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mission 2 孤高の花嫁
激戦の余韻
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Side-デュエル 20
赤い光が去った後、俺たちを狙う蔦や枝の攻撃はピタリと止んだ。伸ばされかけた蔦は、静かに引いて行き、困惑したように互いを見かわしているようだ。やがて、それぞれが司る古木に戻っていく。
「狂ったドライアードが再封印されて、元いたドライアードたちが正気に返ったようだな…」
安堵のため息交じりに、ラスファが呟く。途端にフランシスが、積み重なった枝や蔦の山の上に大の字に倒れた。
「疲れた…ボクはもう二度と城の裏庭に立ち入らないよ…! 誓ってもいい!」
そのそばに腰を下ろしながら、ラスファが大きく息をつく。
「よく連れて行かれなかったな…」
「そりゃまあ、ボクも必死だったしね…。女性に追いかけられるのが、こんなに恐ろしいと思ったのなんて初めてさ…。一生分の運を使った気がするよ」
「ああ、私もだ。しばらくユメに出てうなされそうだ…」
その姿は、さながら戦友のように思えた。
「すいません…どなたか、口直しに飴か何かお持ちじゃないですか? さっきのお薬、結構酷い味で…」
今回最大の功労者、ラグがふらつきながら懇願している。
「おう、オレ持ってるぜ! 弟子、今回はホントよくやったな! 」
「し…師匠ぉ~…」
頭を撫でられると緊張の意図が切れたのか、ラグはボロボロに涙をこぼした。
「なんでェ、泣くこたねぇだろ泣くこたぁ。ほれ!」
彼はラグの口の中に飴玉を放り込む。ラグはまだ止まらない涙を袖口でぬぐいながら、しやくり上げていた。
「あたしの入る隙は無さそうね」
それを見ながらブレンダ姐さんは、誰にともなく呟いた。
「?」
「あの時…あの娘の指示に、まるっきり躊躇せずに真っ先に彼が結晶を取りに行った時に思ったの。ああ…かなわないなってさ」
そこに、いつの間にかアーシェが入ってきた。
「うん。ラグちゃんにとって、アーちんは一番だからね。アーちんって一見ちゃらんぽらんだけど、実はすっごいラグちゃんを大事にしてるもの。…直接それ言ったら、怒られそうだけどさ」
「ああ、それわかる」
「しかしお前、よく回復薬なんか持ってたな…」
俺は今回、最大の疑問をラスファに尋ねてみた。
「ああ、この前大地母神の神殿に薬草を持って行ったら渡された試作品だ」
ああ、そういえば彼はいつもの狩の合間に薬草取りもしていたっけ。
「試供品ってことは、新開発の薬なのか?」
「ああ。試してくれと言って渡されて、その場で飲まされたが…酷い味で軽くむせた。そのまま数本押し付けられたが…うっかり材料を知ってしまって、二度と飲む気すら失せたから持て余してな。…必要とはいえ、ラグには悪いことをした…」
ああ…俺も知りたくないかな、材料。激しく疑問ではあるけど。
各自、思い思いに戦闘後の余韻を過ごしていたが、突然ドライアードの一人が再び現れた。いきなりのことに、全員が一斉に身構える!
正気に戻ったと思われるドライアードは、冷めきった絶対零度の顔つきで無造作に空中で手を振ると、何かをぺいッとと放り出した。
「…こんなのいらない。返す」
言うだけいうと、彼女は再び古木の中に帰って行った。ラスファやフランシスに、物欲しげな視線を残して…。
「返すって、一体何を?」
そこには、最初に古木の中に取り込まれたデビッドが白眼をむいてひっくり返っていた。何があったのか着衣は乱れており、頰にはくっきりと赤い手形が張り付いている。
「ナニがあった? ナニやらかした? 何された?」
その疑問の答えは、その白目むいている当人にしかわからなかったであろう…。ただ、はっきり言えることは。彼はあの超肉食系ドライアードですら、持て余して追い出されたという剛の者だということだ。
そして当人はその時のことには触れて欲しくないかのように、沈黙を続けるのであった…。
赤い光が去った後、俺たちを狙う蔦や枝の攻撃はピタリと止んだ。伸ばされかけた蔦は、静かに引いて行き、困惑したように互いを見かわしているようだ。やがて、それぞれが司る古木に戻っていく。
「狂ったドライアードが再封印されて、元いたドライアードたちが正気に返ったようだな…」
安堵のため息交じりに、ラスファが呟く。途端にフランシスが、積み重なった枝や蔦の山の上に大の字に倒れた。
「疲れた…ボクはもう二度と城の裏庭に立ち入らないよ…! 誓ってもいい!」
そのそばに腰を下ろしながら、ラスファが大きく息をつく。
「よく連れて行かれなかったな…」
「そりゃまあ、ボクも必死だったしね…。女性に追いかけられるのが、こんなに恐ろしいと思ったのなんて初めてさ…。一生分の運を使った気がするよ」
「ああ、私もだ。しばらくユメに出てうなされそうだ…」
その姿は、さながら戦友のように思えた。
「すいません…どなたか、口直しに飴か何かお持ちじゃないですか? さっきのお薬、結構酷い味で…」
今回最大の功労者、ラグがふらつきながら懇願している。
「おう、オレ持ってるぜ! 弟子、今回はホントよくやったな! 」
「し…師匠ぉ~…」
頭を撫でられると緊張の意図が切れたのか、ラグはボロボロに涙をこぼした。
「なんでェ、泣くこたねぇだろ泣くこたぁ。ほれ!」
彼はラグの口の中に飴玉を放り込む。ラグはまだ止まらない涙を袖口でぬぐいながら、しやくり上げていた。
「あたしの入る隙は無さそうね」
それを見ながらブレンダ姐さんは、誰にともなく呟いた。
「?」
「あの時…あの娘の指示に、まるっきり躊躇せずに真っ先に彼が結晶を取りに行った時に思ったの。ああ…かなわないなってさ」
そこに、いつの間にかアーシェが入ってきた。
「うん。ラグちゃんにとって、アーちんは一番だからね。アーちんって一見ちゃらんぽらんだけど、実はすっごいラグちゃんを大事にしてるもの。…直接それ言ったら、怒られそうだけどさ」
「ああ、それわかる」
「しかしお前、よく回復薬なんか持ってたな…」
俺は今回、最大の疑問をラスファに尋ねてみた。
「ああ、この前大地母神の神殿に薬草を持って行ったら渡された試作品だ」
ああ、そういえば彼はいつもの狩の合間に薬草取りもしていたっけ。
「試供品ってことは、新開発の薬なのか?」
「ああ。試してくれと言って渡されて、その場で飲まされたが…酷い味で軽くむせた。そのまま数本押し付けられたが…うっかり材料を知ってしまって、二度と飲む気すら失せたから持て余してな。…必要とはいえ、ラグには悪いことをした…」
ああ…俺も知りたくないかな、材料。激しく疑問ではあるけど。
各自、思い思いに戦闘後の余韻を過ごしていたが、突然ドライアードの一人が再び現れた。いきなりのことに、全員が一斉に身構える!
正気に戻ったと思われるドライアードは、冷めきった絶対零度の顔つきで無造作に空中で手を振ると、何かをぺいッとと放り出した。
「…こんなのいらない。返す」
言うだけいうと、彼女は再び古木の中に帰って行った。ラスファやフランシスに、物欲しげな視線を残して…。
「返すって、一体何を?」
そこには、最初に古木の中に取り込まれたデビッドが白眼をむいてひっくり返っていた。何があったのか着衣は乱れており、頰にはくっきりと赤い手形が張り付いている。
「ナニがあった? ナニやらかした? 何された?」
その疑問の答えは、その白目むいている当人にしかわからなかったであろう…。ただ、はっきり言えることは。彼はあの超肉食系ドライアードですら、持て余して追い出されたという剛の者だということだ。
そして当人はその時のことには触れて欲しくないかのように、沈黙を続けるのであった…。
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