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第五章 ソレイユ地区“ソレイユ城”
16話 魔術師
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「ここが…ソレイユ城」
ミネは城門を目にして息を呑んだ。
ソレイユ地区に住んでいながら、城下町に来たことは無かった。
首都であるソレイユ地区の中でも田舎の方に家があるからだ。
「ご両親に会ってからでもいいのよ?」
と、グノンがミネに問いかけた。
「いいの。まだ始まったばかりなんだし。それに今行くと逆に怒られちゃう。諦めたのかってね」
「そう…」
実の親でなくとも、ジュファとオートンヌは私の両親だ。
2人の期待を裏切るようなことはしたくなかった。
「早く行くわよ」
スティードは常連客かのように門番に話しかけ、許可を貰っていた。
「何ぐずぐずしてるの。あんたの為に来たんだからしっかりしなさい」
スティードはミネの背中を軽く押した。
ティーグルは慌ててミネの耳元で囁いた。
「口は悪いけど、いいひとなの。誤解しないであげてね」
「もちろんよ」
ミネはキリッと前を見据えて城に足を踏み入れた。
大広間に通された仲間達は、あまりに豪華な装飾に声を失った。
しかし、ミネは妙な違和感を覚えた。
『私、ここに来たことがある。』
ただ、何の目的で来たのかは分からなかった。
「国王陛下のおなーりー。皆、頭を下げるのです。」
と、家来の一人が声を上げた。
皆が頭を下げると、派手な衣装を身にまとった国王が広間に入ってきた。
玉座に腰かけた国王、ゴーシュはミネ達を興味深そうに眺めた。
「面をあげよ。…かつて我がシュトラール王国が戦をしていた時代に軍を動かしていた十二支が5人も集うとは。珍しい事だ。してスティードよ。そなたがこの者達を連れてきたのであったな」
「はい。国王陛下。恐れながら、我らが王に頼みがあって参った次第でございます。」
「そなたの頼みとあらば聞いてやらぬことはない。が、内容次第だ。申してみよ」
「頼みがあるのは私ではなく、この者でございます。名をミネと申します。」
スティードはミネに話すよう促した。
ミネは緊張を隠して1歩前へと進み出た。
「お初にお目にかかります、国王陛下。実は私は幼き頃に両親と別れ、現在は養女としてソレイユで暮らしております。」
「待て。お主の言わんとする事は大体分かった。……おい、そこの者、魔術師を連れて参れ」
「はっ。」
指示を受けた家来は、恭しく頭を下げた後、広間を出ていった。
「魔術師…?」
プランツェの顔が微かに歪んだ。
“「違法な研究をしているのは魔術師と呼ばれる人達だから」”
と、グノンが言っていたことを思い出していた。
しばらくして、魔術師と呼ばれる人がやってきた。
「お呼びでございましょうか」
「あの者が実の親を探しておるそうだ。…確か、ミネといったな。余の解釈で間違いはないか」
「はい陛下。仰せの通りにございます」
「彼女は我が国が誇る魔術師だ。必ず力になれるであろう。魔術師に、己が知っていることを伝えるが良い。」
「ミネという者、できる限り知っていることを我に伝えたまえ」
魔術師はミネがいる方向をじっと見つめた。
その顔はフードで半分以上覆われており、表情が読めなかった。
「はい。…実の母が養父に私を託したと聞いております。実の母親がヴィオーラという名であることしか分かっていません。」
“ヴィオーラ”という名前を聞いた途端、魔術師は豹変した。
「その者の願いを聞き入れることは出来ません!!」
「何故だ」
ゴーシュが驚いて尋ねると、魔術師はゴーシュに這いずるように跪いた。
「あの者を捕らえてください陛下。あやつのような人間が、神聖なる城に足を踏み入れることすら重罪!」
「何を言っておるのだ」
ミネ達がただ目を見開いて魔術師の次の言葉を待った。
ミネは心臓が止まるような心地がした。
魔術師は声を震わせて叫ぶように言った。
「王女ペルラ様を殺したのは、今ここにいるミネという者でございます!」
ミネは城門を目にして息を呑んだ。
ソレイユ地区に住んでいながら、城下町に来たことは無かった。
首都であるソレイユ地区の中でも田舎の方に家があるからだ。
「ご両親に会ってからでもいいのよ?」
と、グノンがミネに問いかけた。
「いいの。まだ始まったばかりなんだし。それに今行くと逆に怒られちゃう。諦めたのかってね」
「そう…」
実の親でなくとも、ジュファとオートンヌは私の両親だ。
2人の期待を裏切るようなことはしたくなかった。
「早く行くわよ」
スティードは常連客かのように門番に話しかけ、許可を貰っていた。
「何ぐずぐずしてるの。あんたの為に来たんだからしっかりしなさい」
スティードはミネの背中を軽く押した。
ティーグルは慌ててミネの耳元で囁いた。
「口は悪いけど、いいひとなの。誤解しないであげてね」
「もちろんよ」
ミネはキリッと前を見据えて城に足を踏み入れた。
大広間に通された仲間達は、あまりに豪華な装飾に声を失った。
しかし、ミネは妙な違和感を覚えた。
『私、ここに来たことがある。』
ただ、何の目的で来たのかは分からなかった。
「国王陛下のおなーりー。皆、頭を下げるのです。」
と、家来の一人が声を上げた。
皆が頭を下げると、派手な衣装を身にまとった国王が広間に入ってきた。
玉座に腰かけた国王、ゴーシュはミネ達を興味深そうに眺めた。
「面をあげよ。…かつて我がシュトラール王国が戦をしていた時代に軍を動かしていた十二支が5人も集うとは。珍しい事だ。してスティードよ。そなたがこの者達を連れてきたのであったな」
「はい。国王陛下。恐れながら、我らが王に頼みがあって参った次第でございます。」
「そなたの頼みとあらば聞いてやらぬことはない。が、内容次第だ。申してみよ」
「頼みがあるのは私ではなく、この者でございます。名をミネと申します。」
スティードはミネに話すよう促した。
ミネは緊張を隠して1歩前へと進み出た。
「お初にお目にかかります、国王陛下。実は私は幼き頃に両親と別れ、現在は養女としてソレイユで暮らしております。」
「待て。お主の言わんとする事は大体分かった。……おい、そこの者、魔術師を連れて参れ」
「はっ。」
指示を受けた家来は、恭しく頭を下げた後、広間を出ていった。
「魔術師…?」
プランツェの顔が微かに歪んだ。
“「違法な研究をしているのは魔術師と呼ばれる人達だから」”
と、グノンが言っていたことを思い出していた。
しばらくして、魔術師と呼ばれる人がやってきた。
「お呼びでございましょうか」
「あの者が実の親を探しておるそうだ。…確か、ミネといったな。余の解釈で間違いはないか」
「はい陛下。仰せの通りにございます」
「彼女は我が国が誇る魔術師だ。必ず力になれるであろう。魔術師に、己が知っていることを伝えるが良い。」
「ミネという者、できる限り知っていることを我に伝えたまえ」
魔術師はミネがいる方向をじっと見つめた。
その顔はフードで半分以上覆われており、表情が読めなかった。
「はい。…実の母が養父に私を託したと聞いております。実の母親がヴィオーラという名であることしか分かっていません。」
“ヴィオーラ”という名前を聞いた途端、魔術師は豹変した。
「その者の願いを聞き入れることは出来ません!!」
「何故だ」
ゴーシュが驚いて尋ねると、魔術師はゴーシュに這いずるように跪いた。
「あの者を捕らえてください陛下。あやつのような人間が、神聖なる城に足を踏み入れることすら重罪!」
「何を言っておるのだ」
ミネ達がただ目を見開いて魔術師の次の言葉を待った。
ミネは心臓が止まるような心地がした。
魔術師は声を震わせて叫ぶように言った。
「王女ペルラ様を殺したのは、今ここにいるミネという者でございます!」
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