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エピローグ 〜七日目の夜明け〜
未来への福音
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終章 ~輝く空に~
「おめでとうございます、元気な双子のお子さんですよ! それも、男の子と女の子の!」
元気な産声が響く中、俺は妻のもとに急ぐ。長い出産で疲れてはいたが、その顔は誇らしさに輝いている。
「お疲れ様、ティアラ…元気な双子をありがとう」
「ふふ…これから忙しくなるわね。子供達を見てやって…」
「ああ!」
あれから数年経ち、俺たちはそれぞれ初めての子供と対面していた。母子ともに元気で産まれ、しかも双子だとは! これ以上、言うことなしじゃないか!
元気に泣く子供たちを見て、俺は涙をこぼした。 女の子は祖母譲り…いや、曽祖母譲りの淡い金髪。まだ目は開かないが、澄んだ青い瞳に違いない。
「シュゼット嬢…」
息子の方は、鮮やかな赤毛。まさか…!
「オリバー…君も来てくれたのか…!」
あの暗い屋敷の中でひっそりと息絶えた親友が、生まれ変わってくれた。鼻を鳴らして涙を拭うと、俺は子供達の髪を撫で回す。
「娘の名はシュゼット、息子はオリバーだ。」
ティアラは涙を浮かべて頷く。
「いい名前だわ。幸せに…幸せになりましょうね…」
「ああ…!」
それ以上は涙に歪んで声にできなかった。
あの時。
執事さんが消える直前に俺に伝えた最後の願い。それは、俺の子供として生まれ変わるシュゼット嬢を幸せに育ててくれというものだった。
何故それを執事さんが知ったのかはわからない。だが、全てを知った俺の答えは一択しかなかった。
現に産まれた子供は淡い金髪で、女の子だ。なら、そう確信する以外ないだろう? オリバーまで生まれ変わってくれるとは予想外だったが、嬉しい誤算だ。
俺はあの後、あの屋敷で見た数々の情報をもとに一冊の本を書き上げた。
『最後の魔女裁判』の真相を書いて世に送り出したのだ。シュゼット嬢があのまま魔女として死の真相を闇に葬られ、名誉を汚されたままにしては置けなかったのだ。
幸いその本は多くの波紋を呼び、そのまま俺は学者としても名をあげることになる。そして学院での俺の地位もそれに伴い高まった。だが相変わらず変人な教授に振り回される日々は続いている。
そして、さらに数年後。
母より受け継いだ孤児院の庭で遊んでいた娘が、楽しそうに駆け込んで来た。雲ひとつない青空のもと、白いシーツがはためいている。
「おとーたん、みてみて! こいぬ!」
幼いシュゼットが、白と茶色のブチ模様のある子犬を抱えて書き物をする俺の側へとやって来た。
「どこから拾ったんだ? 泥だらけじゃないか?」
「あのね、あのね。おさんぽしてたら、おうちまでずっとついてきたの。かってもいい?」
俺は子犬を見つめた。小さいくせに、妙に賢しげな目で俺を見返してくる。
…まさかな…?
「なら…どうするんだ、名前は?」
俺の問いにシュゼットは少し考え込むと、満面の笑みで答える。
「んーとね、じゃあジェイク! ジェイクってなまえにする!」
…執事さん…!
やっと、安住の地にたどり着いたのか…! それならと俺は子犬の頭を撫でた。目頭が熱くなる。
「大事に、するんだぞ…大事に、大事に…!」
「うん!」
シュゼットは子犬を抱えてオリバーに見せに行った。明るい笑い声が弾ける。
ティアラの後ろ姿。洗濯物が風に揺れる。明るい日差しが溢れる。子供達の笑顔と子犬の鳴き声。
全ては、ここに救われたのだ。
「おめでとうございます、元気な双子のお子さんですよ! それも、男の子と女の子の!」
元気な産声が響く中、俺は妻のもとに急ぐ。長い出産で疲れてはいたが、その顔は誇らしさに輝いている。
「お疲れ様、ティアラ…元気な双子をありがとう」
「ふふ…これから忙しくなるわね。子供達を見てやって…」
「ああ!」
あれから数年経ち、俺たちはそれぞれ初めての子供と対面していた。母子ともに元気で産まれ、しかも双子だとは! これ以上、言うことなしじゃないか!
元気に泣く子供たちを見て、俺は涙をこぼした。 女の子は祖母譲り…いや、曽祖母譲りの淡い金髪。まだ目は開かないが、澄んだ青い瞳に違いない。
「シュゼット嬢…」
息子の方は、鮮やかな赤毛。まさか…!
「オリバー…君も来てくれたのか…!」
あの暗い屋敷の中でひっそりと息絶えた親友が、生まれ変わってくれた。鼻を鳴らして涙を拭うと、俺は子供達の髪を撫で回す。
「娘の名はシュゼット、息子はオリバーだ。」
ティアラは涙を浮かべて頷く。
「いい名前だわ。幸せに…幸せになりましょうね…」
「ああ…!」
それ以上は涙に歪んで声にできなかった。
あの時。
執事さんが消える直前に俺に伝えた最後の願い。それは、俺の子供として生まれ変わるシュゼット嬢を幸せに育ててくれというものだった。
何故それを執事さんが知ったのかはわからない。だが、全てを知った俺の答えは一択しかなかった。
現に産まれた子供は淡い金髪で、女の子だ。なら、そう確信する以外ないだろう? オリバーまで生まれ変わってくれるとは予想外だったが、嬉しい誤算だ。
俺はあの後、あの屋敷で見た数々の情報をもとに一冊の本を書き上げた。
『最後の魔女裁判』の真相を書いて世に送り出したのだ。シュゼット嬢があのまま魔女として死の真相を闇に葬られ、名誉を汚されたままにしては置けなかったのだ。
幸いその本は多くの波紋を呼び、そのまま俺は学者としても名をあげることになる。そして学院での俺の地位もそれに伴い高まった。だが相変わらず変人な教授に振り回される日々は続いている。
そして、さらに数年後。
母より受け継いだ孤児院の庭で遊んでいた娘が、楽しそうに駆け込んで来た。雲ひとつない青空のもと、白いシーツがはためいている。
「おとーたん、みてみて! こいぬ!」
幼いシュゼットが、白と茶色のブチ模様のある子犬を抱えて書き物をする俺の側へとやって来た。
「どこから拾ったんだ? 泥だらけじゃないか?」
「あのね、あのね。おさんぽしてたら、おうちまでずっとついてきたの。かってもいい?」
俺は子犬を見つめた。小さいくせに、妙に賢しげな目で俺を見返してくる。
…まさかな…?
「なら…どうするんだ、名前は?」
俺の問いにシュゼットは少し考え込むと、満面の笑みで答える。
「んーとね、じゃあジェイク! ジェイクってなまえにする!」
…執事さん…!
やっと、安住の地にたどり着いたのか…! それならと俺は子犬の頭を撫でた。目頭が熱くなる。
「大事に、するんだぞ…大事に、大事に…!」
「うん!」
シュゼットは子犬を抱えてオリバーに見せに行った。明るい笑い声が弾ける。
ティアラの後ろ姿。洗濯物が風に揺れる。明るい日差しが溢れる。子供達の笑顔と子犬の鳴き声。
全ては、ここに救われたのだ。
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