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mission 2 孤高の花嫁
一触即発の理由
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Side-ラグ 2
ナディアさんの毅然とした態度が、酒場にいらっしゃった方々の心に何か変化をもたらしたようでした。まとめてイケナイ所に売り飛ばすとおっしゃって迫って来られた彼らの態度が、目に見えて軟化したかのようでした。
「おお、なんだ。あんたらあのゴッツい兄ちゃんのお仲間か! 衛視隊の回し者かと思っちまったぜ」
「それならそれと早く言えよ! 無駄に脅しちまったじゃねぇか…。で? 俺たちゃ何すりゃいい?」
デュエルさんのお名前を出したのも大きかったようです。急に気さくになられ、先頭におられた方はラスファさんの肩に手を回して笑っておられました…彼はちょっと迷惑そうにしておられますが。
これは、デュエルさんが衛視の方々を追い払ったのが大きかったようですが。カウンター奥のマスターさんも、静かに頷きました。
この騒ぎで寝入っておられたエドガーさんも起きられたようでした。わたくしを見て、手を振ってくださいます。
「デュエルから聞いて来た。衛視隊とも一悶着あったようだな」
未だ警戒を解かず、ラスファさんは酒場の方たちに問いかけます。すると、リーダー役らしい方が奥から出てこられました。中肉中背で波打つ赤毛が特徴的な方です。彼はジョージさんと名乗って気さくに笑いながらおっしゃいました。
「おうよ! ってことはアンタも冒険者か? 全然分からなかったぜ。…ったく、あんなゴツいにいちゃんのお仲間っていうからよ…もっとこう、ガチムチなの想像してた。それに、ぞろぞろと女連れだとは予想外でな? 分からなかった。その…脅かして悪かったな」
それを聞いて、やっとラスファさんは警戒を解いたみたいでした。
「それは気にしなくていい…こっちもいきなりこんな時間に来て、すまなかったな」
「おう、いいってことよ! 聞いた感じじゃ、あんまり状況もよろしくないみたいだしな。こっちも衛視隊にいつ目をつけられるかヒヤヒヤしてたんだ。こうやって、腑抜けたふりしなきゃヤバくてな」
「…そういうことか。ところで、現時点でデュエルから状況をどこまで聞いている?」
「お貴族様の鼻を明かそうって話だろ? そんで、衛視隊も敵に回してる、と。今の所はそこまでだな。仲間の情報と合わせてみなくちゃ、見えてこないものもあるだろうっつってたがな」
ああ…誠実なデュエルさんらしいです。いい加減なことを吹き込んで振り回すようなことをしたくないと思われたのでしょう。
「安心しな、俺たちも貴族に苦しめられたもんばっかだからな。ここにいるエドガーも、腐りきった自警団に嫌気がさして辞めたクチだ。かくいう俺も貴族の不正で職をなくした元・役人。ここのマスターも実は不興を買った貴族に嫌がらせを受けて一度は店をなくしたって苦労人だ。この前はあのデカい兄さんに、久々に痛快な思いをさせてもらったぜ!」
その説明で、ラスファさんはある程度の得心がいったみたいでした。
「…なるほど。とりあえず、ここを拠点に使わせてもらって構わないか? あと、彼女たちの身を隠せるように便宜を図ってもらえれば助かる」
「ああ、いいよなマスター? てか、こんな可愛い困ってる女の子たちを放っといては、紳士たる我ら元自警団員の名が廃るってもんだ!」
その快活な声に、マスターさんはニヤリと笑って見せました。よかった、ここを使わせてもらえそうです!
そうと決まったその途端、それまで黙って成り行きを見守っていたアーシェさんが声をあげました。
ナディアさんの毅然とした態度が、酒場にいらっしゃった方々の心に何か変化をもたらしたようでした。まとめてイケナイ所に売り飛ばすとおっしゃって迫って来られた彼らの態度が、目に見えて軟化したかのようでした。
「おお、なんだ。あんたらあのゴッツい兄ちゃんのお仲間か! 衛視隊の回し者かと思っちまったぜ」
「それならそれと早く言えよ! 無駄に脅しちまったじゃねぇか…。で? 俺たちゃ何すりゃいい?」
デュエルさんのお名前を出したのも大きかったようです。急に気さくになられ、先頭におられた方はラスファさんの肩に手を回して笑っておられました…彼はちょっと迷惑そうにしておられますが。
これは、デュエルさんが衛視の方々を追い払ったのが大きかったようですが。カウンター奥のマスターさんも、静かに頷きました。
この騒ぎで寝入っておられたエドガーさんも起きられたようでした。わたくしを見て、手を振ってくださいます。
「デュエルから聞いて来た。衛視隊とも一悶着あったようだな」
未だ警戒を解かず、ラスファさんは酒場の方たちに問いかけます。すると、リーダー役らしい方が奥から出てこられました。中肉中背で波打つ赤毛が特徴的な方です。彼はジョージさんと名乗って気さくに笑いながらおっしゃいました。
「おうよ! ってことはアンタも冒険者か? 全然分からなかったぜ。…ったく、あんなゴツいにいちゃんのお仲間っていうからよ…もっとこう、ガチムチなの想像してた。それに、ぞろぞろと女連れだとは予想外でな? 分からなかった。その…脅かして悪かったな」
それを聞いて、やっとラスファさんは警戒を解いたみたいでした。
「それは気にしなくていい…こっちもいきなりこんな時間に来て、すまなかったな」
「おう、いいってことよ! 聞いた感じじゃ、あんまり状況もよろしくないみたいだしな。こっちも衛視隊にいつ目をつけられるかヒヤヒヤしてたんだ。こうやって、腑抜けたふりしなきゃヤバくてな」
「…そういうことか。ところで、現時点でデュエルから状況をどこまで聞いている?」
「お貴族様の鼻を明かそうって話だろ? そんで、衛視隊も敵に回してる、と。今の所はそこまでだな。仲間の情報と合わせてみなくちゃ、見えてこないものもあるだろうっつってたがな」
ああ…誠実なデュエルさんらしいです。いい加減なことを吹き込んで振り回すようなことをしたくないと思われたのでしょう。
「安心しな、俺たちも貴族に苦しめられたもんばっかだからな。ここにいるエドガーも、腐りきった自警団に嫌気がさして辞めたクチだ。かくいう俺も貴族の不正で職をなくした元・役人。ここのマスターも実は不興を買った貴族に嫌がらせを受けて一度は店をなくしたって苦労人だ。この前はあのデカい兄さんに、久々に痛快な思いをさせてもらったぜ!」
その説明で、ラスファさんはある程度の得心がいったみたいでした。
「…なるほど。とりあえず、ここを拠点に使わせてもらって構わないか? あと、彼女たちの身を隠せるように便宜を図ってもらえれば助かる」
「ああ、いいよなマスター? てか、こんな可愛い困ってる女の子たちを放っといては、紳士たる我ら元自警団員の名が廃るってもんだ!」
その快活な声に、マスターさんはニヤリと笑って見せました。よかった、ここを使わせてもらえそうです!
そうと決まったその途端、それまで黙って成り行きを見守っていたアーシェさんが声をあげました。
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