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神様は優しく微笑んでいた

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目を覚ますと、そこは真っ白な場所だった。
?「やぁ」
声のしたほうをみると、銀髪のキレイなロングヘアーの青年がいた。
僕「誰?」
?「僕はアウローラ。アウラって呼んでね!」
にこりと微笑んでいる彼は、この世の者とは思えないほど美しい。
僕「ここはどこ?」
アウラ「ここは世界の始まり。僕は君に恩がある。だからね、世界をあげる」
言っている意味がわからない。 
アウラ「僕はね、世界の神様なんだよ。いくつも世界をもってるんだよ。さぁ、思い描いてごらん?君は何を望む?」
僕の望むもの?
それは…それは…。
僕「大切にされたい…」
周りが強く光り、僕は意識を無くした。

?「リズ…リズ…!」
誰かが僕を呼ぶ。
僕「…リクレイ?」
それは僕の恋人のリクレイだった。
僕「どうしたの?」
リクレイ「みてよ!ラズベリーがこんなにたくさん採れたんだよ!これで美味しいケーキ作ってあげるね!」
リクレイは無邪気に笑う。
可愛い猫耳と尻尾が印象的なリクレイと僕しかこの世界にはいない。
いつからだろう?
最初からだっただろうか?
…どうでもいいか。
リクレイだけいたら、それでいい。
僕「そういえば…」
変な夢をみた気がする。
でも、思い出せない。
リクレイ「リズー!」
まぁいい。
今が幸せなら、それでいい。

怖い夢をみる。
それはこことは違う世界。
誰にも大切にされない僕は、毎日イジメと虐待の対象で…唯一の家族と呼べるのが野良猫のリクレイ。
リクレイ「にゃー…」
僕「ごめんね。今日はミルクしかないんだ。いっぱい飲んでね?」
リクレイに会っている時だけが幸せだった。
でも…。
リクレイは殺された。
虐殺されていた。
リクレイを失った僕は、ビルから飛び降りて自殺した。
そんな夢をみる。
リクレイ…守れなくてごめんね。…ごめんね。

リクレイ「リズ!起きてリズ!」
僕はリクレイに起こされて目を覚ます。
寝汗と荒い呼吸、どうやら僕はうなされていたようだ。
リクレイ「大丈夫?また怖い夢みたの?僕がいるから大丈夫だよ」
リクレイは心配そうに顔を覗きこむ。
僕はリクレイの頭を撫でた。
僕「大丈夫だよ。ありがとう」
いつも思う。
なんであんな夢をみるんだろうと。
でも、どうでもいい。
この世界が、リクレイのいる今の世界が現実だから。

?「記憶が残ってしまったのは残念だけど、ちゃんと幸せみたいだから大丈夫かな?」
リズとリクレイを遠くからアウラは見守っている。
アウラ「リズ、君の望む世界は快適かな?」
アウラは昔、リズに助けられたことがあった。
それからずっとリズを見守っていて、ずっと心を痛めていた。
リズが死んだ日、アウラはリズに世界を一つあげようと思った。
リズの大好きなリクレイと、二人だけの世界。
都会よりも、自然が溢れる場所にした。
リズが必要とすれば、なんでも手に入るリズの桃源郷。
せっかくだから、リクレイは獣人にしてリズの恋人にしよう!
そうすれば話相手にも困らないだろう。
アウラはリズを死なせてしまったことに深く悲しみを抱き、リズをどの生き物よりも溺愛している。
アウラ「リズ、リクレイ、ずっと幸せでいてね。ずっと見守っているから」
見守ることしかできないアウラは、ずっとずっと二人を見守って幸せを願う。

もう、二人を傷つける者はいない。
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