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第九章 篠崎美南
~親友2~
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「安積さん」
美南は織絵に話しかけた。
「篠崎さん?どうしたの」
「あなたの記憶…」
「え?」
「思い出したい?」
「何のこと?どうして篠崎さんが記憶のこと…」
「わたしはもう、全部知ってる。あなたのことも、織絵のことも」
「……そう、なんだね。
あたしは、自分の記憶を取り戻したい。
でも……あなたからは聞けない」
そう言われて美南はうなだれた。
やっぱり、無理か。今は“安積さん”だから。
織絵は美南から目をそらした。
「あたしは、あなたが怖い。あなたを見ていると、何故かおかしくなる」
「もういい。わかった。」
「ごめん…」
「別に。いいよ」
そう答える美南に、織絵は申し訳なさそうな顔をした。
そんな顔をさせたくなかったのに…ごめんね。
もう、いいよ。もう悩む必要ない。
美南は、織絵に鍵を差し出した。
「これを、渡しておくね」
「これ、何の鍵?」
「わからない。けど、今あなたに渡すべきだと思ったから」
「あたしだって分からないよ……」
「分かるよ。だってこの鍵。あなたから貰ったものだから」
「え?……篠崎さんは…記憶を失う前のあたしを知ってるの?」
「少し…ね」
織絵は不思議そうな顔をした。
1人になって、美南は窓から空を見上げた。
わたしのすべきことは、あと一つ。
それが終われば、やっと解放される。
-第九章 完-
美南は織絵に話しかけた。
「篠崎さん?どうしたの」
「あなたの記憶…」
「え?」
「思い出したい?」
「何のこと?どうして篠崎さんが記憶のこと…」
「わたしはもう、全部知ってる。あなたのことも、織絵のことも」
「……そう、なんだね。
あたしは、自分の記憶を取り戻したい。
でも……あなたからは聞けない」
そう言われて美南はうなだれた。
やっぱり、無理か。今は“安積さん”だから。
織絵は美南から目をそらした。
「あたしは、あなたが怖い。あなたを見ていると、何故かおかしくなる」
「もういい。わかった。」
「ごめん…」
「別に。いいよ」
そう答える美南に、織絵は申し訳なさそうな顔をした。
そんな顔をさせたくなかったのに…ごめんね。
もう、いいよ。もう悩む必要ない。
美南は、織絵に鍵を差し出した。
「これを、渡しておくね」
「これ、何の鍵?」
「わからない。けど、今あなたに渡すべきだと思ったから」
「あたしだって分からないよ……」
「分かるよ。だってこの鍵。あなたから貰ったものだから」
「え?……篠崎さんは…記憶を失う前のあたしを知ってるの?」
「少し…ね」
織絵は不思議そうな顔をした。
1人になって、美南は窓から空を見上げた。
わたしのすべきことは、あと一つ。
それが終われば、やっと解放される。
-第九章 完-
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