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mission 2 孤高の花嫁

メイドさんの正体?

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Side-アーチ  4

 あー、気持ち悪りィ…。本日、絶賛二日酔い中のオレは頭痛と格闘しながら厨房に冷水をもらいに廊下を歩いていた。飲み比べなんざするもんじゃねぇな、ったくよお。

 …なーんてな。

  実はちょっとばかしこの城内に気になることがあってな、あえて二日酔いのフリして残ったってわけよ。あ、いや実際ちょっとばかし頭痛は残ってんだけどな? だからデケェ声はマジ勘弁だ…頭に響く。いつもは大歓迎の女の黄色い声なんかも、今日ばかりは勘弁な…。
 ってかデュエルの奴、飲むときゃ夕べの俺の三倍はゆうに飲みやがんだぜ? バケモンかよあいつ?

 まあいいや、話を戻すぞ。気になることってのは彼女…メイドのリネットのことだ。どうもありゃ、オレとご同業っぽい。それも、遺跡専門のオレと違ってよそ様の懐を狙うタイプの盗賊な。それがなんだってこんなお屋敷で、オッサンの手先よろしくスパイの真似事やらされてるんだかねぇ? オトナの話になりそうだから、弟子はデュエルに任せといた。盗賊ギルドの内情の話になっちまったら、ちょいとシャレにならねぇんでな…あのギルドは特に、秘密ごとにゃウルセェんだ。

 っと…噂をすれば、件のリネット嬢のお出ましだ。廊下を早足で横切っているのが見えた。オレはさりげなく人気がねぇのを確認しながら、忍び足で彼女を追う。よほど急いでんのか、リネットは背後のオレに気づくそぶりもなく進んでいく。手に何か持ってるってことは、向かう先はおそらく外かね? たどり着く前に、さっさと声をかけておくとしようか。

「よう、そこの別嬪さん。そんな慌ててどこいくんだよ?」
 その第一声に彼女はビクンと肩を震わせた。振り返るなり、すかさず盗賊ギルド特有の『サイン』と呼ばれる即特の身振りを見せる。こいつは、ギルドに籍を置く者なら誰もが真っ先に教えられる『同業者』を見分けるためのものだ。どこに行っても共通なんで、ほぼ知ってる奴なら条件反射でなんらかのリアクションが返って来るはずだ。

「あんた、まさか…! 何よ、まだギルドはしつこくあたしを疑ってるの? あの二重帳簿のことなら、知らないと言ったはずよ! アンタもアミーに騙されてるのよ!」
 ありゃ? なんだこの、ナナメ上のリアクションはよ? なんか、思ってたんと違うんだけど?
「二重帳簿? アミー? 騙されてる? ちょっと待て、あのオッサン…愛人に横領の片棒でも担がせてんのか?」
「とぼけないでよ、濡れ衣だって言ってんでしょ?」
 なおも言い募るリネットに、オレは面食らっちまった。どういうことよ?
「いやちょっと待て落ち着け。オレ、確かに盗賊なんだけどよ…本拠地はエルダードだ。アンタが抱えてるゴタゴタなんざしらねぇよ?」
 何テェか…さっきから、どうもお互いの話が噛み合わねぇ。しかし、世の中何が幸いするかわからねぇよな。このすっとぼけたやり取りで、彼女が警戒を解いたんだからよ。
「え? じゃあアンタ、マスティマの盗賊ギルドから送り込まれてきた追手じゃないの?」
「へあ? おってとは穏やかじゃねぇな。何かやらかしたんか? しかもはるばるマスティマなんて遠いトコから?」
「だから何もやってない、濡れ衣なのよ! まあ、あたしが盗賊とバレてんなら隠しても仕方ないか」
 ちなみにマスティマとは、エルダードからかなり南に行ったところにある、かなり暑い地域の中規模国家だ。常に降り注ぐ灼熱の太陽に耐えうる南国の植物が生い茂り、定期的に信じられねぇほどの土砂降りの雨が降るんだそうだ。それだけに露出の高い服装が発達し、浅黒く日焼けした人々が行き交っているそうだ。まあ流石にオレも行ったことはねぇけどよ。


 彼女はオレを空き部屋の一室に引っ張り込んだ。屋敷の連中にゃ聞かせらんねぇ話になりそうだったからな、オレにも依存はねぇ。
 リネットは続ける。今までの胸のつかえを全て吐き出すかのように、語り始めた。確かにこんなお屋敷で盗賊なんぞ…忍び込まれでもしねぇ限り…出会うこともなかったろうしな。
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