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おまけ
幼い頃の織絵と美南①
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織絵が教室に入ると、既に美南は自分の席で何かしていた。
驚かせようとそーっと近づいてみたが、気づきそうにない。
美南は夢中で何か書いていた。
「何書いてるの?」
そう尋ねると、美南はぎょっとしてノートを手で覆った。
「な、何?………あぁ、なんだ織絵か。」
「なんだって何よ~。…ねぇ。何書いてたの?」
「ただの落書きだってば」
「ただの落書きなら隠す必要ないでしょ。ほら、かして。」
美南が油断した隙に、織絵はノートを引っ張った。
「あっ!ちょっと織絵」
「そんなに見せたくないの~?」
「………いいけど」
美南は諦めたようで小さくため息をついた。
ノートには可愛い動物の絵が描いてあった。
猫。
うさぎ。
犬。
パンダ。……などなど。
「うわぁ。可愛い!…美南って意外と絵が上手いのね」
「“意外と”は余計よ。」
「………ねぇ。美南絵本書いたら?」
「絵本?どうして?」
「だってこんなに上手いんだから活かさないと勿体無いじゃない」
「……そうだねぇ。考えたこともなかった。あくまでただの趣味だし」
「趣味を仕事にしたら楽しそうじゃない?」
織絵はにっこりと笑った。
「そう言う織絵は将来何になりたいの?」
「………」
美南の問いに織絵は一瞬顔を曇らせた。
そして誤魔化すように笑って言った。
「私には何も無いよ。夢も、希望も。何一つない。」
驚かせようとそーっと近づいてみたが、気づきそうにない。
美南は夢中で何か書いていた。
「何書いてるの?」
そう尋ねると、美南はぎょっとしてノートを手で覆った。
「な、何?………あぁ、なんだ織絵か。」
「なんだって何よ~。…ねぇ。何書いてたの?」
「ただの落書きだってば」
「ただの落書きなら隠す必要ないでしょ。ほら、かして。」
美南が油断した隙に、織絵はノートを引っ張った。
「あっ!ちょっと織絵」
「そんなに見せたくないの~?」
「………いいけど」
美南は諦めたようで小さくため息をついた。
ノートには可愛い動物の絵が描いてあった。
猫。
うさぎ。
犬。
パンダ。……などなど。
「うわぁ。可愛い!…美南って意外と絵が上手いのね」
「“意外と”は余計よ。」
「………ねぇ。美南絵本書いたら?」
「絵本?どうして?」
「だってこんなに上手いんだから活かさないと勿体無いじゃない」
「……そうだねぇ。考えたこともなかった。あくまでただの趣味だし」
「趣味を仕事にしたら楽しそうじゃない?」
織絵はにっこりと笑った。
「そう言う織絵は将来何になりたいの?」
「………」
美南の問いに織絵は一瞬顔を曇らせた。
そして誤魔化すように笑って言った。
「私には何も無いよ。夢も、希望も。何一つない。」
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