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第2幕 逃亡劇の果てに
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『瀬菜、僕お家帰るね』
『えーもう帰っちゃうの? 僕まだゆうちゃんと一緒に遊びたい……』
『でも、もう寝る時間だよ?』
時計の針は夜の十一時前を指している。七歳の子供なら寝るには遅いぐらいだ。ゆうちゃんはしばらく時計を見ると、おうちの電話貸してと言ってくるので、電話があるリビングまで手を繋いで一緒に下りた。隣で聞き耳を立てながら、ゆうちゃんの電話が終わるのを待っていた。
『かーさん? うん……。ごめんなさい』
謝っている様子から、帰りが遅いことを怒られているようだ。
『今日ね、もう遅いし外出るのも危ないから、瀬菜の家に泊まるよ。明日朝瀬菜と一緒に家に戻ります。うん、ごめんなさい……』
ゆうちゃんの言葉に嬉しくなる。今日は両親から帰宅が遅くなると連絡があり、寂しくて堪らなかった。電話を終えたゆうちゃんに抱きつき喜びを訴える。
『お泊まりいいって? ずっと一緒にいれられる⁇』
『うん、瀬菜と一緒なら仕方ないって。でももう遅いし、お風呂入ったら寝るよ?』
『うん! えへへ、嬉しいなー。じゃお風呂行こ!』
ゆうちゃんの手を引きお風呂に二人で入ると、お互いに洗いっこをして湯船に入り水の掛け合いっこをする。お風呂でひとしきり遊ぶと、ベッドに一緒に寝転び話をした。
『ゆうちゃんお泊まりしてくれてありがとう。僕、寂しかったから凄く嬉しい!』
『うん、僕も瀬菜とずっと一緒で嬉しいよ。明日起きたら、かーさん瀬菜の分のご飯用意してくれるって。一緒に食べに行こ?』
『うん! ゆうちゃん大好き!』
『瀬菜……僕も凄く好きだよ』
ゆうちゃんは僕を抱きしめ、僕も抱きしめ返す。二人であったかいねと言い、話をしているうちに眠りについた──。
◇ ◇ ◇
「……ゆうちゃん、好き……」
シーツの上を手のひらが熱を探るように彷徨う。夏だというのになぜか肌寒く、ぬくもりに触れると安心し頬が緩む。
「……瀬菜……夢、見ているの? 本当……なに? 挑発してる?」
ゆうちゃんの背中に腕を回しギュッとする。違和感を感じ眉を寄せる。少しずつ覚醒し、うっすら瞼を開けると、ゆうちゃんの顔をぼんやりと見つめる。ゆうちゃんはそんな俺の行動に、笑みを浮かべ少し困った顔をしている。
「……ゆうちゃん……どうしたの?」
「瀬菜、その可愛さ反則だから」
唇をすくい取られ深く口腔を愛撫される。粘膜が擦れクチュクチュと舌を絡められる。
ゆうちゃん積極的だけど!
どーしてキスして……ん?
待て待て。ゆうちゃんデカくね?
「──ちょっ……ん、ふっァ……た、たん、まぁッ、たんまぁーー!」
「……んっ……瀬菜から誘ったのに……」
「誘ってない! 夢……んっ、小さいときの見ていただけッ」
「小さい頃の? あのときの瀬菜って、俺にぴったりくっ付いてきて可愛かったよね?」
「うっ……今は可愛くなくて悪かったな!」
「クスッ、今も違う意味で十分可愛いよ?」
悠斗のキスから逃れようと逆向きになり背中を向けると、うしろから抱きしめられ首筋を吸い上げられる。
「ちょっと……もうキスマーク付けるなよ! 身体中酷いことになってるだろ!」
「うん、いっぱいだね? マーキングぽくて唆る」
「そんなもん付けなくても、俺お前のこと好きだよ! だからもうこんないっぱい付けんな!」
そう言うと悠斗は急に黙り、ぴたりと動きを止めた。
「──もう瀬菜ってば……本当に煽るの上手だね?」
尻に悠斗の熱いモノが当たり、蕾にヌルりと生温かい液体を塗りたくられたかと思うと、ズズッっと陰茎が無遠慮に入り込んできた。いきなりのことに身体がビクンっと跳ね上がる。
「んんっ──! なんれッ、いれッ──ぅ!」
「ゴメン。瀬菜が煽るから勃っちゃった。まだ入り口柔らかいから痛くないでしょ? こっちにもマーキングしてあげるね♡」
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