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mission 2 孤高の花嫁
思わぬ伏兵!
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Side-アーチ 18
いい加減に戦いに入りたいんだが、空気読めねぇ貴族姉妹の思わぬ妨害が入り膠着状態。
衛視隊もオレらもひっぺがしたいんだが、女の方も驚きの本気でくっついたまま離れねぇと来たもんだ。
おかげで花嫁や神父、参列客まで避難できたが…状況は動かしようがねぇ。どうしたもんかね?
そこに、貴族たちにとっての大誤算が突っ込んで来た。
「せいっ!!」
人型の台風と化して襲ってきたデュエルによって、衛視隊がまとめてなぎ倒されたのだ。その場にいた幹部クラスの衛視が顎を落とす。そりゃそうだ、頼みの部下が草刈り並みのあっけなさで消えちまったんだからよ。そいつもそのまま、デュエルの一撃で吹っ飛んだ。
一旦状況は落ち着いたが、姉妹の腕はゆるまねぇ。衛視隊を片付けたら、証拠を持ってアドルフのおっさん共々客たちが避難している表に出なきゃなんだけどな。
「トロいよ兄貴たち、何やってんの! ナディアさんや神父さんも避難できたっていうのに!」
珍しいアーシェの説教に、ラスファは項垂れる。ちなみにオレらの腕を掴んだままのお貴族姉妹は、未だ一切手を緩めてねぇ。プライドが邪魔した嫁き遅れ女の執念が、結婚式を目の当たりにして発現したってやつか。多分これ、あとで痣になっててんだろうな…。
「仕方ない、奥の手だ…」
そう小声で呟くと、ラスファは姉妹の姉、イーディスに囁いた。
「すまない…今は行かせてくれ。いい子で待っていてくれるな?」
その甘ったるいセリフの破壊力に、姉妹が揃って盛大に鼻血を迸らせた。そのまま二人は残像が見える勢いで首を縦に振ると、実に幸せそうなカオして倒れる。チャペル用の椅子を血に染めあげて座り込むように倒れた貴族女ども。すると、最優先事項とばかりに衛視隊は女どもを運び去っていった。間抜けなことに、その間オレらは放ったらかし。なんなんだおい?
「ちょ…! オメーいつの間にあんな色仕掛けを習得しやがった?」
意外すぎるだろおい! この朴念仁、とんでもねぇ隠し球を持ってやがった!
「フランシスがよく終業後に食堂で台詞合わせしていてな、そこから拝借した。毎回結構迷惑していたんだが、案外役立ったな」
…おおう…。コイツも怖ぇ…。もし本気で口説き文句をマスターしちまったら、結構な脅威になるところだ…。
気を取り直すぞ。まあいいさ、招待客は全員避難しちまったし結果オーライ! さっさと衛視隊やアドルフのおっさんをぶちのめしちまおうぜ! ぶっ倒れたお貴族姉妹を運び終わった衛視隊が戻ってきた、その時だった。
鋭い悲鳴が場の空気を切り裂く。この声は…さっきの花嫁さんか?
「招待客はもういない…目撃者もいないな…?」
妙に耳につく甲高い声。誰だ、一体?
「さあ、武器を捨てて退がってもらおうか?」
扉を背にしたそこには花嫁を捕まえて喉元に刃物を突きつけている執事、クロードの姿があった。
「おいおい…寝返ったのか、アンタ?」
オレの質問に、奴はムカつく冷笑で答える。
「寝返ったとは、誰のことだ? もともとアドルフ様の味方だったのさ…」
その声でラスファは思い当たったらしい。
「その声…! 婚約パーティの時に廊下で話していた、アドルフ卿の腰巾着か?」
そのセリフに奴は機敏を害したようだった。
「言葉を選べよ、若造。花嫁の命は誰が握ってると思うんだ?」
耳障りな甲高い声で奴は応じる。
その呼びかけで、歯噛みしつつも全員が武器を捨てて退がった。
「そうだ、それでいい…」
そう言いつつ奴は懐から何かの薬らしい紙包みを取り出した。
「飲め! …心配するな、眠っている間に全て終わる…」
「嫌ぁっ!」
おいおい、とうとうヤバげな薬まで出しやがった! なりふり構わなくなった執事は、無理やり飲ませようとする。
「やめろ!」
その声は、執事たちの背後から聞こえた。
「なに?!」
そして勢いよく扉が開かれる!
いい加減に戦いに入りたいんだが、空気読めねぇ貴族姉妹の思わぬ妨害が入り膠着状態。
衛視隊もオレらもひっぺがしたいんだが、女の方も驚きの本気でくっついたまま離れねぇと来たもんだ。
おかげで花嫁や神父、参列客まで避難できたが…状況は動かしようがねぇ。どうしたもんかね?
そこに、貴族たちにとっての大誤算が突っ込んで来た。
「せいっ!!」
人型の台風と化して襲ってきたデュエルによって、衛視隊がまとめてなぎ倒されたのだ。その場にいた幹部クラスの衛視が顎を落とす。そりゃそうだ、頼みの部下が草刈り並みのあっけなさで消えちまったんだからよ。そいつもそのまま、デュエルの一撃で吹っ飛んだ。
一旦状況は落ち着いたが、姉妹の腕はゆるまねぇ。衛視隊を片付けたら、証拠を持ってアドルフのおっさん共々客たちが避難している表に出なきゃなんだけどな。
「トロいよ兄貴たち、何やってんの! ナディアさんや神父さんも避難できたっていうのに!」
珍しいアーシェの説教に、ラスファは項垂れる。ちなみにオレらの腕を掴んだままのお貴族姉妹は、未だ一切手を緩めてねぇ。プライドが邪魔した嫁き遅れ女の執念が、結婚式を目の当たりにして発現したってやつか。多分これ、あとで痣になっててんだろうな…。
「仕方ない、奥の手だ…」
そう小声で呟くと、ラスファは姉妹の姉、イーディスに囁いた。
「すまない…今は行かせてくれ。いい子で待っていてくれるな?」
その甘ったるいセリフの破壊力に、姉妹が揃って盛大に鼻血を迸らせた。そのまま二人は残像が見える勢いで首を縦に振ると、実に幸せそうなカオして倒れる。チャペル用の椅子を血に染めあげて座り込むように倒れた貴族女ども。すると、最優先事項とばかりに衛視隊は女どもを運び去っていった。間抜けなことに、その間オレらは放ったらかし。なんなんだおい?
「ちょ…! オメーいつの間にあんな色仕掛けを習得しやがった?」
意外すぎるだろおい! この朴念仁、とんでもねぇ隠し球を持ってやがった!
「フランシスがよく終業後に食堂で台詞合わせしていてな、そこから拝借した。毎回結構迷惑していたんだが、案外役立ったな」
…おおう…。コイツも怖ぇ…。もし本気で口説き文句をマスターしちまったら、結構な脅威になるところだ…。
気を取り直すぞ。まあいいさ、招待客は全員避難しちまったし結果オーライ! さっさと衛視隊やアドルフのおっさんをぶちのめしちまおうぜ! ぶっ倒れたお貴族姉妹を運び終わった衛視隊が戻ってきた、その時だった。
鋭い悲鳴が場の空気を切り裂く。この声は…さっきの花嫁さんか?
「招待客はもういない…目撃者もいないな…?」
妙に耳につく甲高い声。誰だ、一体?
「さあ、武器を捨てて退がってもらおうか?」
扉を背にしたそこには花嫁を捕まえて喉元に刃物を突きつけている執事、クロードの姿があった。
「おいおい…寝返ったのか、アンタ?」
オレの質問に、奴はムカつく冷笑で答える。
「寝返ったとは、誰のことだ? もともとアドルフ様の味方だったのさ…」
その声でラスファは思い当たったらしい。
「その声…! 婚約パーティの時に廊下で話していた、アドルフ卿の腰巾着か?」
そのセリフに奴は機敏を害したようだった。
「言葉を選べよ、若造。花嫁の命は誰が握ってると思うんだ?」
耳障りな甲高い声で奴は応じる。
その呼びかけで、歯噛みしつつも全員が武器を捨てて退がった。
「そうだ、それでいい…」
そう言いつつ奴は懐から何かの薬らしい紙包みを取り出した。
「飲め! …心配するな、眠っている間に全て終わる…」
「嫌ぁっ!」
おいおい、とうとうヤバげな薬まで出しやがった! なりふり構わなくなった執事は、無理やり飲ませようとする。
「やめろ!」
その声は、執事たちの背後から聞こえた。
「なに?!」
そして勢いよく扉が開かれる!
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