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mission 3 祝祭の神様
容疑者と犯人と
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Side-ラスファ 6
件の苦学生は、フレッドと名乗った。魔術師ギルドの三回生でアーシェの先輩にあたるそうだ。
例の杖については学校に提出するレポートを書くつもりだったようで、エルダードからアローガまで丸一日かけて歩いて通っていたそうだ。…わざわざご苦労なことだ。
「まず、杖の外観がこんな感じです」
早速、自作の資料を取り出すして解説を始めるフレッド。そこには精密な筆致で描かれた杖のスケッチがあった。
「いや、大事な資料じゃないのか? 人に見せてしまったら…」
それを押しとどめるが、彼は笑みを深めた。
「大丈夫です。レポートよりも僕は、この杖のことをもっと知ってもらいたいんです」
「?」
「古代に作られたこの杖は、ゴブリンなどの低級な魔物を操って強制的に労働力として使い捨てにしていたという非道な物です。長らく世の中から忘れ去られていましたが、ここの博物館で最近になって発見しました。そんな悲しい歴史を忘れてしまわないように、僕はこの杖のことをレポートにまとめて知ってもらおうと活動を始めました。そんな非道を繰り返してはならないんです。ここの博物館に展示してありますんで、あとで現物をご覧になってください」
熱く語る彼だが、残酷な真実を告げなくてはならない。
「いや…その杖なんだが、この前何者かに盗まれてしまったそうなんだ…」
その役目を担った私の言葉に、彼は数秒固まった。
「え…ええええええ?! ちょ…まだ、研究途中だったというのに?! レポートを提出して『封印指定』と認定してもらって、魔術師ギルドの封印室に収めるまでが僕の使命と思っていたのに?! 誰です、誰がそんなことを?!」
いきなり人の服を引っ張ってパニックを起こすフレッド。
間髪入れず、全員が彼を指差した。なんでこんな時にだけ無駄なチームワークを発揮するんだこいつら…。
「ちがいますよおおお! 僕はそんなことしていませんよ! 何かの間違いですって! お願いですから、信じてくださいよ!」
…いい加減、人の服引っ張るのやめろお前も。
さりげなく振り払うと、私は諭すように彼に告げた。
「…古代語魔法には、変身する魔法があるそうだな? なら、特定の人物になりすますことは可能か?」
その問いに、残像ができそうな勢いで頷くフレッド。
「かかか可能です! よく見知っている相手なら、そっくりに化けることはできます!」
…フレッドのリアクションを見ていると、彼は犯人ではないと思われる。これが演技だとしたら、相当な狸だ。
「だとしたら、真犯人は別にいる。さらには、あんたの顔見知りっていうことだ」
「ああ。んで、心当たりは?」
デュエルとアーチがそれぞれ質問すると、フレッドは慌てて否定する。
「ありませんよ! 僕の周りには、そんな卑劣ななりすましなんてする人はいません!」
「なら…そのレポートのことを知っている人は?」
私の質問に、彼は少し考えると頷いて答えた。
「同期の一人にだけは、話しました。僕の研究が気になっていたようで、けっこう詳しく聞きたがってましたね。興味を持ってもらえて嬉しかったです」
「「「そいつだ!」」」
「そんな訳ないでしょう?!」
「他に誰が…」
なおも言い募ろうとするデュエルをアーチが押しとどめた。
「まあまあ、仲のいい同期なら疑いたくねぇってのはわかる。だがなあ…このままじゃ、そいつに嫌疑がかかりっぱなしになんだろ?」
ふむ。…ここから先は、アーチの得意分野だ。ここは黙って見守ろう。
「アンタの研究を理解してくれた大事な友人から、嫌疑を晴らす手伝いをしてぇわけよ。オレだってコイツらに疑いがかかれば、落ち着いてられねぇしな?」
…よく言う。私やデュエルに何かの疑いがかかれば、指差して笑う場面しか想像できないんだが?
「そッ…そうですよね! わかりました! それでは僕の知ってる限りのことをお話しします!」
しかし彼は、大丈夫なのか? こんなタイプの人間は今まで遭遇したことがない。なんでここまで危なっかしいんだか? 人を無条件に信じすぎて放っておけない。
ともかく、その説得でフレッドが教えてくれた情報をもとに犯人像を割り出しにかかることになった。そして、例の杖にまつわる情報も。
ここまできたら、とことんまで付き合うしかない!
件の苦学生は、フレッドと名乗った。魔術師ギルドの三回生でアーシェの先輩にあたるそうだ。
例の杖については学校に提出するレポートを書くつもりだったようで、エルダードからアローガまで丸一日かけて歩いて通っていたそうだ。…わざわざご苦労なことだ。
「まず、杖の外観がこんな感じです」
早速、自作の資料を取り出すして解説を始めるフレッド。そこには精密な筆致で描かれた杖のスケッチがあった。
「いや、大事な資料じゃないのか? 人に見せてしまったら…」
それを押しとどめるが、彼は笑みを深めた。
「大丈夫です。レポートよりも僕は、この杖のことをもっと知ってもらいたいんです」
「?」
「古代に作られたこの杖は、ゴブリンなどの低級な魔物を操って強制的に労働力として使い捨てにしていたという非道な物です。長らく世の中から忘れ去られていましたが、ここの博物館で最近になって発見しました。そんな悲しい歴史を忘れてしまわないように、僕はこの杖のことをレポートにまとめて知ってもらおうと活動を始めました。そんな非道を繰り返してはならないんです。ここの博物館に展示してありますんで、あとで現物をご覧になってください」
熱く語る彼だが、残酷な真実を告げなくてはならない。
「いや…その杖なんだが、この前何者かに盗まれてしまったそうなんだ…」
その役目を担った私の言葉に、彼は数秒固まった。
「え…ええええええ?! ちょ…まだ、研究途中だったというのに?! レポートを提出して『封印指定』と認定してもらって、魔術師ギルドの封印室に収めるまでが僕の使命と思っていたのに?! 誰です、誰がそんなことを?!」
いきなり人の服を引っ張ってパニックを起こすフレッド。
間髪入れず、全員が彼を指差した。なんでこんな時にだけ無駄なチームワークを発揮するんだこいつら…。
「ちがいますよおおお! 僕はそんなことしていませんよ! 何かの間違いですって! お願いですから、信じてくださいよ!」
…いい加減、人の服引っ張るのやめろお前も。
さりげなく振り払うと、私は諭すように彼に告げた。
「…古代語魔法には、変身する魔法があるそうだな? なら、特定の人物になりすますことは可能か?」
その問いに、残像ができそうな勢いで頷くフレッド。
「かかか可能です! よく見知っている相手なら、そっくりに化けることはできます!」
…フレッドのリアクションを見ていると、彼は犯人ではないと思われる。これが演技だとしたら、相当な狸だ。
「だとしたら、真犯人は別にいる。さらには、あんたの顔見知りっていうことだ」
「ああ。んで、心当たりは?」
デュエルとアーチがそれぞれ質問すると、フレッドは慌てて否定する。
「ありませんよ! 僕の周りには、そんな卑劣ななりすましなんてする人はいません!」
「なら…そのレポートのことを知っている人は?」
私の質問に、彼は少し考えると頷いて答えた。
「同期の一人にだけは、話しました。僕の研究が気になっていたようで、けっこう詳しく聞きたがってましたね。興味を持ってもらえて嬉しかったです」
「「「そいつだ!」」」
「そんな訳ないでしょう?!」
「他に誰が…」
なおも言い募ろうとするデュエルをアーチが押しとどめた。
「まあまあ、仲のいい同期なら疑いたくねぇってのはわかる。だがなあ…このままじゃ、そいつに嫌疑がかかりっぱなしになんだろ?」
ふむ。…ここから先は、アーチの得意分野だ。ここは黙って見守ろう。
「アンタの研究を理解してくれた大事な友人から、嫌疑を晴らす手伝いをしてぇわけよ。オレだってコイツらに疑いがかかれば、落ち着いてられねぇしな?」
…よく言う。私やデュエルに何かの疑いがかかれば、指差して笑う場面しか想像できないんだが?
「そッ…そうですよね! わかりました! それでは僕の知ってる限りのことをお話しします!」
しかし彼は、大丈夫なのか? こんなタイプの人間は今まで遭遇したことがない。なんでここまで危なっかしいんだか? 人を無条件に信じすぎて放っておけない。
ともかく、その説得でフレッドが教えてくれた情報をもとに犯人像を割り出しにかかることになった。そして、例の杖にまつわる情報も。
ここまできたら、とことんまで付き合うしかない!
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