勿忘草 ~記憶の呪い~

夢華彩音

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第九章 篠崎美南

~親友1~

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「ここが…織絵の家」

朝比奈 玲香。
彼女の名前を頼りに聞いて回って見つけた親友の家。

インターホンを鳴らすと、小柄な女性が出てきた。
「うちに何の御用でしょうか?」
「篠崎美南といいます。あの、ご主人は?」
「いらっしゃいますよ。どうぞ中へ」
客間に通された美南は、ソファーに腰かけた。

それにしても、大きな家…


「申し訳ありません。お待たせしてしまって」
と、男性が入ってきた。
美南は慌てて立ち上がった。
「篠崎美南です。今日はお話があって来ました」
「君のことは知っているよ。織絵の友達だろう」
「どうしてそれを…」
「まぁ、座りなさい」
言われるまま、美南は座り直した。
「私の名は朝比奈重だ。君は…何を知りたくてここに来たのだ?」
「……織絵のことが、知りたくて来ました。」

重はため息をついた。
「今まで、限られた人間にしか話さなかった。…いや、話してはならなかった。」
「教えて下さい。と言ったら、困りますよね」
美南は顔を伏せた。

「織絵のことを知って、どうしたいんだ」
重の言葉に美南は顔を上げた。

どうしたい……か。

「ずるずると同じ暗闇を歩き続けるのが嫌なんです。
もう…終わらせてしまいたい。
だから、織絵に頼まれたことを果たしたくて」
ゆっくりとした美南の言葉を重は黙って聞いていた。
美南は重を見つめた。
彼も、わたしと似た雰囲気を持っているように思えた。

「このことを全て知っているのは限られている。妻も、玲香も、織絵本人すら知らないことがある。」
「え?」

「本当に…知りたいんだな?」
念を押すように言う重に、美南は大きく頷いた。
「…君には全てを話そう。長くなるが」

そう言って重は語り始めた。










翌日、眠い目をこすりながら美南は教室の自分の席でカバンを開いた。
昨日の話が全く頭から離れない。

知ってしまった。全てを。

わたしは…どうしたらいいだろう。

自分の望みは果たせる。けど、このままだとあの2人は何も知らずに…
重さんは、玲香さんにはずっと話さないつもりらしい。
本当にそれでいいの?

わたしから…話すべきだろうか。

考えよう。織絵が望んでいることは何なのか。

美南はポケットから鍵を出した。
「やっと…これを使う時がきた。」


待っててね。織絵。
わたしは、自分のすべきことをするから。
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