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第三章 セプタンブル地区“申”
10話 グノン
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『どちら様でしょうか?』
「私よ。ラピヌ。……グノンはいるかしら?」
『ラピヌね。今開けるわ』
「えぇ。お願い」
「…グノン?」
ミネが聞くと、ラピヌは得意そうに言った。
「十二支の1人よ。マギアの研究をしてるの」
「マギアの研究?」
「詳しいことはグノンに聞くといいわ」
その時、扉から1人の女性が出てきた。ラピヌは顔をほころばせて微笑んだ。
「シアンス!お久しぶり」
「ラピヌ、しばらく来なかったわね。忙しかったの?」
「少しね。それよりグノンは?」
「はいはい。呼んでくるから早くお入りなさいな。……あら?そちらの方々は?」
シアンスはミネを見つめた。
「あっ、私はミネといいます。こっちはプランツェとグラセ」
「ラピヌにもいいお友達がいるのね」
「ちょっと、それはどういう意味かしらっ」
ラピヌはふくれっ面を見せた。
ラピヌがここまで無邪気に話す姿を見るのは初めてだ。ここの家族とは深い関係らしい。
「さぁ、早く入りなさいな。お茶を入れましょう」
4人はリビングに通された。
「ちょっと待っててね。今呼んでくるから。あの子ったら研究に没頭すると周りが見えなくなるのよねぇ」
シアンスは苦笑いを浮かべて2階に上がっていった。
ほどなくして階段を駆け下りる音が響き、1人の女の子がリビングに入ってきた。
「ラピヌ!久しぶり。あなたは相変わらず何も変わらないわね」
笑顔で話す彼女がどうやらグノンのようだ。
ラピヌはグノンに飛びついた。
「お久しぶり。お姉様」
満面の笑みで答えるラピヌに、ミネは思わず大声で言った。
「えっ!?お姉様??」
「そうよ。グノンは私の実の姉よ。」
ラピヌは当然のように言った。
「ラピヌ…あなた何も話してなかったのね」
グノンはため息をついた。そしてミネを見つめて口を開いた。
「紹介が遅れてごめんなさいね。私はグノン。十二支の“申”よ。」
ミネ、プランツェ、グラセの自己紹介を終えた後、ミネはグノンに尋ねた。
「グノンとラピヌは姉妹なのよね?どうして別々に?」
「簡単よ。私が親と喧嘩して縁を切ったの」
「えっ」
「6年ほど前かしら。マギアの研究をしたいって両親に言ったのよ。そしたら『我が家は名家だ。長女であるお前に相応しくない』って跳ね返されたの。何度言っても分かってもらえなくて、『そんなに研究がしたいのならこの家を出ていきなさい。その代わり遺産相続やその他の権限は全てラピヌのものとする』と言われたわ。だから私は家を出たの。そして以前からこっそりと研究させてくれていたシェンツァさんの養女としてこの家に来たの。シアンスはシェンツァさんの奥さん。要は親代わり」
グノンに続き、ラピヌも口を開いた。
「私はお姉様の為にあの家に残っているの。だって私まで出ていったらお姉様が連れ戻されちゃうわ。だからこうして会いに来てるの」
「私の研究を興味津々で聞いてくれるのよ。だってほら…ラピヌって戦いになると人が変わるじゃない?」
「お姉様ったら…」
2人は笑い合っている。
グノンは穏やかで、優しいお姉さんという印象だ。
そんな事情を抱えていながら優しい笑顔をたたえている。
「あの妹とは大違いだな」
プランツェはぼそっと呟いた。
「そうだねぇ……。プランツェ、ラピヌが苦手なの?」
ミネはにやにやしながらプランツェに耳打ちした。
「別に…」
「あっ。それかグノンのことが気になるとか?」
「……バカか。そんなんじゃない」
「ふ~~ん??」
プランツェはそっぽを向いて、ミネには聞こえないように言った。
「俺はお前が……」
「私よ。ラピヌ。……グノンはいるかしら?」
『ラピヌね。今開けるわ』
「えぇ。お願い」
「…グノン?」
ミネが聞くと、ラピヌは得意そうに言った。
「十二支の1人よ。マギアの研究をしてるの」
「マギアの研究?」
「詳しいことはグノンに聞くといいわ」
その時、扉から1人の女性が出てきた。ラピヌは顔をほころばせて微笑んだ。
「シアンス!お久しぶり」
「ラピヌ、しばらく来なかったわね。忙しかったの?」
「少しね。それよりグノンは?」
「はいはい。呼んでくるから早くお入りなさいな。……あら?そちらの方々は?」
シアンスはミネを見つめた。
「あっ、私はミネといいます。こっちはプランツェとグラセ」
「ラピヌにもいいお友達がいるのね」
「ちょっと、それはどういう意味かしらっ」
ラピヌはふくれっ面を見せた。
ラピヌがここまで無邪気に話す姿を見るのは初めてだ。ここの家族とは深い関係らしい。
「さぁ、早く入りなさいな。お茶を入れましょう」
4人はリビングに通された。
「ちょっと待っててね。今呼んでくるから。あの子ったら研究に没頭すると周りが見えなくなるのよねぇ」
シアンスは苦笑いを浮かべて2階に上がっていった。
ほどなくして階段を駆け下りる音が響き、1人の女の子がリビングに入ってきた。
「ラピヌ!久しぶり。あなたは相変わらず何も変わらないわね」
笑顔で話す彼女がどうやらグノンのようだ。
ラピヌはグノンに飛びついた。
「お久しぶり。お姉様」
満面の笑みで答えるラピヌに、ミネは思わず大声で言った。
「えっ!?お姉様??」
「そうよ。グノンは私の実の姉よ。」
ラピヌは当然のように言った。
「ラピヌ…あなた何も話してなかったのね」
グノンはため息をついた。そしてミネを見つめて口を開いた。
「紹介が遅れてごめんなさいね。私はグノン。十二支の“申”よ。」
ミネ、プランツェ、グラセの自己紹介を終えた後、ミネはグノンに尋ねた。
「グノンとラピヌは姉妹なのよね?どうして別々に?」
「簡単よ。私が親と喧嘩して縁を切ったの」
「えっ」
「6年ほど前かしら。マギアの研究をしたいって両親に言ったのよ。そしたら『我が家は名家だ。長女であるお前に相応しくない』って跳ね返されたの。何度言っても分かってもらえなくて、『そんなに研究がしたいのならこの家を出ていきなさい。その代わり遺産相続やその他の権限は全てラピヌのものとする』と言われたわ。だから私は家を出たの。そして以前からこっそりと研究させてくれていたシェンツァさんの養女としてこの家に来たの。シアンスはシェンツァさんの奥さん。要は親代わり」
グノンに続き、ラピヌも口を開いた。
「私はお姉様の為にあの家に残っているの。だって私まで出ていったらお姉様が連れ戻されちゃうわ。だからこうして会いに来てるの」
「私の研究を興味津々で聞いてくれるのよ。だってほら…ラピヌって戦いになると人が変わるじゃない?」
「お姉様ったら…」
2人は笑い合っている。
グノンは穏やかで、優しいお姉さんという印象だ。
そんな事情を抱えていながら優しい笑顔をたたえている。
「あの妹とは大違いだな」
プランツェはぼそっと呟いた。
「そうだねぇ……。プランツェ、ラピヌが苦手なの?」
ミネはにやにやしながらプランツェに耳打ちした。
「別に…」
「あっ。それかグノンのことが気になるとか?」
「……バカか。そんなんじゃない」
「ふ~~ん??」
プランツェはそっぽを向いて、ミネには聞こえないように言った。
「俺はお前が……」
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