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第2幕 逃亡劇の果てに
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俺の気持ちなどどうでも良さうに言う悠斗に、頭が沸騰し怒声を吐き出す。
「それだけだって⁉︎ 俺はショックだったんだぞ‼︎ 手伝いだって口実で本当は俺のことが面倒──っ」
言い終わる前にガバッと抱きしめられ「良かった……」と呟く悠斗は、俺を強く抱きしめながらポツリポツリと話し始めた。
「誰が見たか知らないけど。夕涼みの手伝いで、足挫いた子がいたんだ。俺が怪我させたみたい。だから家まで送って行った。途中でその子、歩けなくなって公園のベンチで休んでいた。そしたらいきなりキスされて……。たぶん、それ見られたんだと思う。だから彼女じゃない」
俺の想像とは全く異なることを言われるが、昂った感情では怒りが収まらない。それに俺の機嫌を取るために、適当なことを言っているのかもしれない。
「──ッ、嘘だ‼︎」
「嘘ついてどうするの? 瀬菜は俺の話より、他人の噂を信じるの?」
「うっ、それは……」
親友だと言っておきながら、自分は悠斗の言葉をなぜ素直に受け止めようとしないのだろう。
「……悠斗が嘘つくとは思えない。でも、辻だって嘘は言っていない。見た事実を話してくれただけだ。話を聞いたとき、内緒にされたことに腹が立った。それに悠斗に彼女ができたら、俺はもう悠斗に甘えられない……そう思うとさ、なんか……離れなきゃって……」
悠斗の俺を抱きしめる力が強まる。
「それはダメ……甘えてよ」
「でも、いずれは……」
俺達、別々に過ごしていくだろ?
そう言いたくても言葉が喉に詰まる。
「……キスした子さ、胸のでかい可愛い子なんだろ?」
「うん、胸は大きいけど、瀬菜のほうが可愛い。キスしたくなかった」
「なんだよそれ……そんなに嫌そうに言うなよ」
「嫌だよ……吐きそうになったし」
完全否定する悠斗の言葉になぜだかスーッと、俺の苛立ちが消えていく。久々に感じる悠斗のぬくもりが心地良くて、俺も悠斗の背中に自然と腕を回していた。
「もし、仮に彼女……は、まぁ、できないけど。ほかの出来事で今までと違うことが起きたら、瀬菜には一番に伝える。……だから、もうなにも言わないで逃げたりしないで?」
背中に回していた手のひらで悠斗の背中を宥めるように叩くと、悠斗は腕の力を緩めて顔を上げる。その面持ちは今にも泣きそうで、無視したことを反省させられた。
「悠斗……ごめん」
俺が謝罪の言葉を呟くと、ふにゃりと微笑み俺の肩口に顔を埋めてきた。
「あーあ、瀬菜のせいでこの三日間地獄だった」
「うん、悪かった」
「嫌われたと思って、夜も眠れなかった」
「だから、ごめんってば」
「看病していただけなのに、彼女とか言い掛かりつけられるし、無視されるし」
「それも、ごめん……なさい……」
「やっと瀬菜見つけたと思ったら、手は振り払われるは凄く冷たいし怒ってるし」
「あ──っ! もう、分かったよ! なんでもいうこと聞くから、許してくださいっ‼︎」
俺が放った言葉に、パッと顔を上げ嬉しそうにしたかと思えば、目を細めニタッと悪そうな笑顔に変わっていく。
「本当に、本当になんでも?」
あれ……ヤバイまずった? と思う俺に、悠斗は衝撃的なことを言ってくる。
「今日から三日間、瀬菜は俺の奴隷ね♡ いっぱい言うこと聞いて、いっぱい慰めてね♡」
「それだけだって⁉︎ 俺はショックだったんだぞ‼︎ 手伝いだって口実で本当は俺のことが面倒──っ」
言い終わる前にガバッと抱きしめられ「良かった……」と呟く悠斗は、俺を強く抱きしめながらポツリポツリと話し始めた。
「誰が見たか知らないけど。夕涼みの手伝いで、足挫いた子がいたんだ。俺が怪我させたみたい。だから家まで送って行った。途中でその子、歩けなくなって公園のベンチで休んでいた。そしたらいきなりキスされて……。たぶん、それ見られたんだと思う。だから彼女じゃない」
俺の想像とは全く異なることを言われるが、昂った感情では怒りが収まらない。それに俺の機嫌を取るために、適当なことを言っているのかもしれない。
「──ッ、嘘だ‼︎」
「嘘ついてどうするの? 瀬菜は俺の話より、他人の噂を信じるの?」
「うっ、それは……」
親友だと言っておきながら、自分は悠斗の言葉をなぜ素直に受け止めようとしないのだろう。
「……悠斗が嘘つくとは思えない。でも、辻だって嘘は言っていない。見た事実を話してくれただけだ。話を聞いたとき、内緒にされたことに腹が立った。それに悠斗に彼女ができたら、俺はもう悠斗に甘えられない……そう思うとさ、なんか……離れなきゃって……」
悠斗の俺を抱きしめる力が強まる。
「それはダメ……甘えてよ」
「でも、いずれは……」
俺達、別々に過ごしていくだろ?
そう言いたくても言葉が喉に詰まる。
「……キスした子さ、胸のでかい可愛い子なんだろ?」
「うん、胸は大きいけど、瀬菜のほうが可愛い。キスしたくなかった」
「なんだよそれ……そんなに嫌そうに言うなよ」
「嫌だよ……吐きそうになったし」
完全否定する悠斗の言葉になぜだかスーッと、俺の苛立ちが消えていく。久々に感じる悠斗のぬくもりが心地良くて、俺も悠斗の背中に自然と腕を回していた。
「もし、仮に彼女……は、まぁ、できないけど。ほかの出来事で今までと違うことが起きたら、瀬菜には一番に伝える。……だから、もうなにも言わないで逃げたりしないで?」
背中に回していた手のひらで悠斗の背中を宥めるように叩くと、悠斗は腕の力を緩めて顔を上げる。その面持ちは今にも泣きそうで、無視したことを反省させられた。
「悠斗……ごめん」
俺が謝罪の言葉を呟くと、ふにゃりと微笑み俺の肩口に顔を埋めてきた。
「あーあ、瀬菜のせいでこの三日間地獄だった」
「うん、悪かった」
「嫌われたと思って、夜も眠れなかった」
「だから、ごめんってば」
「看病していただけなのに、彼女とか言い掛かりつけられるし、無視されるし」
「それも、ごめん……なさい……」
「やっと瀬菜見つけたと思ったら、手は振り払われるは凄く冷たいし怒ってるし」
「あ──っ! もう、分かったよ! なんでもいうこと聞くから、許してくださいっ‼︎」
俺が放った言葉に、パッと顔を上げ嬉しそうにしたかと思えば、目を細めニタッと悪そうな笑顔に変わっていく。
「本当に、本当になんでも?」
あれ……ヤバイまずった? と思う俺に、悠斗は衝撃的なことを言ってくる。
「今日から三日間、瀬菜は俺の奴隷ね♡ いっぱい言うこと聞いて、いっぱい慰めてね♡」
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