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「んんっ…!?」
唇に何かが当たる。
逃れようと顔を背けると追いかけるようにまた唇に何かが当たり、口の中に何かが入ってきた。
雪解けの清水のような、熟れた果実のような、不思議な感覚が広がる。
(気持ちいい)
正体不明の何かに口内を荒らされているのだが、その清らかさにリリアは思わずうっとりと身をゆだねる。
まるで触れた所から全身が浄化されているような感覚だ。ふんわりと森の新芽の香りがする。
そして徐々に身体の内側から熱が生まれる。
強張っていた身体が解され、じんわりと温められているような感覚だ。
熱で癒され、清浄な空気で深呼吸したような心地に、リリアの感覚や思考もすっきりしてきた。
しかしその天国のような口づけは始まった時と同じように唐突に終わる。
「ふむ、こんなものか。おい、大丈夫か乙女」
「は、はい……?」
クリアになったリリアの視界めいっぱいに人知を超えた美貌があった。
光を受けて輝く白銀の髪。様々な色が溶けた神秘的な紫の瞳。
間近に現れた神々しいまでの容貌に、リリアは本日二度目の絶句をすることになった。
リリアと不思議な青年はテーブルを挟んで向かい合っていた。
目の前の美貌の青年は精霊王、と名乗る。
せいれいおう。
……せいれいおう?
リリアは口の中で反芻するがいまいちピンと来ない。
いや、目の前の人物はまさに精霊王といった風貌だ。
腰まである美しい白銀の髪は室内だというのに時折そよ風に遊び、その色合いは薄く緑、青、赤、黄と僅かに変化して光を反射している。
彼の周りだけ小屋特有のカビと煤の匂いはせず、不思議と新緑と花の芳しい香りが満ちていた。
切れ長の目はやはり白銀のまつ毛に縁取られて、今は影が落ちている。
夜明けの空をそのまま持ってきたような、きらめく紫色の瞳はリリアをじっと見つめていた。
全てがあまりも人智を超えた美しさ。
精霊王。
見た事はないが、存在が全てを物語っていた。確かに彼以上に相応しい存在はいないだろう。
しかしその「精霊王」がなぜ無加護の自分の目の前にいるのかが分からないのだった。
(もしかして私はもう死んでるんじゃないかしら)
そう思っても転がった三人の大男が否応なく現実をつきつけてくる。
リリアは別に死んでいないし、おそらく目の前の「精霊王」に助けられたのだと。
そういえばこの山賊達はどうしよう、などと現実逃避をして先ほどの口づけについてを頭から追い出す事にした。
リリアの視線の動きで察したのか、精霊王は頷いた。
「こいつらはどこかへ捨てておこう。まだ生きてはいるが、とどめはどうする?」
「とどめ!?」
「殺しておくか?」
「いえいえっ無事なのでそれで十分です!」
「そうか」
精霊にとって人の生死は思ったより軽いものらしい。
精霊王が人差し指をつい、と動かすと三人の大男がふわりと浮かび、そのまま小屋の外へ運ばれていった。
(わあ不思議……)
「さて、乙女よ」
「は、はいっ」
話しかけられてリリアはシャッキリと背筋を伸ばす。
唇に何かが当たる。
逃れようと顔を背けると追いかけるようにまた唇に何かが当たり、口の中に何かが入ってきた。
雪解けの清水のような、熟れた果実のような、不思議な感覚が広がる。
(気持ちいい)
正体不明の何かに口内を荒らされているのだが、その清らかさにリリアは思わずうっとりと身をゆだねる。
まるで触れた所から全身が浄化されているような感覚だ。ふんわりと森の新芽の香りがする。
そして徐々に身体の内側から熱が生まれる。
強張っていた身体が解され、じんわりと温められているような感覚だ。
熱で癒され、清浄な空気で深呼吸したような心地に、リリアの感覚や思考もすっきりしてきた。
しかしその天国のような口づけは始まった時と同じように唐突に終わる。
「ふむ、こんなものか。おい、大丈夫か乙女」
「は、はい……?」
クリアになったリリアの視界めいっぱいに人知を超えた美貌があった。
光を受けて輝く白銀の髪。様々な色が溶けた神秘的な紫の瞳。
間近に現れた神々しいまでの容貌に、リリアは本日二度目の絶句をすることになった。
リリアと不思議な青年はテーブルを挟んで向かい合っていた。
目の前の美貌の青年は精霊王、と名乗る。
せいれいおう。
……せいれいおう?
リリアは口の中で反芻するがいまいちピンと来ない。
いや、目の前の人物はまさに精霊王といった風貌だ。
腰まである美しい白銀の髪は室内だというのに時折そよ風に遊び、その色合いは薄く緑、青、赤、黄と僅かに変化して光を反射している。
彼の周りだけ小屋特有のカビと煤の匂いはせず、不思議と新緑と花の芳しい香りが満ちていた。
切れ長の目はやはり白銀のまつ毛に縁取られて、今は影が落ちている。
夜明けの空をそのまま持ってきたような、きらめく紫色の瞳はリリアをじっと見つめていた。
全てがあまりも人智を超えた美しさ。
精霊王。
見た事はないが、存在が全てを物語っていた。確かに彼以上に相応しい存在はいないだろう。
しかしその「精霊王」がなぜ無加護の自分の目の前にいるのかが分からないのだった。
(もしかして私はもう死んでるんじゃないかしら)
そう思っても転がった三人の大男が否応なく現実をつきつけてくる。
リリアは別に死んでいないし、おそらく目の前の「精霊王」に助けられたのだと。
そういえばこの山賊達はどうしよう、などと現実逃避をして先ほどの口づけについてを頭から追い出す事にした。
リリアの視線の動きで察したのか、精霊王は頷いた。
「こいつらはどこかへ捨てておこう。まだ生きてはいるが、とどめはどうする?」
「とどめ!?」
「殺しておくか?」
「いえいえっ無事なのでそれで十分です!」
「そうか」
精霊にとって人の生死は思ったより軽いものらしい。
精霊王が人差し指をつい、と動かすと三人の大男がふわりと浮かび、そのまま小屋の外へ運ばれていった。
(わあ不思議……)
「さて、乙女よ」
「は、はいっ」
話しかけられてリリアはシャッキリと背筋を伸ばす。
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