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「リリア。気になっていたのがが、お前はそういう話し方が普通なのか?」

「といいますと……」

「どうも祭司……だったか?それに語りかけられているようだからな。人間から精霊へと、人間同士では堅苦しさが違うだろう」

祭司様の言葉は分からないが、きっと精霊にとって堅苦しいものなのだろう。
リリアは村の人の気紛れに対し、いつでも命乞い出来るようにする癖がついていた。
精霊王を前にしたならば敬うのは当然だ。

「我が乙女とは対等でありたい。いつも通りに話せ」

だが精霊王は人間の小娘に対して対等でありたいと願う。
それなのに命令口調で、リリアはなんだかおかしかった。

リリアにとっては精霊でも人間でも下手に出て顔色を伺うのは当然の事だ。
それなのに精霊の王は対等でありたいと言う。

誰もそんな事をリリアに言った人はいない。

「対等ね。わかったわ。……これでいい?」

「ああ。そっちの方が良い」

(なんだか肩の力が抜けちゃったわ)

満足したのか精霊王はそれきり静かになった。

眠ってしまったのかしら。

相手は精霊なのだから、こうやって抱きしめられているのも、きっと暖炉に当たっているような感じなのだろう。
人間相手とは違うのだ。
何を意識することがあるのだろう。

(この様子だとふしだらな女だと思われてないわよね……)

先ほどまでのドキドキが、段々安心に変わっていくのをリリアは感じていた。

思えば今日は森に入ってから色んな事がありすぎた。
そのことを意識してしまえば、今まで気を張って抑え込んでいた疲れが一気に襲ってくる。
花の香りと背中から伝わる温もりに誘われていつの間にかリリアは眠りに落ちたのだった。






「いい天気~!」

外に出たリリアは大きく伸びをする。

森は穏やかに晴れていた。
初夏の風は心地良く、久しぶりに清潔になったリリアの身体を優しく吹き抜けていくのが気持ちいい。

孤児院にいた時は自然と夜明け前に起きていたが、昨夜は珍しくぐっすりと眠った。

(今は8の刻くらいかしら)

リリアが起きた時には精霊王は既にベッドにいなかった。
まあ、あまりに現実感がなさすぎて一瞬忘れていたくらいなのでそれはよかった。

そんな事よりリリアには問題にすべきことがある。

「なっなにこれ!?」

寝起きの頭でもはっきり分かるほどテーブルの上には山盛りの果物や木の実が置いてある。
リリアが村から持ってきたものは、保存食と簡単な生活用品と、生まれたときに身に着けていたらしいおくるみだけだ。

となるとこの瑞々しい食料は新たに持ち込まれたという事で、
リリアに覚えがない限りはもう一人がやった事になる。

「精霊様!!」

「呼んだか、私の咲き始めの薔薇。寝起きで髪が元気に踊っていて愛らしいな」

どこからともなくふわりと精霊の王は現れた。

「余計なお世話です!」

色んな意味で真っ赤になりながらリリアは慌てて髪の毛を直す。
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