王子×悪戯戯曲

そら汰★

文字の大きさ
上 下
54 / 716
第2幕 逃亡劇の果てに

33

しおりを挟む

◇ ◇ ◇


『瀬菜、僕お家帰るね』
『えーもう帰っちゃうの? 僕まだゆうちゃんと一緒に遊びたい……』
『でも、もう寝る時間だよ?』

 時計の針は夜の十一時前を指している。七歳の子供なら寝るには遅いぐらいだ。ゆうちゃんはしばらく時計を見ると、おうちの電話貸してと言ってくるので、電話があるリビングまで手を繋いで一緒に下りた。隣で聞き耳を立てながら、ゆうちゃんの電話が終わるのを待っていた。

『かーさん? うん……。ごめんなさい』

 謝っている様子から、帰りが遅いことを怒られているようだ。

『今日ね、もう遅いし外出るのも危ないから、瀬菜の家に泊まるよ。明日朝瀬菜と一緒に家に戻ります。うん、ごめんなさい……』

 ゆうちゃんの言葉に嬉しくなる。今日は両親から帰宅が遅くなると連絡があり、寂しくて堪らなかった。電話を終えたゆうちゃんに抱きつき喜びを訴える。

『お泊まりいいって? ずっと一緒にいれられる⁇』
『うん、瀬菜と一緒なら仕方ないって。でももう遅いし、お風呂入ったら寝るよ?』
『うん! えへへ、嬉しいなー。じゃお風呂行こ!』

 ゆうちゃんの手を引きお風呂に二人で入ると、お互いに洗いっこをして湯船に入り水の掛け合いっこをする。お風呂でひとしきり遊ぶと、ベッドに一緒に寝転び話をした。

『ゆうちゃんお泊まりしてくれてありがとう。僕、寂しかったから凄く嬉しい!』
『うん、僕も瀬菜とずっと一緒で嬉しいよ。明日起きたら、かーさん瀬菜の分のご飯用意してくれるって。一緒に食べに行こ?』
『うん! ゆうちゃん大好き!』
『瀬菜……僕も凄く好きだよ』

 ゆうちゃんは僕を抱きしめ、僕も抱きしめ返す。二人であったかいねと言い、話をしているうちに眠りについた──。


◇ ◇ ◇


「……ゆうちゃん、好き……」

 シーツの上を手のひらが熱を探るように彷徨う。夏だというのになぜか肌寒く、ぬくもりに触れると安心し頬が緩む。

「……瀬菜……夢、見ているの? 本当……なに? 挑発してる?」

 ゆうちゃんの背中に腕を回しギュッとする。違和感を感じ眉を寄せる。少しずつ覚醒し、うっすら瞼を開けると、ゆうちゃんの顔をぼんやりと見つめる。ゆうちゃんはそんな俺の行動に、笑みを浮かべ少し困った顔をしている。

「……ゆうちゃん……どうしたの?」
「瀬菜、その可愛さ反則だから」

 唇をすくい取られ深く口腔を愛撫される。粘膜が擦れクチュクチュと舌を絡められる。

 ゆうちゃん積極的だけど!
 どーしてキスして……ん?
 待て待て。ゆうちゃんデカくね?

「──ちょっ……ん、ふっァ……た、たん、まぁッ、たんまぁーー!」
「……んっ……瀬菜から誘ったのに……」
「誘ってない! 夢……んっ、小さいときの見ていただけッ」
「小さい頃の? あのときの瀬菜って、俺にぴったりくっ付いてきて可愛かったよね?」
「うっ……今は可愛くなくて悪かったな!」
「クスッ、今も違う意味で十分可愛いよ?」

 悠斗のキスから逃れようと逆向きになり背中を向けると、うしろから抱きしめられ首筋を吸い上げられる。

「ちょっと……もうキスマーク付けるなよ! 身体中酷いことになってるだろ!」
「うん、いっぱいだね? マーキングぽくて唆る」
「そんなもん付けなくても、俺お前のこと好きだよ! だからもうこんないっぱい付けんな!」

 そう言うと悠斗は急に黙り、ぴたりと動きを止めた。

「──もう瀬菜ってば……本当に煽るの上手だね?」

 尻に悠斗の熱いモノが当たり、蕾にヌルりと生温かい液体を塗りたくられたかと思うと、ズズッっと陰茎が無遠慮に入り込んできた。いきなりのことに身体がビクンっと跳ね上がる。

「んんっ──! なんれッ、いれッ──ぅ!」
「ゴメン。瀬菜が煽るから勃っちゃった。まだ入り口柔らかいから痛くないでしょ? こっちにもマーキングしてあげるね♡」
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

処理中です...