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mission 3 祝祭の神様
適材適所は基本!
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Side-デュエル 2
「あの、ちょっと…」
クレーマーのおばさんを見かねて助け舟を出しかけた俺にまで、彼女は噛み付いて来た。
「なんだい! ああ、あんたも自警団かい? あたしが怪我した責任、取ってくれるってのかい?」
…なかなかに粘着質なおばさんだ。この分だと家族は相当苦労していることだろう。長丁場を覚悟しかけた時、入り口から救世主の声が割り込んだ。
「なんだ、揉め事か?」
外回りから詰所に戻って来た彼を見て、俺と同様に噛み付こうとしたおばさんたちが、ぽかんとした顔で固まる。
「へあ? あ、あんたも自警団なのかい…?」
彼の名はラスファ。稀少種族であるエルフ族の出身で、細身の長身に長い銀髪という出で立ちはおおよそ自警団らしくない。細長くピンと尖った耳の代わりに、今は三角のケモミミが髪の間から覗いている。もともと容姿端麗な種族として知られているが彼もその例外ではなく、勢いに乗っていたおばさん方は一気におとなしくなってしまった。
「い…いえね…? ちょ、ちょっと転んで足を怪我しちまってね…? なんとかならないかって…」
その赤くなりながらのしどろもどろの説明で、彼は何やら納得したらしい。
「…ああ、怪我人が施療院までこの人混みに逆らって行くのは確かに骨だな。見せてくれ」
「あ、あら…ちょっと…?」
彼は手持ちの薬草で手早く応急処置をすると、おばさん方は目をハートにしてスキップしながら上機嫌で帰って行った。…元気じゃないか…。
「助かった! 本当に助かった! すまない、ありがとう!」
「???」
抱きつかんばかりの勢いでラスファに礼を言うダンチョー。良くも悪くも、彼は熱い男なのだ。
「ついでに君たち、正式に自警団に入っちゃくれないか? うちはいつでも人手不足でな、歓迎するよ!」
「「…いや…それはちょっと…」」
冒険者と自警団は、元々兼任は難しい。それでも年中人手不足な自警団のサポートとして、宿屋単位で定期的に助っ人当番が回ってくるのだ。故に、同じ宿屋のフランシスやアマゾネス・リンダもどこか別の詰め所で自警団をやっているということになる。観光大使も今ばかりは例外なく参加する義務が生じるのだ。
それに最もショックを受けたのは祝祭の期間を稼ぎどきと気合いを入れていた女将さんだ。当番がくると知るなり、泡を食って大量の短期バイトを入れて対応したが…おかみさんの心境は如何許りなるや?
俺たちの断りを聞くと、ちょっと凹みながらダンチョーは頷く。
「ああ、すまない…最近、あの手合いの対応に疲れていてな…妻の料理が唯一の癒しだよ…」
…さらりと惚気るが、メンタルをやられかけている今回ばかりは仕方ないか。
「…大変だな、ダンチョー…」
「よーう! 帰って来たぜ休憩に! 茶くれ、茶!」
そこに底抜けに能天気な声が飛び込んで来た。ひょろりとした長身に派手な金髪、そしてこれまたノリノリな道化師の衣装。こっちもまたラスファとは別の意味で自警団らしくない格好だ。正直、アタマが痛い。
「なんだ、元気ねぇな。オメーら、せっかくの祝祭なんだぜ? 楽しまなきゃもったいねぇだろが!」
「その祝祭に自警団の仕事してるって自覚はないのか?」
ごもっともなラインハルトのツッコミ。ここまでノリのいい自警団員が、かつていただろうか?
「おう、マジメにやってるぜ? だがまあ、それ以前に祭りなんだからよ、楽しむことも義務だろうが!」
ため息をつきたくなるアーチの言い分だ。
「いや、まだ前夜祭にもなってないからな? テンションおかしくなってるぞ、大丈夫か?」
今からこのノリで、大丈夫なんだろうか? イベント好きな性分は、ある意味得だ。
「そういえば、アーシェとラグはどこに?」
ラインハルトは付き合いきれず、ひとまず流すことにしたらしい。奴に背を向けると俺に尋ねてきた。
「ああ、あの二人は迷子センター専門の部署だ。いかつい自警団員じゃ顔見ただけで子供に泣かれるから、対応できなかったらしいぞ」
「…これ以上ない適任だな」
適材適所。ゴリマッチョばかりの自警団では、対応しきれないことも多いのだ。
「あの、ちょっと…」
クレーマーのおばさんを見かねて助け舟を出しかけた俺にまで、彼女は噛み付いて来た。
「なんだい! ああ、あんたも自警団かい? あたしが怪我した責任、取ってくれるってのかい?」
…なかなかに粘着質なおばさんだ。この分だと家族は相当苦労していることだろう。長丁場を覚悟しかけた時、入り口から救世主の声が割り込んだ。
「なんだ、揉め事か?」
外回りから詰所に戻って来た彼を見て、俺と同様に噛み付こうとしたおばさんたちが、ぽかんとした顔で固まる。
「へあ? あ、あんたも自警団なのかい…?」
彼の名はラスファ。稀少種族であるエルフ族の出身で、細身の長身に長い銀髪という出で立ちはおおよそ自警団らしくない。細長くピンと尖った耳の代わりに、今は三角のケモミミが髪の間から覗いている。もともと容姿端麗な種族として知られているが彼もその例外ではなく、勢いに乗っていたおばさん方は一気におとなしくなってしまった。
「い…いえね…? ちょ、ちょっと転んで足を怪我しちまってね…? なんとかならないかって…」
その赤くなりながらのしどろもどろの説明で、彼は何やら納得したらしい。
「…ああ、怪我人が施療院までこの人混みに逆らって行くのは確かに骨だな。見せてくれ」
「あ、あら…ちょっと…?」
彼は手持ちの薬草で手早く応急処置をすると、おばさん方は目をハートにしてスキップしながら上機嫌で帰って行った。…元気じゃないか…。
「助かった! 本当に助かった! すまない、ありがとう!」
「???」
抱きつかんばかりの勢いでラスファに礼を言うダンチョー。良くも悪くも、彼は熱い男なのだ。
「ついでに君たち、正式に自警団に入っちゃくれないか? うちはいつでも人手不足でな、歓迎するよ!」
「「…いや…それはちょっと…」」
冒険者と自警団は、元々兼任は難しい。それでも年中人手不足な自警団のサポートとして、宿屋単位で定期的に助っ人当番が回ってくるのだ。故に、同じ宿屋のフランシスやアマゾネス・リンダもどこか別の詰め所で自警団をやっているということになる。観光大使も今ばかりは例外なく参加する義務が生じるのだ。
それに最もショックを受けたのは祝祭の期間を稼ぎどきと気合いを入れていた女将さんだ。当番がくると知るなり、泡を食って大量の短期バイトを入れて対応したが…おかみさんの心境は如何許りなるや?
俺たちの断りを聞くと、ちょっと凹みながらダンチョーは頷く。
「ああ、すまない…最近、あの手合いの対応に疲れていてな…妻の料理が唯一の癒しだよ…」
…さらりと惚気るが、メンタルをやられかけている今回ばかりは仕方ないか。
「…大変だな、ダンチョー…」
「よーう! 帰って来たぜ休憩に! 茶くれ、茶!」
そこに底抜けに能天気な声が飛び込んで来た。ひょろりとした長身に派手な金髪、そしてこれまたノリノリな道化師の衣装。こっちもまたラスファとは別の意味で自警団らしくない格好だ。正直、アタマが痛い。
「なんだ、元気ねぇな。オメーら、せっかくの祝祭なんだぜ? 楽しまなきゃもったいねぇだろが!」
「その祝祭に自警団の仕事してるって自覚はないのか?」
ごもっともなラインハルトのツッコミ。ここまでノリのいい自警団員が、かつていただろうか?
「おう、マジメにやってるぜ? だがまあ、それ以前に祭りなんだからよ、楽しむことも義務だろうが!」
ため息をつきたくなるアーチの言い分だ。
「いや、まだ前夜祭にもなってないからな? テンションおかしくなってるぞ、大丈夫か?」
今からこのノリで、大丈夫なんだろうか? イベント好きな性分は、ある意味得だ。
「そういえば、アーシェとラグはどこに?」
ラインハルトは付き合いきれず、ひとまず流すことにしたらしい。奴に背を向けると俺に尋ねてきた。
「ああ、あの二人は迷子センター専門の部署だ。いかつい自警団員じゃ顔見ただけで子供に泣かれるから、対応できなかったらしいぞ」
「…これ以上ない適任だな」
適材適所。ゴリマッチョばかりの自警団では、対応しきれないことも多いのだ。
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