正義という名の復讐 ~十二支から外された猫~

夢華彩音

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第四章 マルス地区“寅”

15話 闇を変える力

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「えぇっ!?」
ミネは驚いてラピヌとティーグルを交互に見つめた。
「こんなに可愛いのに…ラピヌよりも強い?」
「可愛いだなんて…」
ティーグルは照れくさそうに笑った。
「ちょっとミネ。私が可愛くないとでも言いたいのかしらっ」
ラピヌは不満を顔に出した。
「だってラピヌ騒がしいから。それに戦いになると人が変わるでしょ。」
「ミネまでそんなことを言うなんて…どうして私には当たりが強いのよ」


「ミネちゃん、ラピヌの扱い方を分かってきたみたい。」
グノンは楽しそうに笑っている。
スティードはため息をついてミネとラピヌの間に割って入った。
「ほら、早く移動するわよ。いつまでここにいる気?ティーグルが一般人にバレると面倒なんだから」
「あ、ごめんなさい」
ミネはティーグルに向かって手を合わせた。
「いいよ。気にしないで。ミネちゃん、魔法の練習頑張ってね。私でよければお手伝いするよ?」
「ありがとう。」
ミネは微笑んだ。

自分のために旅を始めたのに、いつの間にか沢山の仲間が集まった…
ミネは、今ここにいるみんなに感謝せずにはいられなかった。



翌日、ホテルの屋上でミネは考え事をしていた。
自分のしたいこと…
仲間を守る力…
この闇で防御魔法が使えるとは思えないけど、練習してみるしかない。

新しい魔法を生み出すには、まず自分で想像するのだ。
「防御といえば、やっぱり結界?みんなを包み込めるくらい大きな、大きな結界。」
ミネは目を閉じた。
「闇を結界に…。闇は物体ではないから物理攻撃を防ぐのは不可能。…だったら、この闇を真っ黒にして、敵の視界から仲間を守る。」

守る。
仲間を。
真っ黒な闇の力で。
黒く…黒く…



「おい」
不意に声をかけられ、ミネの集中が途切れた。
「えっ?…あぁ、プランツェか。何か用?」
「いや、一人でいる所を見つけたから。考え事でもしてたのか?」
「まぁそんなところ。」

プランツェはミネの隣に腰を下ろした。
そして、持っていたカフェオレを差し出した。
「ほら。お前がいたから2つ買ってきた」
「ありがと」
素直に受け取ったミネは、付属のストローを飲み口に刺した。
カフェオレを口に含むと、ほんのりした甘さが広がった。
「私、これ好きなの。知ってた?」
「あぁ。よく飲んでたのを見てたから」
「プランツェは私のことをよく見てるよね。私自身が気づかないことも」
「……お前が分かっていないだけじゃないのか。お前は自分のことには特に疎い」
「……そうかな」
ミネは少し考えてから口を開いた。
「新しい魔法を考えてたの。でも、難しいね。考えられないってわけじゃないんだけど、呪文が口から出てこない。特定の言葉が無いと魔法としては現れないし」
「……実践してみたらいいんじゃね?折角十二支の仲間がいるわけだし。お前は本当に必要な時に何かを生み出すことが出来る。嫌われがちな闇の力をも変えてしまうほどの。少なくとも俺はそう思ってる。」
「グノンやスティードが言ってた。闇の力を信じろって。私はこの力と付き合っていくしかないんだって実感した。闇の力を変えるなんてことは出来ないけど、闇は決して悪ではないって伝えられたらいいなって思うようにはなったよ」
「それで十分だろ。無理して焦っても人は変わらない。ゆっくり頑張れよ」
「……うん」
ミネは深く頷いた。


すると、スティードが屋上に現れた。
「2人ともここにいたんだ」
「もしかして、探してた?」
ミネは慌てて立ち上がった。
スティードは普段と変わらない口調で言った。

「王様の許可がおりた。なるべく早く荷物をまとめてマルス地区を出よう。ソレイユ城に行くよ」
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