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第一章 ソレイユ地区 “始まり”
4話 旅
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ミネはそーっと家の扉を開いた。
すると、オートンヌと目が合った。
「…おかえりなさい吉乃。そろそろ夕食にしましょうか」
母の言葉に、ミネはほっとした。
良かった。いつも通りだ…。
今日の夕食はご飯一膳と芋の味噌汁だけだった。
ジュファは気まずそうにうつむいている。
「……お父さん。私ね、気にして…ないから」
「吉乃…?」
「お父さんとお母さんが大好きなことに変わりはないし。……両親が4人もいるんだって。そういうことにしておくよ」
「………ありがとう」
ジュファは恥ずかしそうに笑って続けた。
「お前は強い子だな」
「私はもう子どもじゃないよ」
「吉乃ももう大人か。」
「そうだよ。」
顔を合わせた2人は同時に笑った。
この時間が心地良い。
ミネは本題を切り出した。
「あのさ、今日、プランツェとグラセに会ってね」
「ソレイユに来てたのか?」
「うん。2人はこれから旅に出るんだって。それで……私も来ないかって」
「旅。か…」
「……怒った?」
「いや。…いいんじゃないか。ここにいるよりよっぽど楽になるだろう。吉乃はどうなんだ?」
「私?」
「旅に行きたいのか?」
「うん。生みの親を……私が生きる道を……探してみたい」
「………分かった。ちゃんとプランツェとグラセと仲良くな。母さんにもちゃんと話すんだぞ」
「もちろん。」
ミネは満面の笑みで頷いた。
一週間後。
「忘れ物ない?大丈夫なの?」
「お母さんったら。心配しすぎ。大丈夫だってば」
不安そうなオートンヌに、ミネは苦笑いした。
「気をつけてな」
ジュファは優しい口調だった。
「うん。」
ミネは笑顔で手を振った。
「じゃあ。行ってきます!」
少し歩いた先に、プランツェとグラセが待っていた。
「二人共。お待たせ」
「うわ。ミネ大荷物だね」
グラセは笑っている。
ミネはため息をついた。
「お母さんが心配性で、色々持たされちゃったの」
「彼女らしいね」
グラセは笑いながらも当たり前のようにミネの手から荷物を取り上げた。
「あ。ありがと」
「どういたしまして」
2人のやり取りを黙って見ていたプランツェは腕時計に目をやった。
「そろそろ行こう。もうすぐ電車が来る」
「そうだね」
ミネは2人と並んで歩き出した。
ソレイユともしばらくお別れ。か…
決して楽しかった訳ではないけど、それでもミネにとっては大切な故郷だ。
もしかしたら……お父さんとお母さんの故郷にも、行けるかもしれない。
ミネは、三日前にジュファが言っていたことを思い返した。
“「私達はアウグスト地区出身なんだ。王国1自然溢れる地区と言われていてね。まぁ、悪く言うと田舎だ。お前を育てるには不便だからソレイユに引っ越したんだよ」”
「………行ってきます。」
ミネは慣れ親しんだ街に別れを告げた。
一方その頃、ソレイユ城では…
「女王陛下。まもなく式典のお時間でございます。」
家来の1人がベーネに頭を下げた。
「……今日は我がシュトラール王国において忘れてはならない呪われた日。決して気を抜かぬように」
「はっ。」
「王女が死んで、今日で15年になるのだな」
「左様でございます。陛下」
「我が王国の後継者が必要だ。シュトラール王国は代々女王が治めていくもの。それなのに…」
ベーネはため息をつき、窓の側に寄った。
「帰蝶……。お前を殺した奴を必ず見つけ出さねば。」
-第一章 完-
すると、オートンヌと目が合った。
「…おかえりなさい吉乃。そろそろ夕食にしましょうか」
母の言葉に、ミネはほっとした。
良かった。いつも通りだ…。
今日の夕食はご飯一膳と芋の味噌汁だけだった。
ジュファは気まずそうにうつむいている。
「……お父さん。私ね、気にして…ないから」
「吉乃…?」
「お父さんとお母さんが大好きなことに変わりはないし。……両親が4人もいるんだって。そういうことにしておくよ」
「………ありがとう」
ジュファは恥ずかしそうに笑って続けた。
「お前は強い子だな」
「私はもう子どもじゃないよ」
「吉乃ももう大人か。」
「そうだよ。」
顔を合わせた2人は同時に笑った。
この時間が心地良い。
ミネは本題を切り出した。
「あのさ、今日、プランツェとグラセに会ってね」
「ソレイユに来てたのか?」
「うん。2人はこれから旅に出るんだって。それで……私も来ないかって」
「旅。か…」
「……怒った?」
「いや。…いいんじゃないか。ここにいるよりよっぽど楽になるだろう。吉乃はどうなんだ?」
「私?」
「旅に行きたいのか?」
「うん。生みの親を……私が生きる道を……探してみたい」
「………分かった。ちゃんとプランツェとグラセと仲良くな。母さんにもちゃんと話すんだぞ」
「もちろん。」
ミネは満面の笑みで頷いた。
一週間後。
「忘れ物ない?大丈夫なの?」
「お母さんったら。心配しすぎ。大丈夫だってば」
不安そうなオートンヌに、ミネは苦笑いした。
「気をつけてな」
ジュファは優しい口調だった。
「うん。」
ミネは笑顔で手を振った。
「じゃあ。行ってきます!」
少し歩いた先に、プランツェとグラセが待っていた。
「二人共。お待たせ」
「うわ。ミネ大荷物だね」
グラセは笑っている。
ミネはため息をついた。
「お母さんが心配性で、色々持たされちゃったの」
「彼女らしいね」
グラセは笑いながらも当たり前のようにミネの手から荷物を取り上げた。
「あ。ありがと」
「どういたしまして」
2人のやり取りを黙って見ていたプランツェは腕時計に目をやった。
「そろそろ行こう。もうすぐ電車が来る」
「そうだね」
ミネは2人と並んで歩き出した。
ソレイユともしばらくお別れ。か…
決して楽しかった訳ではないけど、それでもミネにとっては大切な故郷だ。
もしかしたら……お父さんとお母さんの故郷にも、行けるかもしれない。
ミネは、三日前にジュファが言っていたことを思い返した。
“「私達はアウグスト地区出身なんだ。王国1自然溢れる地区と言われていてね。まぁ、悪く言うと田舎だ。お前を育てるには不便だからソレイユに引っ越したんだよ」”
「………行ってきます。」
ミネは慣れ親しんだ街に別れを告げた。
一方その頃、ソレイユ城では…
「女王陛下。まもなく式典のお時間でございます。」
家来の1人がベーネに頭を下げた。
「……今日は我がシュトラール王国において忘れてはならない呪われた日。決して気を抜かぬように」
「はっ。」
「王女が死んで、今日で15年になるのだな」
「左様でございます。陛下」
「我が王国の後継者が必要だ。シュトラール王国は代々女王が治めていくもの。それなのに…」
ベーネはため息をつき、窓の側に寄った。
「帰蝶……。お前を殺した奴を必ず見つけ出さねば。」
-第一章 完-
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