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第二章 狂いと絶望
8話 どうして?
しおりを挟む千秋の足が私の頭を踏みつけている。
私は目を閉じてじっと耐えた。
「やめて」とか、「いや」だとか言うと、余計に酷くなる。
頭が割れるんじゃないかと思うほど。
そして、増す笑い声。
私はそっと目を開いた。
彼女の姿を探すためだ。
私は教室の中を見回し、彼女を見つけた。
「杏…」
私は小さな声で呟いた。
そう遠い席では無いし、杏は耳がいいから聞こえてるだろう。
しかし、杏は私を見なかった。
私は再び声を絞り出した。
「杏……お願い。たすけて……。」
杏は私をチラッと見たものの、席を立つと教室を出ていった。
杏…?
私はただ困惑した。
今、無視した…?
どうして?
友達じゃなかったの?
私は訳が分からず、頭の痛みも感じなかった。
翌日、朱音達から逃げるようにトイレに入ると、運悪く千秋と若菜が入ってきた。
「松川さん、どこ行ったのよ」
千秋は不機嫌そうに言った。
「さぁね~。いないんだったら放っておきなよ。躍起になって探す必要無くない?」
若菜はそう言って大きなあくびをした。
そう。若菜は積極的に私をいじめる訳では無い。
友達がやってるから参加するといった具合だ。
けれど、いじめを止めたいとか、こんなの嫌だとかいう偽善者ではない。
若菜にとって、私へのいじめはちょっとした暇つぶしでしかないのだ。
「そういえば、昨日は面白かったよね。」
千秋は笑いながら言った。
「そうだっけ?」
「ほら。杏ちゃんに助け求めてたでしょ。」
「あ~。あったね」
「すっごく情けない声だったよ。友達にも見捨てられるとか、あいつの人生終わったね」
「そーね」
「ちょっと、若菜素っ気ないよ。朱音ちゃんがいないと急に素に戻るよね」
「気を使う必要ないからね。そもそも私は松川さんにこだわってる訳じゃない。」
「そうなの?」
次の若菜の言葉は、私の心を粉々にした。
「松川さんも、言い返せばいいのにね。そしたらもっと面白くなるのに」
2人は何気ない会話をしながら出ていった。
私は個室から出て鏡を見つめた。
怯えきった、酷い顔。
美雪と出会う前の私みたい。
言い返したくても出来ない。
言い返せば、暇つぶしとして笑いものにされるのか。
それなら、私はどうしたらいいの?
このまま耐えればいいの?
「美雪ちゃん。私、二度と終わらないような気がするよ…」
美雪ちゃんに会いたい。
会いたいよ…。
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