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第1幕 物知り王子と無知な俺 〜高校一年生編〜
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昨夜はなにがあったのだろうか……。
悠斗が帰ったあとも、思い出しただけで身体が疼いて中々眠ることができなかった。それでも寝るのが趣味みたいな俺は、いつの間にか眠っており気付くと朝を迎えていた。
昨日のことはきっとなにかの間違いだったのだ。洗濯や掃除をして無心になっていると、悠斗がひょっこりと家にやって来てドキっとしてしまう。
「おはよう、瀬菜。昨日は良く眠れた? 折角の休みだし、たまには出掛けない?」
「えっ、う、うん。いっぱい寝た! びっくりするぐらいグッスリ! いい天気だし、そうだな! お出掛けいいな!」
俺の考え過ぎだよな……きっと。
これで気まずくなるほうが嫌だし……。
平常心、平常心‼
悠斗はいつも通りの王子スマイルで、どこかに遊びに行こうと誘ってきた。あんなことで気まずくなるのも嫌だなと思っていた俺にはありがたい申し出だ。
即答でオッケーし、気分転換に出掛けることにした。
「瀬菜、行きたいとことかある?」
「俺朝からなにも食べていないから、取り敢えず……昼飯兼ねてワック行かね?」
「いいよ。それじゃ、食べながらどこ行くか決めよ?」
「うん。そう、だな!」
駅前のファストフード店、ワックバーガーで軽く食べながら、手っ取り早く映画に行こうということになった。なにを観ようかといつも通り肩を並べ仲良く吟味していると、俺の名前を呼ぶ聞き慣れた声にうしろを振り向いた。
「柳ちゃん、偶然~。休日も王子と一緒? ラブラブだあね~♪」
「村上‼ お前っ‼」
「なに? その親の仇に会ったみたいな挨拶~」
「当たり前だ! ここで会ったが百年目じゃ‼」
ぷるぷる震えながらキャンキャン吠える俺に、村上が思い出したように言った。
「あぁ~……アレね。観たの? 使ったの? 良かったっしょ? 漢のロマンだぁね~♪」
「観たけどっ!」
「おおっ、どうだった⁉ エロっかったっしょ! 入手するの大変だったんだよ? ほかのは試した?」
お前らのせいでこっちは大変だったし……。
思い出して悠斗の顔また見れなくなんだろうが!
ほか? 試すって……未開封のやつか?
それともキッチン用品のほうか?
「ほかって……真面なのゴボウの皮剥きと、ドレッシングだけだろ! ゴボウねぇし、皮剥きはまだ試してないから、いいもなにも分かんねぇ」
さっきまでワキャワキャとプレゼントの感想に興奮していた村上だが、急に豆鉄砲を喰らった鳩のようにポカンとしている。
あれ? さっきまでのセクハラ親父ぶりはどこに行った?
「うん、まぁ皮剥きには違いない……ね。うんうん。柳ちゃんだしね……うんうん」
ひとり言を呟く村上は、チラリと悠斗に視線を流すをと、目を輝かせながら二タァーっと笑っている。気持ちの悪いやつだ。
俺への興味はなくなったようで、今度は悠斗に質問をしだした。
「王子さぁ~、俺らが柳ちゃんにあげたプレゼント、知ってんの?」
「DVDなら一緒に観たよ」
「観たんかーい! まぁそれはいいとして……ちょいちょい……」
村上が悠斗を手招きし、座っていた席から少し離れた場所でなにやらコソコソと耳打ちをしている。最初は不服そうにしていた悠斗だが、次第に笑顔を見せ楽しげに村上と話込んでいるではないか。
なんだよ二人で……俺は除け者かよ。
へぇ~、珍しい。悠斗が連絡先交換している。
別にいいけどさ。感じ悪くないか?
俺からわざわざ隠れてしなくてもいいじゃんか!
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