正義という名の復讐 ~十二支から外された猫~

夢華彩音

文字の大きさ
上 下
18 / 20
第五章 ソレイユ地区“ソレイユ城”

17話 ワープ

しおりを挟む
「なん……だと?」
ゴーシュの目が大きく開かれた。
「魔術師よ。それは誠か」
「どうして国王陛下に嘘などつけましょうか。これは紛れもない事実。王女様を殺したのはヴィオーラの娘であるミネに間違いはございません」
魔術師のすがるような言葉遣いに押されるように、ゴーシュはミネを冷たい瞳で見据えた。
「この者どもを捕らえよ。…我が娘はこの国の世継ぎである。ペルラを殺しておきながらのうのうと望みを言いおって。この恥知らずが!」

ゴーシュの言葉と共に、控えていた兵士がミネの周りを取り囲んだ。
「ミネ。逃げるわよ」
グノンは低い声で囁くように言った。
「えっ。でも、私は何も…」
「そんな事分かってる。でも、国王陛下の命令は覆されない。このままじゃ捕まるわ」
「同感よ。後のことは逃げてからにしましょう。」
ラピヌは鋭い視線をミネに向けた。
「ミネちゃん。私の傍を離れないで。」
ティーグルはそう言って呪文を唱えた。

「フォティア・トイコス!」

すると、敵からミネ達を隠すように火の壁が現れた。
ティーグルは、その壁を保ったままゆっくりと範囲を広げた。
「ラピヌちゃん。お願い」
「OK。任せて。………アビスモ・ジェルバ!」
ラピヌが地面に手をついて呪文を唱えると、その手から植物が伸び、円状にミネ達を包み込んだ。
それを見たラピヌが反対の手で指を鳴らすと植物が溶け、大きな穴が空いた。
当然植物の上に乗っていたミネ達は、その穴に落ちていった。
「ら、ラピヌ。これ…」
「大丈夫。みんなを城外にワープさせるわ。ミネ、戦う覚悟はしておくのよ。国王のあの目は本気だったもの。そう簡単に分かってもらえるとは思えないわ」
「そんな…」
「さぁミネ。口を閉じておいて。もうすぐ着くわ」

ミネは不安な気持ちのままラピヌに言われた通りに口をつぐんだ。




ワープ先は城から少し離れた路地裏だった。
「ふう…私も魔法の練習しなきゃだめね。ここまでワープするので精一杯だわ」
と言いつつ、ラピヌは満足そうだった。
「初めて成功してよかったわね」
グノンはため息をついて立ち上がった。
ミネはぎょっとした。
「えぇっ? 初めてなの?」
「そうよ。今まで失敗続きだったの。……って、ちょっと、そんな顔しないでよ。緊急事態なんだから仕方ないじゃない」
「そ、そうだけど…」

OK任せてと自信満々に答えたラピヌの姿が思い出された。

スティードは顔をしかめた。
「ちょっと、騒がしいわよ。…うるさいのは嫌いなのよね。いつ敵が来るか分からない状況だってのに。」
「…失礼失礼」
ラピヌは大人しく口を閉じた。
流石に冷静なスティードには逆らえないらしい。
「私が住んでる地区に行きましょう。安全とは限らないけど、ソレイユにいるよりはまだマシだわ」
スティードの意見に反対する者は1人もいなかった。

ティーグルは不安そうに呟いた。
「王様に分かってもらえるといいけど……」



しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

白い結婚をめぐる二年の攻防

藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」 「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」 「え、いやその」  父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。  だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。    妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。 ※ なろうにも投稿しています。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

処理中です...