダメだよ! 村上君は仕方ないから僕の家ね」
「やった~♪ 王子の隠れたベールを……ふふふ~♪」
なにやら不気味な言葉を呟く村上に、お前ってそんなに本好きだった? と思いつつ、そういえばこの間のお礼を多澤にしていなかったと話しかける。
「多澤、その……こないだは色々サンキューな」
「あぁ、おかげで八つ当たりはなかった」
「はは……それは良かった……のか?」
「まーな……」
じーっと多澤に顔を見られ、なに? と首を傾げる。
「ふーん。なにがいいのかね」
「なにって?」
そう質問するが、鼻で笑われそれ以上はなにも言おうとしない。多澤はいつも意味深だ。前回助けてもらった恩があるが、毎回俺を不快にもさせる。馬鹿にしたような態度に、お礼しなきゃ良かったと心の中で毒づいた。
玄関を開ける前にひと呼吸し「ただいま」と言いながら扉を開ける。朝よりもだいぶ落ち着いたオヤジが笑顔で玄関まで出迎えてくれる。
「お帰り瀬菜。夕飯は瀬菜の好きなハンバーグシチューだよ♪」
「マジで! やったー! 俺、あれ滅茶苦茶好き!」
「ふふふー、やっと瀬菜が笑ってくれた。お父さん頑張っちゃった! お母さんももうすぐ帰るって連絡あったから、揃ったらみんなで食べよ」
「おう! なら俺、先に風呂入ってくる!」
三人揃っての夕食は久々だ。なんだか心がウキウキする。
「瀬菜も旅行一緒に行けば良かったのに。お父さん悲しい」
「俺は宿題が山盛りの予定。ひとりじゃ片付けられそうにないもん」
しゅんとするオヤジに夏休み中の予定を聞かれ、真面目ぶってそう言った。
「宿題もいいけど、はい、これ」
「なに……」
おふくろが俺にテーマパークのチケットとおこずかいを渡してくる。
「私達だけ旅行じゃ、なんだか忍びないのよ。瀬菜が断ったにせよ悪いから。悠斗君と行ってらっしゃい」
「それはお母さんからで、こっちはお父さんから」
綺麗にラッピングされた包みを渡され、さらにキョトンとする。
「ちょっと早いけど、旅行中でお祝いできないから」
「あ……そっか……」
まさかのサプライズに驚き涙ぐんでしまう。ラッピングを開けると、白と濃いめのグレーのボーダーで、右側の裾にウサギの顔のシルエットの刺繍が入った俺に似合いそうな水着が入っていた。おふくろのプレゼントと合わせて選んでくれたのかと思うと嬉しくなる。
「旅行のお土産も買ってくるね!」
「なにか欲しいものあれば言ってちょうだいね?」
「いや、俺これで十分だし! 二人共ありがとう! へへへっ♪」
喜ぶ俺の姿にホッとした様子の二人。俺の誕生日に二人揃って旅行に出かけることを、ずいぶん気にしていたようだ。
「旅行、楽しんで来いよな。ほら、新婚旅行みたいだし。俺、弟か妹、前から欲しかったんだぁ~♪」
「「ばっ、馬鹿なこと言わない‼︎」」
照れる両親を揶揄いながら、その日の夜は和やかにゆっくりと更けていった。
今日の下校は不思議な面々揃いだった。なぜか村上も一緒に居る。
「なぁ悠斗、今日なにかあるのか?」
「村上君はどうして着いて来たんだろうね。雅臣は本借りにうちに寄り道」
「悠斗の家、マニアックな本あるだろう?」
「なになに? マニアックって! 王子、俺も行っていい⁇」
村上はどうやら流れに便乗しただけらしい。
「あー、確かにおじさん、凄く本好きだもんな」
「うん、瀬菜はおじさん帰って来てるし、そのまま帰る?」
「んー、そうだよな……。明日までしかいないし、オヤジの相手頑張るわ」
「うん、それがいいよ。たまには水入らずでね」
「柳ちゃんちのパパりんも気になる~」
「瀬菜のうちはダメだよ! 村上君は仕方ないから僕の家ね」
「やった~♪ 王子の隠れたベールを……ふふふ~♪」
なにやら不気味な言葉を呟く村上に、お前ってそんなに本好きだった? と思いつつ、そういえばこの間のお礼を多澤にしていなかったと話しかける。
「多澤、その……こないだは色々サンキューな」
「あぁ、おかげで八つ当たりはなかった」
「はは……それは良かった……のか?」
「まーな……」
じーっと多澤に顔を見られ、なに? と首を傾げる。
「ふーん。なにがいいのかね」
「なにって?」
そう質問するが、鼻で笑われそれ以上はなにも言おうとしない。多澤はいつも意味深だ。前回助けてもらった恩があるが、毎回俺を不快にもさせる。馬鹿にしたような態度に、お礼しなきゃ良かったと心の中で毒づいた。
玄関を開ける前にひと呼吸し「ただいま」と言いながら扉を開ける。朝よりもだいぶ落ち着いたオヤジが笑顔で玄関まで出迎えてくれる。
「お帰り瀬菜。夕飯は瀬菜の好きなハンバーグシチューだよ♪」
「マジで! やったー! 俺、あれ滅茶苦茶好き!」
「ふふふー、やっと瀬菜が笑ってくれた。お父さん頑張っちゃった! お母さんももうすぐ帰るって連絡あったから、揃ったらみんなで食べよ」
「おう! なら俺、先に風呂入ってくる!」
三人揃っての夕食は久々だ。なんだか心がウキウキする。
「瀬菜も旅行一緒に行けば良かったのに。お父さん悲しい」
「俺は宿題が山盛りの予定。ひとりじゃ片付けられそうにないもん」
しゅんとするオヤジに夏休み中の予定を聞かれ、真面目ぶってそう言った。
「宿題もいいけど、はい、これ」
「なに……」
おふくろが俺にテーマパークのチケットとおこずかいを渡してくる。
「私達だけ旅行じゃ、なんだか忍びないのよ。瀬菜が断ったにせよ悪いから。悠斗君と行ってらっしゃい」
「それはお母さんからで、こっちはお父さんから」
綺麗にラッピングされた包みを渡され、さらにキョトンとする。
「ちょっと早いけど、旅行中でお祝いできないから」
「あ……そっか……」
まさかのサプライズに驚き涙ぐんでしまう。ラッピングを開けると、白と濃いめのグレーのボーダーで、右側の裾にウサギの顔のシルエットの刺繍が入った俺に似合いそうな水着が入っていた。おふくろのプレゼントと合わせて選んでくれたのかと思うと嬉しくなる。
「旅行のお土産も買ってくるね!」
「なにか欲しいものあれば言ってちょうだいね?」
「いや、俺これで十分だし! 二人共ありがとう! へへへっ♪」
喜ぶ俺の姿にホッとした様子の二人。俺の誕生日に二人揃って旅行に出かけることを、ずいぶん気にしていたようだ。
「旅行、楽しんで来いよな。ほら、新婚旅行みたいだし。俺、弟か妹、前から欲しかったんだぁ~♪」
「「ばっ、馬鹿なこと言わない‼︎」」
照れる両親を揶揄いながら、その日の夜は和やかにゆっくりと更けていった。
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