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第二章 アプリル地区 “卯”
5話 宿泊
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「やはり、離宮は居心地が良い。ソレイユ城とは大違いだ」
レーツェルは満足そうに頷いた。
シュトラール王国にある12の地区には、それぞれ城が建てられている。
王族の憩いの場、または政治が行われていたりと、用途は様々だ。
今レーツェルが訪れているのはヤヌアール地区、鎧岳城。
ヤヌアール地区はプランツェとグラセの家があるところだ。
「妹が生きていればこの国はもっと良くなっていくはずだったのに…」
「王子様…」
側で控えていた家来が顔を伏せた。
「本来跡を継ぐのは妹のペルラなのにな。王子である俺は民の支持を得ることはできない。…蓬莱帰蝶。ペルラ…か。」
「せめて、王女様を殺した輩をお探し下さいませ。」
「分かっているさ。」
レーツェルは窓の外を見つめた。
ほぼ同時刻。
ミネ達が1番最初に向かったのは、アプリル地区。
「可愛い街…」
ミネは小さく呟いた。
アプリル地区はピンクを基調とした建物が並び、可愛い雰囲気だ。
「地区によって雰囲気違うんだ。ソレイユは西洋風だろ?」
グラセは楽しそうだ。
「そういえば……どこで寝るの?」
ミネは財布の中を確認した。
財布には何日も泊まれるほどのお金はない。食費だけで精一杯だろう。
「そんな金は無いから知り合いの家に泊まるか…あるいは野宿だな」
プランツェがミネを見下ろして言った。
「野宿…」
「嫌ならお前だけでも泊まれそうな所を探すけど」
「どこでもいいよ。それか、片っ端から……」
そう言いかけて、ミネは口を閉じた。
プランツェとグラセはいいとして、私を泊めてくれる人なんているはずないし……
その様子を見ていたプランツェが再び口を開いた。
「片っ端から頼めばいいって言いたかったのか」
「……いや。別に」
「それもアリかもしれないな。適当にあたってみるか」
「い、いいよ。野宿で。泊めてくれる人なんていないだろうし」
「試してみたら案外大丈夫かもしれないぞ。お前は気にしすぎだ。全員がお前を嫌うとは限らないだろ」
「………うん」
プランツェは分かっているのか……私の不安を。
「どうするんだ?」
プランツェの問に、ミネは黙って頷いた。
「ごめんなさいね。泊めてあげられるような部屋が無いもので…」
「こちらこそ、時間取らせてしまってすみません。ありがとうございました」
グラセが丁寧にお辞儀をした。
「ここもだめか。やっぱり難しいよ…」
ミネは肩を落として呟いた。
さっきからインターホンを鳴らして回ってはこの調子。
「諦めちゃだめだよ。日が暮れるまでに見つかればそれでいいんだから。ね?」
グラセは慰めるように笑顔を見せて言った。
「うん…」
ミネはプランツェとグラセを交互に見つめた。
プランツェはクールで不器用だけど、人のことをよく見てる優しい人だ。
一方でグラセは真面目で優しくて、どこかほっとする。
こんな2人と仲良くなれて…私は幸せ者だ。
2人と一緒にいれば何でも乗り越えられるのではないか。そんな気がするよ。
それから、30分が経過した。
ミネ達が石畳の道を歩いていると、突然声をかけられた。
「貴方達、もしよろしければ我が家にいらっしゃいませんか?」
レーツェルは満足そうに頷いた。
シュトラール王国にある12の地区には、それぞれ城が建てられている。
王族の憩いの場、または政治が行われていたりと、用途は様々だ。
今レーツェルが訪れているのはヤヌアール地区、鎧岳城。
ヤヌアール地区はプランツェとグラセの家があるところだ。
「妹が生きていればこの国はもっと良くなっていくはずだったのに…」
「王子様…」
側で控えていた家来が顔を伏せた。
「本来跡を継ぐのは妹のペルラなのにな。王子である俺は民の支持を得ることはできない。…蓬莱帰蝶。ペルラ…か。」
「せめて、王女様を殺した輩をお探し下さいませ。」
「分かっているさ。」
レーツェルは窓の外を見つめた。
ほぼ同時刻。
ミネ達が1番最初に向かったのは、アプリル地区。
「可愛い街…」
ミネは小さく呟いた。
アプリル地区はピンクを基調とした建物が並び、可愛い雰囲気だ。
「地区によって雰囲気違うんだ。ソレイユは西洋風だろ?」
グラセは楽しそうだ。
「そういえば……どこで寝るの?」
ミネは財布の中を確認した。
財布には何日も泊まれるほどのお金はない。食費だけで精一杯だろう。
「そんな金は無いから知り合いの家に泊まるか…あるいは野宿だな」
プランツェがミネを見下ろして言った。
「野宿…」
「嫌ならお前だけでも泊まれそうな所を探すけど」
「どこでもいいよ。それか、片っ端から……」
そう言いかけて、ミネは口を閉じた。
プランツェとグラセはいいとして、私を泊めてくれる人なんているはずないし……
その様子を見ていたプランツェが再び口を開いた。
「片っ端から頼めばいいって言いたかったのか」
「……いや。別に」
「それもアリかもしれないな。適当にあたってみるか」
「い、いいよ。野宿で。泊めてくれる人なんていないだろうし」
「試してみたら案外大丈夫かもしれないぞ。お前は気にしすぎだ。全員がお前を嫌うとは限らないだろ」
「………うん」
プランツェは分かっているのか……私の不安を。
「どうするんだ?」
プランツェの問に、ミネは黙って頷いた。
「ごめんなさいね。泊めてあげられるような部屋が無いもので…」
「こちらこそ、時間取らせてしまってすみません。ありがとうございました」
グラセが丁寧にお辞儀をした。
「ここもだめか。やっぱり難しいよ…」
ミネは肩を落として呟いた。
さっきからインターホンを鳴らして回ってはこの調子。
「諦めちゃだめだよ。日が暮れるまでに見つかればそれでいいんだから。ね?」
グラセは慰めるように笑顔を見せて言った。
「うん…」
ミネはプランツェとグラセを交互に見つめた。
プランツェはクールで不器用だけど、人のことをよく見てる優しい人だ。
一方でグラセは真面目で優しくて、どこかほっとする。
こんな2人と仲良くなれて…私は幸せ者だ。
2人と一緒にいれば何でも乗り越えられるのではないか。そんな気がするよ。
それから、30分が経過した。
ミネ達が石畳の道を歩いていると、突然声をかけられた。
「貴方達、もしよろしければ我が家にいらっしゃいませんか?」
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