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第一章 幸せな日常

5話 約束

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「転校….…美雪ちゃんが?…本当に?」
「……うん」
ホームルームを終えた教室で、私は美雪に問いかけた。

「で、でもほら!いつでも連絡できるし、旅行すれば会えるしっ……お別れ…って訳じゃ…ない、から。」
美雪は私を慰めるように無理に笑顔を作っている。
「それは……分かってるけど…」
頭では理解出来ても、心が追いついていかない。
だってあまりに突然で…
それに、美雪がいなくなれば全てが終わってしまうような気がして…
「美雪ちゃん…」
「何?」
「…なんでもない」
行かないで欲しい、なんて我儘。ダメだよね。
杏は邪魔しないように見守ってくれていたが、急に言葉を発した。
「あーもう。見てらんないわ。悲しんでる暇があるなら2人で遊びに行ってきなよ。ほら、思い出作りに。」
「え、それなら杏ちゃんも一緒に…」
私が言い終わらないうちに杏が遮った。
「私は遠慮しとく。また別の日に美雪を誘うから。だから2人で行ってきなって」
「……そうだね。」
美雪は寂しそうに笑った。



その週の土曜日。私と美雪はテーマパークに来ていた。
どうせなら思い切り楽しみたいと、奮発したのだ。

「優美、それ買うの?」
ショップで私が眺めていたのは、四つ葉のストラップだった。
黄色とピンクのペアになっていて、四つ葉の上に小さな欠片がついている。2つの欠片を合わせるとハートが出来るのだ。
「こういうの、カップル用が多いんだけどね。これは友達同士で使えるんだって。色も黄色とピンクだし。美雪ちゃんと持ちたいんだけど少し高くて」
「テーマパークの売り物ってやたらと高いもんね。じゃあ割り勘にする?」
「えっ?でも…」
「優美、私へのプレゼントのつもりで選んでたでしょ?」
「な、なんで分かるの!?」
私が驚くと、美雪は「優美のことは何でもお見通しだよ」と言いたげな“ドヤ顔”をしてみせた。
私は苦笑いを浮かべて手の中のストラップを見つめた。
「しばらく会えないから何か形に残るものを渡したいなと思って」
美雪は私の手からストラップを取った。
「優美、私はね。一緒に買いたいな。2人で買ったって思った方が特別な感じしない?丁度私も優美に何か買おうと思ってたから。…ねっ?」
「そうだね。」
私が笑顔を向けると、美雪の顔が輝いた。
「よし。じゃあ買おう。このストラップはずっと仲良しでいる証ね。」
「本当?私のこと忘れちゃったりしない?」
「当たり前でしょ。私の一番は優美だけ。ずっと親友だから」
「約束だよ?」
「うん。約束。」
美雪は大きく頷いてくれた。
美雪と離れても心が繋がっているなら…私は大丈夫。
何があっても頑張れる。
そう思えた。

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