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第一章 ソレイユ地区 “始まり”
2話 実の母親?
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「お前は……私達の実の娘ではないんだ」
一瞬、何を言っているのか理解できなかった。
「……え?」
「黙っていてすまない」
「じゃあどうして……どうして私はここにいるの」
「……お前が2歳の頃、見知らぬ女性がお前を抱いてやって来たんだ。彼女は無言で私達に赤ん坊を渡すと、そのまま立ち去っていった。」
「…………」
ミネは何も答えなかった。
ジュファはため息をついてから再び口を開いた。
「彼女はヴィオーラと名乗っていた。おそらくヴィオーラが…お前の実の母親だろう」
「……私の名前は、誰がつけたの。」
「私達がつけた。事情は何も分からなかったが、幼いお前が不憫に思われてならなかった。だから育てることにしたんだ。私達の娘として」
「………そう、なんだ」
「だが今では本当の娘のように想っているし、吉乃にどれほど救われてきたことか。…すまないね。こんな貧乏な暮らしをさせて」
「……ねぇ、お父さん」
「何だ?」
「ううん。何でもない」
どうして私は闇属性なの?
そう聞きかけたが口を閉じた。
代わりに笑顔を作って言った。
「……ちょっと出かけてくるね。そんなに遅くはならないから」
「あぁ。気をつけてな」
ミネが出て行ったのを見て、オートンヌが話しかけてきた。
「吉乃は何て言ってました?」
「……口数が減った。かな。」
「そうですか…」
「なぁ秋江。」
「はい?」
「今日話したのは失敗だったかな」
「まぁたそんな弱気なことを。成人したら話すと決めたのは菊二さんじゃない」
「そうだが………。吉乃に嫌われたらと思うと」
「あぁもう。なっさけない」
「………」
「吉乃なら大丈夫よ。私達の自慢の娘なんだから」
「………そうだな」
その頃ミネは人通りの少ない川沿いを歩いていた。
「………ヴィオーラ。か」
実の母親と言われてもいまいちピンとこなかった。
そりゃあそうだ。
私にとってのお母さんはオートンヌだけだし。
お父さんだって。
お父さんもお母さんも今までどんな気持ちで私を育ててきたんだろう。
私が十二支の猫で、闇属性で…
それを理由に馬鹿にされても両親はいつだって私の味方でいてくれた。
私達はお前がいてくれるだけで十分だよって。
私は両親が大好きだ。
けど……実の親じゃないってだけで、私達の繋がりを剥ぎ取られてしまったような気分だった。
なんて事を考えながらぶらぶら歩いていると、2人の男の子がやって来るのが見えた。
ミネは満面の笑みを浮かべて手を振った。
「プランツェにグラセ。久しぶり!」
一瞬、何を言っているのか理解できなかった。
「……え?」
「黙っていてすまない」
「じゃあどうして……どうして私はここにいるの」
「……お前が2歳の頃、見知らぬ女性がお前を抱いてやって来たんだ。彼女は無言で私達に赤ん坊を渡すと、そのまま立ち去っていった。」
「…………」
ミネは何も答えなかった。
ジュファはため息をついてから再び口を開いた。
「彼女はヴィオーラと名乗っていた。おそらくヴィオーラが…お前の実の母親だろう」
「……私の名前は、誰がつけたの。」
「私達がつけた。事情は何も分からなかったが、幼いお前が不憫に思われてならなかった。だから育てることにしたんだ。私達の娘として」
「………そう、なんだ」
「だが今では本当の娘のように想っているし、吉乃にどれほど救われてきたことか。…すまないね。こんな貧乏な暮らしをさせて」
「……ねぇ、お父さん」
「何だ?」
「ううん。何でもない」
どうして私は闇属性なの?
そう聞きかけたが口を閉じた。
代わりに笑顔を作って言った。
「……ちょっと出かけてくるね。そんなに遅くはならないから」
「あぁ。気をつけてな」
ミネが出て行ったのを見て、オートンヌが話しかけてきた。
「吉乃は何て言ってました?」
「……口数が減った。かな。」
「そうですか…」
「なぁ秋江。」
「はい?」
「今日話したのは失敗だったかな」
「まぁたそんな弱気なことを。成人したら話すと決めたのは菊二さんじゃない」
「そうだが………。吉乃に嫌われたらと思うと」
「あぁもう。なっさけない」
「………」
「吉乃なら大丈夫よ。私達の自慢の娘なんだから」
「………そうだな」
その頃ミネは人通りの少ない川沿いを歩いていた。
「………ヴィオーラ。か」
実の母親と言われてもいまいちピンとこなかった。
そりゃあそうだ。
私にとってのお母さんはオートンヌだけだし。
お父さんだって。
お父さんもお母さんも今までどんな気持ちで私を育ててきたんだろう。
私が十二支の猫で、闇属性で…
それを理由に馬鹿にされても両親はいつだって私の味方でいてくれた。
私達はお前がいてくれるだけで十分だよって。
私は両親が大好きだ。
けど……実の親じゃないってだけで、私達の繋がりを剥ぎ取られてしまったような気分だった。
なんて事を考えながらぶらぶら歩いていると、2人の男の子がやって来るのが見えた。
ミネは満面の笑みを浮かべて手を振った。
「プランツェにグラセ。久しぶり!」
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