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第五章 第二の復讐
20話 条件
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「お姉様。少しよろしくて?」
「どうかしたの?貴女が私の部屋に来るのは久しぶりね。」
私が神楽の部屋に入ると、彼女は優しく微笑んだ。
初めて会った頃に比べると、随分距離が縮んだものだ。
「大手○○会社社長の妻と私って、同じ位なの?」
「まさか、冗談言わないで。杠竜吾の娘である貴女の方が何倍も上よ。それに…」
「それに?」
「大手○○会社って、倒産寸前の会社でしょう?比較の対象にすらならないわ」
「倒産寸前?…おかしいわ」
千秋は、有力な会社だと言っていた。
千秋が私に嘘を?
もしくは…千秋の彼が。
「ありがとうお姉様。おかげで決まったわ」
「次の復讐かしら?」
「えぇ。」
私はドアノブに手をかけ、思い出したように振り向いた。
「お姉様、その会社を傘下においてもいいかしら?」
「いいけれど、お父様の許可を得てからにしなさいね。傘下に入れた会社をまとめるのはお父様ですもの。」
「勿論ですわ。」
私は笑って部屋を出た。
三日後。
私は湯川知輝に会いに行った。
「湯川社長の息子さんはいらっしゃいますか?」
フロントの従業員に声をかけると、彼女は怪訝な顔で私を見た。
「いるにはいますが…。あの、どちら様でしょうか?」
「杠乙葉とお伝えください」
「えっ。あっ、申し訳ございません。杠家のお嬢様とは知らずご無礼を…」
「いいから早くお伝えくださらない?」
「は、はい。ただいま。」
従業員は慌てて湯川知輝に電話を入れた。そして、
「お待たせしました。どうぞこちらへ」
私は従業員に連れられてビルの最上階へと向かった。
倒産寸前というからどれほどのものかと思ったが、中々立派な会社だ。
「ようこそおいで下さいました。まさか杠家のお嬢様にお会い出来る日が来ようとは」
湯川知輝は嬉しそうに言った。
「私も、お会いできて嬉しいです。」
「……何か、重大なお話しですか?」
「この会社、倒産寸前だと耳にしました。」
「あぁ…。ご存知でしたか。倒産寸前のように見せかけるのが精一杯で…」
「あなた、我がグループに入りません?」
「え?」
知輝は目をみはった。
「つまり…我が社を立て直して下さると?」
「えぇ。お父様の許可はいただいています。あとは貴方の返事次第。」
「も、もちろんお受けします。こんなにいい話、2度もあ
りますか」
「ただし、条件がある。」
「条件…?」
「吉崎千秋さんとお付き合いをなさっているそうじゃない。結婚のご予定が?」
「詳しいですね。でも、結婚の予定はありませんよ」
「千秋さんがそう仰っていました」
知輝は苦笑いを浮かべた。
「彼女は、顔がいいから暇つぶしに付き合っているだけです。第一、家柄が釣り合わない。」
「彼女と別れてくださらない?それが条件よ。」
「千秋と?もちろん構いませんが、なぜ彼女に拘るのです?」
「あなたが気にする必要はありませんわ。」
……足りない。
これで千秋は湯川知輝を失う。一時的にショックを与えることはできるだろう。
けれど、また千秋は動きだすに違いない。彼女から希望を奪い去らないと。
私はそう考えた。
「どうかしたの?貴女が私の部屋に来るのは久しぶりね。」
私が神楽の部屋に入ると、彼女は優しく微笑んだ。
初めて会った頃に比べると、随分距離が縮んだものだ。
「大手○○会社社長の妻と私って、同じ位なの?」
「まさか、冗談言わないで。杠竜吾の娘である貴女の方が何倍も上よ。それに…」
「それに?」
「大手○○会社って、倒産寸前の会社でしょう?比較の対象にすらならないわ」
「倒産寸前?…おかしいわ」
千秋は、有力な会社だと言っていた。
千秋が私に嘘を?
もしくは…千秋の彼が。
「ありがとうお姉様。おかげで決まったわ」
「次の復讐かしら?」
「えぇ。」
私はドアノブに手をかけ、思い出したように振り向いた。
「お姉様、その会社を傘下においてもいいかしら?」
「いいけれど、お父様の許可を得てからにしなさいね。傘下に入れた会社をまとめるのはお父様ですもの。」
「勿論ですわ。」
私は笑って部屋を出た。
三日後。
私は湯川知輝に会いに行った。
「湯川社長の息子さんはいらっしゃいますか?」
フロントの従業員に声をかけると、彼女は怪訝な顔で私を見た。
「いるにはいますが…。あの、どちら様でしょうか?」
「杠乙葉とお伝えください」
「えっ。あっ、申し訳ございません。杠家のお嬢様とは知らずご無礼を…」
「いいから早くお伝えくださらない?」
「は、はい。ただいま。」
従業員は慌てて湯川知輝に電話を入れた。そして、
「お待たせしました。どうぞこちらへ」
私は従業員に連れられてビルの最上階へと向かった。
倒産寸前というからどれほどのものかと思ったが、中々立派な会社だ。
「ようこそおいで下さいました。まさか杠家のお嬢様にお会い出来る日が来ようとは」
湯川知輝は嬉しそうに言った。
「私も、お会いできて嬉しいです。」
「……何か、重大なお話しですか?」
「この会社、倒産寸前だと耳にしました。」
「あぁ…。ご存知でしたか。倒産寸前のように見せかけるのが精一杯で…」
「あなた、我がグループに入りません?」
「え?」
知輝は目をみはった。
「つまり…我が社を立て直して下さると?」
「えぇ。お父様の許可はいただいています。あとは貴方の返事次第。」
「も、もちろんお受けします。こんなにいい話、2度もあ
りますか」
「ただし、条件がある。」
「条件…?」
「吉崎千秋さんとお付き合いをなさっているそうじゃない。結婚のご予定が?」
「詳しいですね。でも、結婚の予定はありませんよ」
「千秋さんがそう仰っていました」
知輝は苦笑いを浮かべた。
「彼女は、顔がいいから暇つぶしに付き合っているだけです。第一、家柄が釣り合わない。」
「彼女と別れてくださらない?それが条件よ。」
「千秋と?もちろん構いませんが、なぜ彼女に拘るのです?」
「あなたが気にする必要はありませんわ。」
……足りない。
これで千秋は湯川知輝を失う。一時的にショックを与えることはできるだろう。
けれど、また千秋は動きだすに違いない。彼女から希望を奪い去らないと。
私はそう考えた。
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