終わりのない悪夢~七つの復讐~

夢華彩音

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第六章 第三の復讐

22話 小さな女の子

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ある日の午後。私は杠家の庭園を散歩していた。

「乙葉様、珍しいですね。のんびりしていらっしゃるお姿を久しぶりに見たような気がしますわ」
侍女の皐月が声をかけてきた。
皐月は私の復讐に協力してくれていて、ターゲットの現在地を調べる役割を担っている。私が簡単に動くことができるのは彼女のおかげだ。
「そうね。復讐が始まってからは落ち着く暇も無かったもの。」
私は庭をじっと眺めた。
もしこの庭が杠家の敷地ではなかったとしたら、何軒の家が建てたれるだろうか。
もしかしたら、街でも作れてしまうのではないだろうか。
こんなことを考える私はまだまだ庶民的で、お嬢様には成り切れていないような気がする。
あの時、千秋に「あんた」と呼ばれて気が立ったのは何故だろうと思ったが、痛いところをつかれて優美に戻ってしまいそうだと恐れたからなのかもしれない。まだ私は、完全な「杠乙葉」を作り出せていない。
だが、焦ることは無い。久遠朱音への復讐は最後までとっておくつもりだ。その時までに昔の自分を捨て去ればいい。
私は、ポケットの中から四つ葉のストラップを取り出し、皐月に声をかけた。
「皐月。」
「はい。」
私は皐月の手にストラップを乗せた。
「これを私の目の届かないところに隠して。そして私が指示するまでは壊さないように。」
「かしこまりました。」
皐月はストラップを手に屋敷へと戻っていった。

私が昔の自分を捨てるには、あれがどうしても邪魔になってしまう。
昔の幸せも、全て消し去らなくてはいけない。
「本当にこれでさよならだね。」


その時、近くでガサッと音がした。
「……誰?」
私が音のした方を見ると、小さな女の子が泣きそうな顔をしながら現れた。
「あなた、どこから入ったの」
「……門が、開いてたの」
「門が?」
正門は屋敷の中からしか開けられない仕組みになっているから、入れるはずがない。となると、裏門から入ったのか…?
しかし、裏門といえどセキュリティ対策は万全だ。もしや、誰かが故意に彼女を屋敷に入れたのかもしれない。
「誰かが入れてくれたの?」
「…うん。」
「どんな人?」
「内緒ねって言って、お菓子くれた」
「そう。あなたのお名前は?」
「黒谷二葉。」

くろたに…? まさか

「あなたのお父さんの名前は?」
「黒谷健。二葉は、お父さんと2人で暮らしてるの」
「そう……」
「お姉ちゃんは?」
「私は杠乙葉。」
「おとはちゃん?」
「それで結構よ。よろしくね、二葉ちゃん。」
「うん!」
二葉は満面の笑みを浮かべた。
突然屋敷に入れられて、無駄に広い庭園でさぞ不安だったことだろう。
こんな小さな子。可哀想だけど、ごめんね。
あなたを使わせてもらうわ。

黒谷二葉の父は、かつての担任だ。
いじめを、そして私を見殺しにした男。

次のターゲットは貴方よ。
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