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第六章 第三の復讐
23話 黒谷二葉
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私と二葉は、急速に距離を縮めていった。
二葉と初めて会った日、父親に迎えにこさせた。かつての担任が今どんな姿なのか気になったからだ。
黒谷健は全然変わっていなかった。私が全てを失ってから3年半しか経っていないということを実感した。
相変わらず私が優美だということがバレることはなかった。神楽のメイクの技術は本当にすごい。私でさえ、未だメイクを落とすと困惑するのだから。
「お姉ちゃん!」
テラスで読書をしていると、二葉が駆け寄ってきた。
「おはよう。今日も来たのね」
「うん!」
「何飲みたい?」
「えっとね…ココア!」
「はいはい。皐月、用意をお願い。」
二葉を連れてきた皐月に言った。皐月は恭しく頭を下げて屋敷に入った。
「お姉ちゃん。」
二葉が不思議そうな目で私を見た。
「どうしたの?」
「お姉ちゃんは、すごい人なの?このお家、二葉のとこより大っきいもん。」
「………凄くなんかないわ。私はこの家のおまけのようなものだから」
「さみしいの?」
「いいえ。ちっとも」
私は二葉に笑顔をみせた。
「でも、何だか寂しそうに見えるよ」
そう言うと、二葉は座っている私の後ろに回り込み、ぎゅっとくっついてきた。
「二葉ちゃん?」
「二葉ね、パパと2人なんだけど、パパは忙しくてちっともお家にいないの。だからすごくさみしい。でもね、今はお姉ちゃんと一緒だから、さみしくないの!お姉ちゃんは?」
「……そうね。今だけは…寂しくないわね。」
「良かったぁ」
二葉は嬉しそうに頷いた。
二葉は、宙に似てる。
幼いながら人の感情に敏感で、暖かい時間をくれる。
宙…
私は宙を想いながら、二葉を抱きしめた。
二葉が帰った後、私は皐月に言った。
「あなたでしょう。あの日、二葉ちゃんを屋敷に入れたのは」
「ご存知だったのですね」
「黒谷健の娘だなんて、偶然とは思えない。私の復讐に協力してるのはあなたと執事だけ。でも執事は私の命令があるまで動かない約束をしてるから、あなた以外考えられない。」
「…私が勝手に事を運んだので、お怒りなのですか?」
「いいえ。協力してるのはありがたいけど、それなら私に言ってからにして欲しいのよ」
「承知致しました。」
私は皐月をじっと見つめた。
「どうして復讐させることを急いでいるの?…まだ何か私に言うことがあるのではなくて?」
「…神楽様のご命令でございます。復讐を急げという。」
「お姉様の?」
「はい。神楽様はご自分の娯楽として乙葉様の復讐劇をご覧になっております。私は乙葉様の侍女ですが、その前に神楽様の侍女です。」
「お姉様の命令が最優先という訳ね。」
「申し訳ございません。ですが、乙葉様を主人とし、復讐をお手伝いしたいという気持ちは本当です。」
「もういいわ。復讐に協力してくれるならそれでいいもの。私は、それだけのために杠乙葉としてここにいるのだから。」
「復讐が終わったら、どうなさるおつもりですか。」
「その時の自分に任せる。今は復讐に集中しないと。……ところで、例のものは?」
「はい。ここに」
皐月は小さいビンを取り出した。中には少量の液体が入っている。
「…間違いないわね?」
「はい。お嬢様はニガクリタケというキノコをご存知ですか?」
「毒キノコね」
「はい。ニガクリタケの毒の成分だけを抽出した毒薬です。」
私はビンの中の液体をじっと見つめた。
二葉と初めて会った日、父親に迎えにこさせた。かつての担任が今どんな姿なのか気になったからだ。
黒谷健は全然変わっていなかった。私が全てを失ってから3年半しか経っていないということを実感した。
相変わらず私が優美だということがバレることはなかった。神楽のメイクの技術は本当にすごい。私でさえ、未だメイクを落とすと困惑するのだから。
「お姉ちゃん!」
テラスで読書をしていると、二葉が駆け寄ってきた。
「おはよう。今日も来たのね」
「うん!」
「何飲みたい?」
「えっとね…ココア!」
「はいはい。皐月、用意をお願い。」
二葉を連れてきた皐月に言った。皐月は恭しく頭を下げて屋敷に入った。
「お姉ちゃん。」
二葉が不思議そうな目で私を見た。
「どうしたの?」
「お姉ちゃんは、すごい人なの?このお家、二葉のとこより大っきいもん。」
「………凄くなんかないわ。私はこの家のおまけのようなものだから」
「さみしいの?」
「いいえ。ちっとも」
私は二葉に笑顔をみせた。
「でも、何だか寂しそうに見えるよ」
そう言うと、二葉は座っている私の後ろに回り込み、ぎゅっとくっついてきた。
「二葉ちゃん?」
「二葉ね、パパと2人なんだけど、パパは忙しくてちっともお家にいないの。だからすごくさみしい。でもね、今はお姉ちゃんと一緒だから、さみしくないの!お姉ちゃんは?」
「……そうね。今だけは…寂しくないわね。」
「良かったぁ」
二葉は嬉しそうに頷いた。
二葉は、宙に似てる。
幼いながら人の感情に敏感で、暖かい時間をくれる。
宙…
私は宙を想いながら、二葉を抱きしめた。
二葉が帰った後、私は皐月に言った。
「あなたでしょう。あの日、二葉ちゃんを屋敷に入れたのは」
「ご存知だったのですね」
「黒谷健の娘だなんて、偶然とは思えない。私の復讐に協力してるのはあなたと執事だけ。でも執事は私の命令があるまで動かない約束をしてるから、あなた以外考えられない。」
「…私が勝手に事を運んだので、お怒りなのですか?」
「いいえ。協力してるのはありがたいけど、それなら私に言ってからにして欲しいのよ」
「承知致しました。」
私は皐月をじっと見つめた。
「どうして復讐させることを急いでいるの?…まだ何か私に言うことがあるのではなくて?」
「…神楽様のご命令でございます。復讐を急げという。」
「お姉様の?」
「はい。神楽様はご自分の娯楽として乙葉様の復讐劇をご覧になっております。私は乙葉様の侍女ですが、その前に神楽様の侍女です。」
「お姉様の命令が最優先という訳ね。」
「申し訳ございません。ですが、乙葉様を主人とし、復讐をお手伝いしたいという気持ちは本当です。」
「もういいわ。復讐に協力してくれるならそれでいいもの。私は、それだけのために杠乙葉としてここにいるのだから。」
「復讐が終わったら、どうなさるおつもりですか。」
「その時の自分に任せる。今は復讐に集中しないと。……ところで、例のものは?」
「はい。ここに」
皐月は小さいビンを取り出した。中には少量の液体が入っている。
「…間違いないわね?」
「はい。お嬢様はニガクリタケというキノコをご存知ですか?」
「毒キノコね」
「はい。ニガクリタケの毒の成分だけを抽出した毒薬です。」
私はビンの中の液体をじっと見つめた。
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