正義という名の復讐 ~十二支から外された猫~

夢華彩音

文字の大きさ
上 下
15 / 20
第四章 マルス地区“寅”

14話 想像力

しおりを挟む
ティーグルと共に向かったのは大きなホテルだった。
「最近はこのホテルに滞在しているの。忙しいから家には帰れてなくて。あ、それとねっ。彼女も来てくれるって」
ティーグルは微笑んだ。その友達と確認がとれたらしい。
ティーグルは喜怒哀楽がすぐ顔に出るお人好しだとラピヌが教えてくれた。
「もう着くって?」
ミネが聞くとティーグルは嬉しそうに頷いた。
「用事があって丁度マルス地区に来てたんだって。近くだからすぐ行くって言ってくれたよ」
ミネ達はフロントに近いカフェで待つことにした。
ここは有名人専用に近いホテルだから、一般の人に会う可能性は極めて低い。

ミネは隣にいるグノンに話しかけた。
「グノンやラピヌも知ってる人?」
「ううん。知らないわ。国王と面識があるなんて…すごいことよ」
「だよね」

そんな話をしていると、ティーグルがフロントを指さして言った。
「ねぇ、みんな。来たよ」
ミネがフロントに目をやると、大人っぽく綺麗な人がやってくるのが見えた。
「彼女?」
「うん。スティードっていうの。十二支の一人だよ」

スティードはティーグルの側までやってきた。
「いつも突然呼び出すのね。私も暇じゃないのよ」
「ごめんなさい…」
ティーグルは拗ねながらも謝っている。
「で?私に話があるのは……あんた?」
スティードはミネをじっと見つめた。
「は、はい」

ミネは簡単な自己紹介とこれまでの経緯をスティードに話した。
スティードは表情を変えることなく黙って聞いていた。
「要するに、私が国王に聞けばいいのね。」
「……うん。」
「そう。でもその前にあんたはすることがある」
「すること?」
「大して強くもないくせに冒険が出来ると思ってるの?」
「そ、それは…」
ミネはたじろいだ。図星だったので返す言葉が見つからない。
「いい?まずはさっさと自分の属性を信用しなさい。そして、使い道を考える」
「…どういうこと?」
「何のために力を使うのか。使い方次第で力は善にも悪にもなる。あんたのその“闇”だって最初から悪いわけじゃない。」
「…私は……」
ミネは少し考えてから再び口を開いた。
「私は仲間を助けたい。私に協力してくれる皆を、守りたい」
「そう。それならまずは視野を広げる事ね。あらゆる情報を吸収して想像力をつける。新しい魔法を生み出すには想像するの。自分が今どんな魔法が必要なのか、その魔法を作るには何をすればいいのか。そして実践は夜にすることね。」
口調は冷たいものの、スティードは色々と教えてくれた。それはミネにとって自信をつけるためのものだ。
「私、頑張ってみる。ありがとう。えーっと…スティード、さん?」
「スティードでいい。その呼ばれ方は嫌いよ」
「わ、分かった。ありがとう。スティード」
「別に。」
スティードは椅子に座って店員に紅茶を注文している。

ティーグルはミネに耳打ちした。
「スティードはね、秘密警察なの。期待の新人って呼ばれてるわ」
「ひ、秘密警察!?」
「うん。あのね、秘密警察は、普通の警察とはちょっと違うの。簡単に言うと…スパイ。みたいな?」
「す、すごい…」
「でしょっ?スティードは強くて賢いから大活躍なの。国王陛下が注目なさるくらいだもん」
ティーグルは誇らしげに言った。
すると、ラピヌがにやにやしながらミネに囁いた。

「そーんな事言ってるけど、実はティーグルも相当強いのよ。悔しいけど、私よりも強いんだから。」
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

白い結婚をめぐる二年の攻防

藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」 「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」 「え、いやその」  父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。  だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。    妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。 ※ なろうにも投稿しています。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

異世界にアバターで転移?させられましたが私は異世界を満喫します

そう
ファンタジー
ナノハは気がつくとファーナシスタというゲームのアバターで森の中にいた。 そこからナノハの自由気ままな冒険が始まる。

処理中です...