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第八章 安積織絵
~“織絵”2~
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翌日、いつものように学校で授業を受けていると、篠崎さんと目が合った。
また…こっちを見てる…
何か話しかけられる訳でもなく、ずっと織絵のことを見る美南が何だか怖かった。
休み時間。美南と話してみることにした。
廊下で2人になったときに声をかけた。
「ねぇ。篠崎さん」
「何」
「最近よく目が合うよね。何で?」
「別に。ただわたしの友達の名前があなたと同じだから気になっただけ。気に触ったのならごめん。もう見ないから」
同じ…名前?もしかして…
「それって…朝比奈 織絵さん?」
そう言うと、美南の目つきが変わった。
「知ってるの?」
「妹の玲香ちゃんと仲良くなったから。ねぇ。友達なんだよね?じゃあ何か知らない?
実は、玲香が探してるの。お姉さんのことが知りたくて」
織絵の剣幕に少し驚いていた美南だったが、すぐに首を振った。
「家族ですら知らないことを、わたしが知ってるわけないでしょ。
それに…わたし織絵のこと全然分からないから」
「え?」
「というか、あまりわたしに話かけないほうがいいよ。クラスでわたしがどんな立場なのか分かってるでしょ」
それだけ言うと美南は去ってしまった。
何か手がかりが掴めるかもしれないと思ったのに。
織絵はため息をついた。
また彼女に話を聞いてみたいけど、少し苦手だ。
嫌い…とかではなくて、怖い。
近くにいると自分の隠したい所まで入り込んできそうで。
家に帰ると、両親の話し声が聞こえてきた。
「お前、織絵に少し冷たくないか?」
「何よ。記憶がないから甘やかせとでも?」
「そんなことは言ってないだろう」
「大体、どうして私があの子を育てなきゃいけないの。あなたが織絵を引き取るから…」
「友達の娘だ。それに織絵の運命をお前に話しただろう」
「それはそうだけど……。でも友達の娘だからってだけでしょ。引き取ることにした理由は。」
「…小さい頃の織絵に何度か会ったことがあるんだ。本当に穏やかな優しい子だった。友人から話を聞いたとき、すぐに決めたよ。自分の子供として育てていこうって」
「私には無理。会ったこともなかったのよ」
そう言って遥は奥の部屋に入っていった。
織絵は、そーっと洋一郎がいる部屋に入った。
「お父さん…」
「織絵?聞いていたのか」
「……あたしは…養子…なの?…あたしの記憶がないのはどうして?」
「すまない。何も言えないんだ」
うなだれる父の姿を見て、織絵は何も言えなかった。
洋一郎は織絵の目を見て言った。
「けど、娘としてお前を大切に想っているのは本当なんだ。だから…このままでいてくれないか」
あたし……あたしは、どうしたらいいの
-第八章 完-
また…こっちを見てる…
何か話しかけられる訳でもなく、ずっと織絵のことを見る美南が何だか怖かった。
休み時間。美南と話してみることにした。
廊下で2人になったときに声をかけた。
「ねぇ。篠崎さん」
「何」
「最近よく目が合うよね。何で?」
「別に。ただわたしの友達の名前があなたと同じだから気になっただけ。気に触ったのならごめん。もう見ないから」
同じ…名前?もしかして…
「それって…朝比奈 織絵さん?」
そう言うと、美南の目つきが変わった。
「知ってるの?」
「妹の玲香ちゃんと仲良くなったから。ねぇ。友達なんだよね?じゃあ何か知らない?
実は、玲香が探してるの。お姉さんのことが知りたくて」
織絵の剣幕に少し驚いていた美南だったが、すぐに首を振った。
「家族ですら知らないことを、わたしが知ってるわけないでしょ。
それに…わたし織絵のこと全然分からないから」
「え?」
「というか、あまりわたしに話かけないほうがいいよ。クラスでわたしがどんな立場なのか分かってるでしょ」
それだけ言うと美南は去ってしまった。
何か手がかりが掴めるかもしれないと思ったのに。
織絵はため息をついた。
また彼女に話を聞いてみたいけど、少し苦手だ。
嫌い…とかではなくて、怖い。
近くにいると自分の隠したい所まで入り込んできそうで。
家に帰ると、両親の話し声が聞こえてきた。
「お前、織絵に少し冷たくないか?」
「何よ。記憶がないから甘やかせとでも?」
「そんなことは言ってないだろう」
「大体、どうして私があの子を育てなきゃいけないの。あなたが織絵を引き取るから…」
「友達の娘だ。それに織絵の運命をお前に話しただろう」
「それはそうだけど……。でも友達の娘だからってだけでしょ。引き取ることにした理由は。」
「…小さい頃の織絵に何度か会ったことがあるんだ。本当に穏やかな優しい子だった。友人から話を聞いたとき、すぐに決めたよ。自分の子供として育てていこうって」
「私には無理。会ったこともなかったのよ」
そう言って遥は奥の部屋に入っていった。
織絵は、そーっと洋一郎がいる部屋に入った。
「お父さん…」
「織絵?聞いていたのか」
「……あたしは…養子…なの?…あたしの記憶がないのはどうして?」
「すまない。何も言えないんだ」
うなだれる父の姿を見て、織絵は何も言えなかった。
洋一郎は織絵の目を見て言った。
「けど、娘としてお前を大切に想っているのは本当なんだ。だから…このままでいてくれないか」
あたし……あたしは、どうしたらいいの
-第八章 完-
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