14 / 83
謎の男の奇妙な執着6
しおりを挟む
「まあ、よく似合ってる! それ、ウチの最新作なの。着たいご令嬢はたくさんいるはずだからどの集まりへ行ったとしても視線を独り占めできるわよ」
マリオンの謙遜なしの言葉は、むしろ自分の仕事への自負だった。
その言葉が事実だと分かる。
完成してお披露目待ちだというドレスは、少しのサイズ直しで済んだ。
百合の花をモチーフにされた、清楚ながら斬新で華やかなものだった。
クリノリンが控え目な分、フリルやレースがふんだんに使われている。
ステラにはドレスの違いや流行などは分からなかったがきちんとした女性用のドレスはほぼ初めてで、そのふわふわとした感触だけでもドキドキしてしまう。
全体的に同じ白色を使っているが、違う生地が何層にも重なっているので見れば見るほど魅力あふれるドレスだ。
「でも良いんですか? 私が最初に着てしまってはお店の名前に傷がつくのでは」
「そんなことないわよ。むしろ……良い出会いをしたのは私の方かも」
フフ、とマリオンが笑う。そしてハウンドに「あなたも何か言ってちょうだい」とつつく。
「天使かと思って見惚れていました」
「言い得て妙だわ。大量販売の準備をしないといけないわね」
マリオンはやや浮かれながらその場を離れていった。
(天使だなんて、詐欺師は本当に息をするように嘘をつくんだから)
高鳴り始めた心臓を落ち着かせるように悪態をつく。
「ずいぶん口が上手いのね。天使を見たことがあるのかしら」
「ええ。いま目の前にいます。あなたも鏡でご覧になれますよ。ほら、可愛い」
嘘。嘘だ。嘘だと分かっているのに顔に熱が集中するのが止められない。
心臓は落ち着くどころかどんどん早くなっているようだ。
きっと真っ赤になっているだろう顔を確認するのが怖くて、鏡などまともに見られなかった。
ハウンドは靴や帽子まで購入してくれた。
特に靴はマリオンが悲鳴をあげるほど履き潰していたらしい。
今まで着ていたドレスは装飾品を選んでいる間にマリオンが少し手直ししてくれたようだ。
上の布を少したくし上げ、胸元を詰めてくれたのでかなり見栄えが良くなっていた。
ハウンドは当然のように馬車で家まで送ってくれた。
日も落ち切っておらず、辻馬車を拾おうとしていたステラは淑女として扱われることに毎回驚いてしまう。
未婚の男女がレストランで同席していたらステラが傷つくかもしれないからと、途中で軽食も持たせてくれたのだ。
(たしかに利用しようとはしたけれど、こんなに投資しても儲かるのかしら。詐欺師も大変ね)
マリオンの謙遜なしの言葉は、むしろ自分の仕事への自負だった。
その言葉が事実だと分かる。
完成してお披露目待ちだというドレスは、少しのサイズ直しで済んだ。
百合の花をモチーフにされた、清楚ながら斬新で華やかなものだった。
クリノリンが控え目な分、フリルやレースがふんだんに使われている。
ステラにはドレスの違いや流行などは分からなかったがきちんとした女性用のドレスはほぼ初めてで、そのふわふわとした感触だけでもドキドキしてしまう。
全体的に同じ白色を使っているが、違う生地が何層にも重なっているので見れば見るほど魅力あふれるドレスだ。
「でも良いんですか? 私が最初に着てしまってはお店の名前に傷がつくのでは」
「そんなことないわよ。むしろ……良い出会いをしたのは私の方かも」
フフ、とマリオンが笑う。そしてハウンドに「あなたも何か言ってちょうだい」とつつく。
「天使かと思って見惚れていました」
「言い得て妙だわ。大量販売の準備をしないといけないわね」
マリオンはやや浮かれながらその場を離れていった。
(天使だなんて、詐欺師は本当に息をするように嘘をつくんだから)
高鳴り始めた心臓を落ち着かせるように悪態をつく。
「ずいぶん口が上手いのね。天使を見たことがあるのかしら」
「ええ。いま目の前にいます。あなたも鏡でご覧になれますよ。ほら、可愛い」
嘘。嘘だ。嘘だと分かっているのに顔に熱が集中するのが止められない。
心臓は落ち着くどころかどんどん早くなっているようだ。
きっと真っ赤になっているだろう顔を確認するのが怖くて、鏡などまともに見られなかった。
ハウンドは靴や帽子まで購入してくれた。
特に靴はマリオンが悲鳴をあげるほど履き潰していたらしい。
今まで着ていたドレスは装飾品を選んでいる間にマリオンが少し手直ししてくれたようだ。
上の布を少したくし上げ、胸元を詰めてくれたのでかなり見栄えが良くなっていた。
ハウンドは当然のように馬車で家まで送ってくれた。
日も落ち切っておらず、辻馬車を拾おうとしていたステラは淑女として扱われることに毎回驚いてしまう。
未婚の男女がレストランで同席していたらステラが傷つくかもしれないからと、途中で軽食も持たせてくれたのだ。
(たしかに利用しようとはしたけれど、こんなに投資しても儲かるのかしら。詐欺師も大変ね)
303
あなたにおすすめの小説
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
婚約破棄されたはずなのに、溺愛が止まりません!~断罪された令嬢は第二の人生で真実の愛を手に入れる~
sika
恋愛
社交界で名高い公爵令嬢・アイリスは、婚約者である王太子に冤罪をでっち上げられ、婚約破棄と同時にすべてを失った。
誰も信じられず国外に逃れた彼女は、名を偽り辺境の地で静かに生きるはずだった――が、そこで出会った青年将軍が、彼女に異常なまでの執着と愛を向け始める。
やがて明らかになる陰謀の真相、そして王都から彼女を探す“元婚約者”の焦燥。
過去を乗り越え、愛を選ぶ彼女の物語は、痛快な逆転劇と甘く濃密な溺愛とともに幕を開ける。
【完結】呪いのせいで無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになりました。
里海慧
恋愛
わたくしが愛してやまない婚約者ライオネル様は、どうやらわたくしを嫌っているようだ。
でもそんなクールなライオネル様も素敵ですわ——!!
超前向きすぎる伯爵令嬢ハーミリアには、ハイスペイケメンの婚約者ライオネルがいる。
しかしライオネルはいつもハーミリアにはそっけなく冷たい態度だった。
ところがある日、突然ハーミリアの歯が強烈に痛み口も聞けなくなってしまった。
いつもなら一方的に話しかけるのに、無言のまま過ごしていると婚約者の様子がおかしくなり——?
明るく楽しいラブコメ風です!
頭を空っぽにして、ゆるい感じで読んでいただけると嬉しいです★
※激甘注意 お砂糖吐きたい人だけ呼んでください。
※2022.12.13 女性向けHOTランキング1位になりました!!
みなさまの応援のおかげです。本当にありがとうございます(*´꒳`*)
※タイトル変更しました。
旧タイトル『歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件』
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
四葉美名
恋愛
「危険です! 突然現れたそんな女など処刑して下さい!」
ある日突然、そんな怒号が飛び交う異世界に迷い込んでしまった橘莉子(たちばなりこ)。
竜王が統べるその世界では「迷い人」という、国に恩恵を与える異世界人がいたというが、莉子には全くそんな能力はなく平凡そのもの。
そのうえ莉子が現れたのは、竜王が初めて開いた「婚約者候補」を集めた夜会。しかも口に怪我をした治療として竜王にキスをされてしまい、一気に莉子は竜人女性の目の敵にされてしまう。
それでもひっそりと真面目に生きていこうと気を取り直すが、今度は竜王の子供を産む「運命の花嫁」に選ばれていた。
その「運命の花嫁」とはお腹に「竜王の子供の魂が宿る」というもので、なんと朝起きたらお腹から勝手に子供が話しかけてきた!
『ママ! 早く僕を産んでよ!』
「私に竜王様のお妃様は無理だよ!」
お腹に入ってしまった子供の魂は私をせっつくけど、「運命の花嫁」だとバレないように必死に隠さなきゃ命がない!
それでも少しずつ「お腹にいる未来の息子」にほだされ、竜王とも心を通わせていくのだが、次々と嫌がらせや命の危険が襲ってきて――!
これはちょっと不遇な育ちの平凡ヒロインが、知らなかった能力を開花させ竜王様に溺愛されるお話。
設定はゆるゆるです。他サイトでも重複投稿しています。
【コミカライズ決定】魔力ゼロの子爵令嬢は王太子殿下のキス係
ayame@コミカライズ決定
恋愛
【ネトコン12受賞&コミカライズ決定です!】私、ユーファミア・リブレは、魔力が溢れるこの世界で、子爵家という貴族の一員でありながら魔力を持たずに生まれた。平民でも貴族でも、程度の差はあれど、誰もが有しているはずの魔力がゼロ。けれど優しい両親と歳の離れた後継ぎの弟に囲まれ、贅沢ではないものの、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんなささやかな生活も、12歳のとき父が災害に巻き込まれて亡くなったことで一変する。領地を復興させるにも先立つものがなく、没落を覚悟したそのとき、王家から思わぬ打診を受けた。高すぎる魔力のせいで身体に異常をきたしているカーティス王太子殿下の治療に協力してほしいというものだ。魔力ゼロの自分は役立たずでこのまま穀潰し生活を送るか修道院にでも入るしかない立場。家族と領民を守れるならと申し出を受け、王宮に伺候した私。そして告げられた仕事内容は、カーティス王太子殿下の体内で暴走する魔力をキスを通して吸収する役目だったーーー。_______________
枯渇聖女は婚約破棄され結婚絶対無理ランキング1位の辺境伯に言い寄られる
はなまる
恋愛
らすじ
フレイシアは10歳の頃母と一緒に魔物に遭遇。その時母はかなりの傷を負い亡くなりショックで喋れなくなtったがその時月の精霊の加護を受けて微力ながらも魔法が使えるようになった。
このニルス国では魔力を持っている人間はほとんどいなくて魔物討伐でけがを負った第二王子のジェリク殿下の怪我をほんの少し治せた事からジェリク殿下から聖女として王都に来るように誘われる。
フレイシアは戸惑いながらも淡い恋心を抱きジェリク殿下の申し出を受ける。
そして王都の聖教会で聖女として働くことになりジェリク殿下からも頼られ婚約者にもなってこの6年フレイシアはジェリク殿下の期待に応えようと必死だった。
だが、最近になってジェリクは治癒魔法が使えるカトリーナ公爵令嬢に気持ちを移してしまう。
その前からジェリク殿下の態度に不信感を抱いていたフレイシアは魔力をだんだん失くしていて、ついにジェリクから枯渇聖女と言われ婚約を破棄されおまけに群れ衣を着せられて王都から辺境に追放される事になった。
追放が決まり牢に入れられている間に月の精霊が現れフレイシアの魔力は回復し、翌日、辺境に向かう騎士3名と一緒に荷馬車に乗ってその途中で魔物に遭遇。フレイシアは想像を超える魔力を発揮する。
そんな力を持って辺境に‥
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。少し間が開いてしまいましたがよろしくです。
まったくの空想の異世界のお話。誤字脱字などご不快な点は平にご容赦お願いします。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。他のサイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる