勿忘草 ~記憶の呪い~

夢華彩音

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第十一章 朝比奈玲香

~呪い2~

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「これで、全部です」


玲香は何も言えなかった。
今まで父がしてきたことは全て私達を守るためだったなんて…

そして何より、お姉ちゃんは生きている。

生きているけど…

「もう二度と、お姉ちゃんを失いたくない」
美南は玲香をじっと見つめた。
「わたしは、織絵に記憶を取り戻してほしいと思っています」
「私も出来るならそうしたい…けど、記憶が戻ればあと2年ほどでお姉ちゃんは…
あなたはそれでいいんですか?」
「いいわけがない。織絵はわたしの…」
美南は言葉を切った。

「わたしの…?」
「何でもない…です」
「……あなたは、どうしたいの」

篠崎さん…
あなたは、お姉ちゃんが死ぬと分かっていても自分のことを思い出してほしいと思っているの…?

「わたしは、織絵が決めるべきだと思う。織絵の人生は織絵自身が決めないと」
自分に言い聞かせるかのように言う美南。
彼女もまた、私と同じように辛いのだろう。
美南は続けて言った。
「…織絵がどっちを選ぼうとも…わたしは…」

美南は再び言葉を切ったが、もう何も言わなかった



生きるか、死ぬか。

お姉ちゃんは、どちからを選ばなくてはならない。

何の思い出も、記憶もなく生きるか、

本当の自分を保ったまま死ぬのか。

絶対に、どちらか一つだけ。

その選択を…私は受け入れられるだろうか。

どちらにせよ私は、もう1度姉を失うことになる。

それがすごく…苦しい。




-第十一章 完-
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