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mission 3 祝祭の神様

欲深マスターと現地ギルド

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Side-アーチ 6

 聞き込みや調査をデュエルたちに任せ、オレはこの街にも存在する盗賊ギルドを探っていた。なんせ、中規模の街くらいならどこでもあるような裏組織だけに情報を得るまでにゃ苦労も多いわけよ。看板の一つも立って居るわけじゃあるまいし、盗賊を探るっても聞き込みして「アンタ盗賊か?」なんて聞くわけにゃいかねぇ。それにエルダードのように馴染みの場所ってわけじゃねぇもんな。

 とりあえず、薄暗い裏通りの路地に入ってさりげなく盗賊同士にのみ通じるブロックサインを送ってみる。今の派手な仮装で注目を集めるだけに、反応するやつも早かった。
「…こっちだ」
「はいどーも」
 見るからにヤバそうな、顔に傷を走らせたスキンヘッドの大男が小声でオレを導く。どうせなら、キレイな女狐ちゃんとかが理想だったんだがね。まあこのさい贅沢は言ってらんねぇか。
「御前に挨拶だ」
 廃墟一歩手前の店舗跡地に入ると、地下への階段を出現させる魔法の言葉を呟く。
「『退廃の果実水はどうだ?』」
「『ああ、いいな。頂こう』」
 
 裏世界のパラダイスは、案外簡単に開くもんだ。地下の階段を降りると、視界いっぱいにヤバげな連中がひしめき合っていた。派手な仮装で着飾ったオレなんか、この上なく浮いちまってんな。まあいいや。

 「御前に御目通りを。来訪者でございます」
 ふうん…ギルド長、御前なんっつー大げさな呼ばれ方されてんのか…大仰な名だ。
「何か不穏なことを考えていないだろうな?」
「滅相も無い」
おいおい、この兄さん心を読む特技でもあるのかよ? オレは内心の動揺を押し隠すと後に続く。

 扉の向こうには、ヒキガエルを思わせる年配の大男が椅子に沈み込んでいた。左右にけしからん格好した女狐ちゃんを二人従えている…けっ。
「祭りの期間に来るとは…働き者なのか?」
 皮肉たっぷりまぶしたお言葉でご歓迎の言葉ですか、ありがたくて涙が出るぜ。

「いやなに、成り行きですよ。冒険者として依頼を受けているものでね」
 よく言うぜ、だったらテメェの左右にいるねーちゃんの格好はなんなんだかね…仮装のつもりかよ?

 オレは挨拶すると、僅かばかりの上納金を支払う。卑しい顔して数えながら、御前様とやらは上目遣いでオレを見返した。
「それで、若いの。何か聞きてぇことがあるんじゃねぇのかい?」
 と、きたもんだ。
「ええ、とりあえずなんですがね? ここのナワバリで、ギルドの許可を得ない盗みがあったって話に興味はありませんかね?」
 オレの言葉に、奴は片眉を跳ね上げる。

「何でも、ブツは貴重な魔道具。んで、犯人はそれを使ってさらに盗みを働いたようで…」
 …嘘はついてねぇぜ。とりあえず、現時点で分かっていることをちょっとばかし盛って話して様子を見る。
 
 このギルド長はどうやら、相当に欲深いタイプだ。自分のナワバリ内で、自分が噛んでいない『仕事』が許せる器じゃねぇだろうよ。相手が盗賊じゃ無いかもしれねぇって? いや、オレそこまで知らねぇし? 魔術師の可能性も高いが、これ以上憶測で物は言えねぇよなぁ?
「…どこにあったもんだ?」
 よしよし、食いついて来たぜ! オレは笑みを浮かべそうな頰を引き締める。
「かつての芸術神の、神殿跡から。詳しくはまだ調査中ですが、詳しいことがわかり次第報告に上がります。つきましては…」

 オレは盗賊ギルドを後にした。これでいい。あとはさっさと戻って連中と合流だ。 
「おい」
「ふぉう!?」
 いきなりかけられた声に、変な声出ちまったじゃねぇか! バクバクしながら振り向くと、ここまでオレを連れて来てくれたスキンヘッドの大男だ。
「お…おう?」
「忘れ物だ」
 奴はオレに歩み寄ると、小声で囁いた。
「気をつけていけよ、お前。しばらくつけられるぞ」
「…誰に?」
「御前様の、監視役だ。あのお方は恐ろしく欲深い。儲けに繋がりそうなことには、労力を惜しまない」
 それだけ言うと、奴は姿を消した。なんでぇ、見た目おっかねぇけどいい奴じゃねぇか。
 だがあいにくと、欲深かさはオレの方が上だ。

 なんたって『カケラ』持ちだからな。
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