9 / 20
第二章 アプリル地区 “卯”
8話 馬
しおりを挟む
ミネ達はリビングでほっと息をついた。
「怪我しなかった?」
と、ラピヌが心配そうに尋ねてきた。
「平気。……でも何でだろ、戦ったのに全然怪我してないの。不思議だよね」
「そりゃあ、怪我させないようにしたもの」
「えっ。性格豹変してたのにそんなこと出来たの?」
「ちょっと。豹変って言い過ぎではなくて?…まぁ、多少自覚はあるのよ。戦いになるのテンションが高くなってしまう癖があって」
「ええー。こっちは必死だったのに…」
「おかげで楽しかったわ。久々に十二支と戦えて。ずっと召使いと手合わせしてたのだけど、皆弱いから」
そう言ってラピヌは首をすくめてみせた。
「ラピヌはどの動物なの?」
「動物?…あぁ、十二支ね。私は“卯” 木属性よ。」
「いいなぁ。可愛くて」
「そう?可愛いだけじゃ勝てないわよ。どうせならもっと強そうなのが良かったわ。…ミネは?」
「私は……」
ミネは口を閉じた。
ラピヌにも距離を置かれるのだろうか。他の人と同じように。
「どうしたの?」
ラピヌは不思議そうに首をかしげている。
「私……」
ミネは俯いて黙り込んだ。
「…もしかして、“猫”なの?」
「えっ。……なんで」
「だって言えなくなるってことは良いものではないのでしょう?当たりかしら」
「………猫はタブーだから」
「んー。それってあくまで一般論よ」
「え?」
ミネが驚いて顔を上げると、ラピヌはにっこりと笑った。
「同じ十二支から見て猫ってそこまで異質な存在ではないのよ。実際、動物によって何かが変わる訳では無いもの。ただ、猫とネズミが相性悪いのは昔からあるらしいわ。ただ…」
そう言ってラピヌはミネをじっと見つめた。
「ただ…?」
「闇の力という点においては注意が必要だわ。あなたはまだ闇を使いこなせていないから今のところは大丈夫だけど」
「どういうこと?」
「闇属性は他よりも力が強いのよ。もしもその力を使いこなせるようになってしまった場合、十二支全員が集まっても勝てないほどになってしまう。使い手によっては世界をも脅かす」
「そんな力が私に…」
「大丈夫。使い手自身が闇堕ちしなければそんなことにはならないわ。ミネはまず、自分の力をちゃんと知って、しっかり向き合うことが必要よ」
「向き合う…」
「ええ。その力を使うことを恐れていては進まないわよ」
ラピヌは力強くうなずいた。
三日後。
ミネ達は次の地区に向かうことにした。
「ラピヌ。色々とありがとう」
「こちらこそ。楽しかったわ。」
「私…闇の力と向き合ってみるね。先は長いだろうけど、旅の目的のためにも」
「そうね。……ところで、あなた達もしかして徒歩なの?」
「え?うん」
「それじゃだめよ。いつ狙われるか分からないじゃない。」
「ね、狙われる?」
「そうよ。十二支の中には私のように戦いたくてうずうずしてる人が沢山いるもの。逃げるって選択肢を自分で減らしてどうするの。少し待ってて」
ラピヌは慌てて屋敷に戻り、四頭の馬を連れてきた。
「えっ。ラピヌ、その馬…」
「お貸しするわ。大丈夫。大人しい子達だから」
「いやいや、悪いよ」
「平気よ。だって私もついて行くもの。ねっ?」
ラピヌは隣に控えている召使いに言った。
「はい。お嬢様のお荷物はまとめてあります」
召使いは自信満々だ。
ミネはおかしくなって笑った。
「相談もなく勝手に決めるなんて……でも、ラピヌがいれば安心かも」
プランツェとグラセも頷いている。
ラピヌは笑顔で言った。
「決まりね。さぁ、次の地区に行きましょうか」
「怪我しなかった?」
と、ラピヌが心配そうに尋ねてきた。
「平気。……でも何でだろ、戦ったのに全然怪我してないの。不思議だよね」
「そりゃあ、怪我させないようにしたもの」
「えっ。性格豹変してたのにそんなこと出来たの?」
「ちょっと。豹変って言い過ぎではなくて?…まぁ、多少自覚はあるのよ。戦いになるのテンションが高くなってしまう癖があって」
「ええー。こっちは必死だったのに…」
「おかげで楽しかったわ。久々に十二支と戦えて。ずっと召使いと手合わせしてたのだけど、皆弱いから」
そう言ってラピヌは首をすくめてみせた。
「ラピヌはどの動物なの?」
「動物?…あぁ、十二支ね。私は“卯” 木属性よ。」
「いいなぁ。可愛くて」
「そう?可愛いだけじゃ勝てないわよ。どうせならもっと強そうなのが良かったわ。…ミネは?」
「私は……」
ミネは口を閉じた。
ラピヌにも距離を置かれるのだろうか。他の人と同じように。
「どうしたの?」
ラピヌは不思議そうに首をかしげている。
「私……」
ミネは俯いて黙り込んだ。
「…もしかして、“猫”なの?」
「えっ。……なんで」
「だって言えなくなるってことは良いものではないのでしょう?当たりかしら」
「………猫はタブーだから」
「んー。それってあくまで一般論よ」
「え?」
ミネが驚いて顔を上げると、ラピヌはにっこりと笑った。
「同じ十二支から見て猫ってそこまで異質な存在ではないのよ。実際、動物によって何かが変わる訳では無いもの。ただ、猫とネズミが相性悪いのは昔からあるらしいわ。ただ…」
そう言ってラピヌはミネをじっと見つめた。
「ただ…?」
「闇の力という点においては注意が必要だわ。あなたはまだ闇を使いこなせていないから今のところは大丈夫だけど」
「どういうこと?」
「闇属性は他よりも力が強いのよ。もしもその力を使いこなせるようになってしまった場合、十二支全員が集まっても勝てないほどになってしまう。使い手によっては世界をも脅かす」
「そんな力が私に…」
「大丈夫。使い手自身が闇堕ちしなければそんなことにはならないわ。ミネはまず、自分の力をちゃんと知って、しっかり向き合うことが必要よ」
「向き合う…」
「ええ。その力を使うことを恐れていては進まないわよ」
ラピヌは力強くうなずいた。
三日後。
ミネ達は次の地区に向かうことにした。
「ラピヌ。色々とありがとう」
「こちらこそ。楽しかったわ。」
「私…闇の力と向き合ってみるね。先は長いだろうけど、旅の目的のためにも」
「そうね。……ところで、あなた達もしかして徒歩なの?」
「え?うん」
「それじゃだめよ。いつ狙われるか分からないじゃない。」
「ね、狙われる?」
「そうよ。十二支の中には私のように戦いたくてうずうずしてる人が沢山いるもの。逃げるって選択肢を自分で減らしてどうするの。少し待ってて」
ラピヌは慌てて屋敷に戻り、四頭の馬を連れてきた。
「えっ。ラピヌ、その馬…」
「お貸しするわ。大丈夫。大人しい子達だから」
「いやいや、悪いよ」
「平気よ。だって私もついて行くもの。ねっ?」
ラピヌは隣に控えている召使いに言った。
「はい。お嬢様のお荷物はまとめてあります」
召使いは自信満々だ。
ミネはおかしくなって笑った。
「相談もなく勝手に決めるなんて……でも、ラピヌがいれば安心かも」
プランツェとグラセも頷いている。
ラピヌは笑顔で言った。
「決まりね。さぁ、次の地区に行きましょうか」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

白い結婚をめぐる二年の攻防
藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」
「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」
「え、いやその」
父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。
だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。
妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。
※ なろうにも投稿しています。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる