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見舞い

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 予想通りダーリーン達は昼過ぎごろにやってきて、面会謝絶だという病室の前で散々暴れてどこかへ行った。
 どうやら魔導馬車がない事に対して文句を言っていたようだ。

 重傷で治療中であるはずの病室のドアを開けようとしていたので、冗談じゃなくつっかえ棒をしていて良かったとイヴェットはベッドの中で思った。
 ドアがミシミシと音を立てる度無意識に息をつめてしまう。

「イヴェット様の言う通り、あの人達は今日王都に戻ったそうです」

「矢面に立たせてしまって申し訳ないわね。馬車については納得していたかしら」

「いいえ。ですが無いものは無いので……。結局は快適な旅よりも保身を選んだようです。駅馬車を拾いながら戻るから費用を出せと言われ、お渡ししましたが良かったのですか?」

「ありがとう。それで大丈夫よ」

 魔動馬車はまだ数が少なく有用だ。
 ピスカートルに着いてからは御者はそのまま、馬を変えて別の場所に貸し出している。
 魔導馬車の持ち主が決めた事なので今更イヴェットにはどうしようもなく、貸出時にもそれで良いと了承しているのだ。

 イヴェット達が帰る時に合わせて馬車も返却される予定だった。
 本来であればピスカートルを楽しんでいる最中だったのだから問題はないし、ダーリーン達には先に説明しているのだがやはり聞いていなかったらしい。

「私達はゆっくりしていましょう。あなたは街を楽しんできても良いのよ」

「いえ私はここにいたいですイヴェット様」

 その時病室に控えめなノックの音が響いた。
 二人は一瞬身構えるが、「まだお休み中なんじゃないか」「いきなりおしかけては……」と入り口で悩んでいるような声を聞いて顔を見合わせた。

 トレイシーがドアを開けるとそこにいたのはフランシスだった。

「急にお訪ねして申し訳ない。今大丈夫でしょうか?」

「はい。私は街を見てきますのでイヴェット様をよろしくお願いいたします」

「トレイシー!?」

(さっきはここにいるって言ってたのに!)

 慌てるイヴェットに礼を取りトレイシーはさっさと出て行ってしまった。

「お邪魔してしまったかな」

「そんなことはございませんわ」

 入れ替わるように入室したフランシスが戸惑っている。それはそうだろう。

 とりあえずイヴェットは回復術士が使っていた椅子を勧めた。
 いつも人と会う時はそれなりにちゃんとした格好をしていたのでほぼ部屋着状態で体面すると、相手が仕事だと分かっていても気恥ずかしくなってしまう。

「証拠が無事入手できたと聞き、私も安心しました。ですがあのような危ない事は正直やめた方が良いと思います」

「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

「迷惑などではないのですが……」

(私には私の譲れない意地みたいなものがあったけれど、アークリエ騎士団にとっては貴族の迷惑な行動よね)

 確かに昨日は興奮していたのかもしれない。
 ただ同じ状況になればやはり自分で乗り込んでいっただろう。
 フランシスはイヴェットの怪我の具合や騎士団の見解を述べた後、言いづらそうに口を切る。
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