72 / 83
パーティーの開始2
しおりを挟む
「こんなの嫌よ!」
「で、でもれっきとしたマリオンのドレスなのよ? きっと皆可愛いっていってくれるわよ」
「嘘! だとしたらみんなおかしいしマリオンは耄碌ババアよ! こんなの持ってくるなんて正気じゃない! マリオンに二度と私の前に顔を出すなって言っておいて!」
パーティーまでかなり急だったため、ドレスは当日に出来るがそれでもいいかとマリオンから確認は最初にあった。
ドレスを一から仕立てるのは時間がかかり、急な依頼なのも自覚はあったのでそれで了承した。
マリオンのドレスなのだから、失敗はハナから頭にない。
出来上がりが間に合うかどうかだけ気になっていた。
しかしマリオンが当日笑顔で持ってきたのは、おばあちゃんが着ているみたいな古い型のドレスだった。
色もぼやけて、端的に言えばダサく、変だった。
マリオンの新作と言っても誰も信じないだろう。
こうなれば元々もっていたドレスを着るしかないが、来客には「マリオンに特注したの」と言いまわっている。
俯いて爪を噛んだまま黙り込んだブリジットは、やがてにやりと笑った。
「……いえ、目的を間違えていたわね」
ブリジットは心配する母親を置いて自室に戻った。
カーテンを閉め切り特別に飾り付け甘い香を充満させた部屋は、昼だというのに退廃的な印象すらある。
「ドレスは最悪だけれど、ステラが盗んでだめにしたってことにするわ。それより、本当の目的はハウンド様を落とすこと」
ブリジットはマリオンから渡されたドレスを脱いで豊満な身体を晒した。
控えている使用人に命令する。
「ハウンド様が来たらすぐここに連れてきなさい。そのあとは扉の前で待機よ。誰も入ってこないようにね」
「あ、あのブリジット様……。お客様がたくさんいらっしゃって私どもでは手が回りません。せめてブリジット様がお出迎えなさらないと皆様ご不信に思われるのでは……」
使用人の横で重い金属音が響く。
ブリジットが時計を投げつけ、扉に当たったのだ。
使用人は慣れた様子で時計を拾い、静かに頭を下げた。
喋るな、ということだ。こうなったブリジットは自分のしたいようにしかしない。
使用人はブリジットの部屋を出て散々な状況になった階下を見渡してため息をついた。
客でごった返し、ぶつかり合っている。
案内しようにもどこへ案内したらいいのか分からず、庭に溢れている始末だ。
「そもそもこの様子ではハウンド様がいらしても分かるかどうか」
グレアム家の当主、つまりブリジットとステラの父親は妻に「お前の責任だ」と言い放って早々に自室に引っ込んだ。
母親はおろおろしているばかりで全く役に立たない。
地下室のステラでもいいから手を借りたいくらいだが、勝手に出せば叱責は免れない。
そもそもまだ生きているのだろうか、と使用人は考えて、自分は関係ないと忘れるように頭を振った。
もうひと月程度経っているのだ。
そんなとき、玄関口から一際甲高い歓声があがった。
それだけで誰もが確信した。ハウンドが来たのだ。
「で、でもれっきとしたマリオンのドレスなのよ? きっと皆可愛いっていってくれるわよ」
「嘘! だとしたらみんなおかしいしマリオンは耄碌ババアよ! こんなの持ってくるなんて正気じゃない! マリオンに二度と私の前に顔を出すなって言っておいて!」
パーティーまでかなり急だったため、ドレスは当日に出来るがそれでもいいかとマリオンから確認は最初にあった。
ドレスを一から仕立てるのは時間がかかり、急な依頼なのも自覚はあったのでそれで了承した。
マリオンのドレスなのだから、失敗はハナから頭にない。
出来上がりが間に合うかどうかだけ気になっていた。
しかしマリオンが当日笑顔で持ってきたのは、おばあちゃんが着ているみたいな古い型のドレスだった。
色もぼやけて、端的に言えばダサく、変だった。
マリオンの新作と言っても誰も信じないだろう。
こうなれば元々もっていたドレスを着るしかないが、来客には「マリオンに特注したの」と言いまわっている。
俯いて爪を噛んだまま黙り込んだブリジットは、やがてにやりと笑った。
「……いえ、目的を間違えていたわね」
ブリジットは心配する母親を置いて自室に戻った。
カーテンを閉め切り特別に飾り付け甘い香を充満させた部屋は、昼だというのに退廃的な印象すらある。
「ドレスは最悪だけれど、ステラが盗んでだめにしたってことにするわ。それより、本当の目的はハウンド様を落とすこと」
ブリジットはマリオンから渡されたドレスを脱いで豊満な身体を晒した。
控えている使用人に命令する。
「ハウンド様が来たらすぐここに連れてきなさい。そのあとは扉の前で待機よ。誰も入ってこないようにね」
「あ、あのブリジット様……。お客様がたくさんいらっしゃって私どもでは手が回りません。せめてブリジット様がお出迎えなさらないと皆様ご不信に思われるのでは……」
使用人の横で重い金属音が響く。
ブリジットが時計を投げつけ、扉に当たったのだ。
使用人は慣れた様子で時計を拾い、静かに頭を下げた。
喋るな、ということだ。こうなったブリジットは自分のしたいようにしかしない。
使用人はブリジットの部屋を出て散々な状況になった階下を見渡してため息をついた。
客でごった返し、ぶつかり合っている。
案内しようにもどこへ案内したらいいのか分からず、庭に溢れている始末だ。
「そもそもこの様子ではハウンド様がいらしても分かるかどうか」
グレアム家の当主、つまりブリジットとステラの父親は妻に「お前の責任だ」と言い放って早々に自室に引っ込んだ。
母親はおろおろしているばかりで全く役に立たない。
地下室のステラでもいいから手を借りたいくらいだが、勝手に出せば叱責は免れない。
そもそもまだ生きているのだろうか、と使用人は考えて、自分は関係ないと忘れるように頭を振った。
もうひと月程度経っているのだ。
そんなとき、玄関口から一際甲高い歓声があがった。
それだけで誰もが確信した。ハウンドが来たのだ。
111
あなたにおすすめの小説
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~
高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。
先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。
先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。
普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。
「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」
たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。
そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。
はちみつ色の髪をした竜王曰く。
「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」
番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!
【完結】呪いのせいで無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになりました。
里海慧
恋愛
わたくしが愛してやまない婚約者ライオネル様は、どうやらわたくしを嫌っているようだ。
でもそんなクールなライオネル様も素敵ですわ——!!
超前向きすぎる伯爵令嬢ハーミリアには、ハイスペイケメンの婚約者ライオネルがいる。
しかしライオネルはいつもハーミリアにはそっけなく冷たい態度だった。
ところがある日、突然ハーミリアの歯が強烈に痛み口も聞けなくなってしまった。
いつもなら一方的に話しかけるのに、無言のまま過ごしていると婚約者の様子がおかしくなり——?
明るく楽しいラブコメ風です!
頭を空っぽにして、ゆるい感じで読んでいただけると嬉しいです★
※激甘注意 お砂糖吐きたい人だけ呼んでください。
※2022.12.13 女性向けHOTランキング1位になりました!!
みなさまの応援のおかげです。本当にありがとうございます(*´꒳`*)
※タイトル変更しました。
旧タイトル『歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件』
婚約破棄されたはずなのに、溺愛が止まりません!~断罪された令嬢は第二の人生で真実の愛を手に入れる~
sika
恋愛
社交界で名高い公爵令嬢・アイリスは、婚約者である王太子に冤罪をでっち上げられ、婚約破棄と同時にすべてを失った。
誰も信じられず国外に逃れた彼女は、名を偽り辺境の地で静かに生きるはずだった――が、そこで出会った青年将軍が、彼女に異常なまでの執着と愛を向け始める。
やがて明らかになる陰謀の真相、そして王都から彼女を探す“元婚約者”の焦燥。
過去を乗り越え、愛を選ぶ彼女の物語は、痛快な逆転劇と甘く濃密な溺愛とともに幕を開ける。
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
枯渇聖女は婚約破棄され結婚絶対無理ランキング1位の辺境伯に言い寄られる
はなまる
恋愛
らすじ
フレイシアは10歳の頃母と一緒に魔物に遭遇。その時母はかなりの傷を負い亡くなりショックで喋れなくなtったがその時月の精霊の加護を受けて微力ながらも魔法が使えるようになった。
このニルス国では魔力を持っている人間はほとんどいなくて魔物討伐でけがを負った第二王子のジェリク殿下の怪我をほんの少し治せた事からジェリク殿下から聖女として王都に来るように誘われる。
フレイシアは戸惑いながらも淡い恋心を抱きジェリク殿下の申し出を受ける。
そして王都の聖教会で聖女として働くことになりジェリク殿下からも頼られ婚約者にもなってこの6年フレイシアはジェリク殿下の期待に応えようと必死だった。
だが、最近になってジェリクは治癒魔法が使えるカトリーナ公爵令嬢に気持ちを移してしまう。
その前からジェリク殿下の態度に不信感を抱いていたフレイシアは魔力をだんだん失くしていて、ついにジェリクから枯渇聖女と言われ婚約を破棄されおまけに群れ衣を着せられて王都から辺境に追放される事になった。
追放が決まり牢に入れられている間に月の精霊が現れフレイシアの魔力は回復し、翌日、辺境に向かう騎士3名と一緒に荷馬車に乗ってその途中で魔物に遭遇。フレイシアは想像を超える魔力を発揮する。
そんな力を持って辺境に‥
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。少し間が開いてしまいましたがよろしくです。
まったくの空想の異世界のお話。誤字脱字などご不快な点は平にご容赦お願いします。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。他のサイトにも投稿しています。
【コミカライズ決定】魔力ゼロの子爵令嬢は王太子殿下のキス係
ayame@コミカライズ決定
恋愛
【ネトコン12受賞&コミカライズ決定です!】私、ユーファミア・リブレは、魔力が溢れるこの世界で、子爵家という貴族の一員でありながら魔力を持たずに生まれた。平民でも貴族でも、程度の差はあれど、誰もが有しているはずの魔力がゼロ。けれど優しい両親と歳の離れた後継ぎの弟に囲まれ、贅沢ではないものの、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんなささやかな生活も、12歳のとき父が災害に巻き込まれて亡くなったことで一変する。領地を復興させるにも先立つものがなく、没落を覚悟したそのとき、王家から思わぬ打診を受けた。高すぎる魔力のせいで身体に異常をきたしているカーティス王太子殿下の治療に協力してほしいというものだ。魔力ゼロの自分は役立たずでこのまま穀潰し生活を送るか修道院にでも入るしかない立場。家族と領民を守れるならと申し出を受け、王宮に伺候した私。そして告げられた仕事内容は、カーティス王太子殿下の体内で暴走する魔力をキスを通して吸収する役目だったーーー。_______________
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる