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mission 2 孤高の花嫁
あの日の真相
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Side-ラスファ 4
状況を整理しよう。
あの日来ていたアーサーは、家族共々強盗に殺されてしまった。その後ナディアはカッパーフィールド家に保護され、そこで聞いたのは…犠牲者は両親と祖母、弟の四名、という衛視の発表。彼女の目の前で殺されたであろう恋人のアーサーは数に入っていない…ということはすなわち、衛視もグルで揉み消しがあったという事だ。アーサーの死をなかったことにして、最初から恋仲の相手などおらず結婚を自ら受け入れたというふうに持って行きたかったのだろう。つまらない貴族のくだらない見栄だ。
「しかし、何故フレデリック卿を?」
領民全てが知っているであろう、オープンな家風で親しまれている領主だ。間違えたとも考えにくい。
「あの日、捕まって袋に詰められた時に強盗たちの会話を聞いたの…」
『フレデリック卿も、罪なことをなさる』
『甥の想い人を横取りして愛人にしようとは…』
『こいつをフレデリック卿の元に送り込めば、良い金になる。雇われた甲斐があった』
「そんなことのために、家族を…アーサーを…。衛視もあてにならないなら、いっそ、この手で…って。フレデリック卿は、極端な二面性のある人間で、時々恐ろしい面を覗かせる方よ。私と二人になった時に、散々脅しをかけられたわ」
おかしい。どうも、あちこち矛盾している。それ以上に彼女には全く情報が入っていない。つまり、そうなるように、息のかかった使用人に指図しているということか…厄介な。
「それはおかしい。私たちの正式な依頼人は、当のフレデリック卿だ。もしそれが事実なら、わざわざ呼び寄せてまで雇う必要はないはず。その気になれば、息のかかった衛視を利用するだろう」
その私の言葉に、ナディアは濡れた目を上げた。
「今、細かく事実関係を洗っているところだ。辛いだろうが、短気を起こさずそれまで待っていてくれ」
「あなた…何者なの?」
「ああ…昨夜、妹が会って話をしたと聞いた。随分とあんたのことを気に入っていたようだったからな。放っておく気にもなれない」
「昨夜の…? ということは、あなたも冒険者?」
その問いに、私は黙って頷く。
「すごく純粋で、可愛らしい子だったわ。また会って話をしたいわ」
「わかった。報告も兼ねて話しておこう」
彼女はもう大丈夫だろう。だが、こんな敵だらけの場所に長く置いてもおけない。とにかく、うまく彼女を隠せる場所を見つけることが急務になりそうだ。
それに…似ているのだ。かつてそばにいた、大切な人に。姿形などではなく、その心のありようが。故郷を捨てるきっかけになった相手ではあるが、身を引いた今でも忘れることなどできない人に。
「あの…もう一つだけ、お願いがあるんです…」
アーシェたちのところに戻りかけた時、遠慮がちに再び呼び止められた。
「?」
「あの時、アーサーは私の目の前で確かに殺されました。出来れば、彼は今どこに眠っているのか…わかったなら教えて欲しくて…。ごめんなさい、依頼料は払えそうにないけれど…」
ああ、やはり似ている。自分の思いにまっすぐなところが…。
ナディアに彼女の姿が一瞬重なって見えて、わずかに胸が痛む。
「わかった、必ず突き止めよう。依頼料は気にしなくていい。それもまとめて、フレデリック卿からの依頼に含めるつもりだ」
もし仮に連中が渋ったとしてても、その願いは自分が叶えるつもりで私は頷いた。
その私の答えに、ナディアは声をつまらせる。部屋の隅で困ったように見上げてくる召喚獣に「引き続き、そばにいてやってくれ」と伝えると、返事代わりに一声鳴いて彼女に寄り添う。…本当に、役立つ召喚獣だな。
戻りぎわ、腕に巻かれた包帯がわりのスカーフをちらりと一瞥すると、その雑念を振り払った。さっさと仕事に戻らなくては。
後の連中の聞き込み結果が気になって来た。衛視の詰所から戻るデュエルの拾った情報が気になるところだ。
状況を整理しよう。
あの日来ていたアーサーは、家族共々強盗に殺されてしまった。その後ナディアはカッパーフィールド家に保護され、そこで聞いたのは…犠牲者は両親と祖母、弟の四名、という衛視の発表。彼女の目の前で殺されたであろう恋人のアーサーは数に入っていない…ということはすなわち、衛視もグルで揉み消しがあったという事だ。アーサーの死をなかったことにして、最初から恋仲の相手などおらず結婚を自ら受け入れたというふうに持って行きたかったのだろう。つまらない貴族のくだらない見栄だ。
「しかし、何故フレデリック卿を?」
領民全てが知っているであろう、オープンな家風で親しまれている領主だ。間違えたとも考えにくい。
「あの日、捕まって袋に詰められた時に強盗たちの会話を聞いたの…」
『フレデリック卿も、罪なことをなさる』
『甥の想い人を横取りして愛人にしようとは…』
『こいつをフレデリック卿の元に送り込めば、良い金になる。雇われた甲斐があった』
「そんなことのために、家族を…アーサーを…。衛視もあてにならないなら、いっそ、この手で…って。フレデリック卿は、極端な二面性のある人間で、時々恐ろしい面を覗かせる方よ。私と二人になった時に、散々脅しをかけられたわ」
おかしい。どうも、あちこち矛盾している。それ以上に彼女には全く情報が入っていない。つまり、そうなるように、息のかかった使用人に指図しているということか…厄介な。
「それはおかしい。私たちの正式な依頼人は、当のフレデリック卿だ。もしそれが事実なら、わざわざ呼び寄せてまで雇う必要はないはず。その気になれば、息のかかった衛視を利用するだろう」
その私の言葉に、ナディアは濡れた目を上げた。
「今、細かく事実関係を洗っているところだ。辛いだろうが、短気を起こさずそれまで待っていてくれ」
「あなた…何者なの?」
「ああ…昨夜、妹が会って話をしたと聞いた。随分とあんたのことを気に入っていたようだったからな。放っておく気にもなれない」
「昨夜の…? ということは、あなたも冒険者?」
その問いに、私は黙って頷く。
「すごく純粋で、可愛らしい子だったわ。また会って話をしたいわ」
「わかった。報告も兼ねて話しておこう」
彼女はもう大丈夫だろう。だが、こんな敵だらけの場所に長く置いてもおけない。とにかく、うまく彼女を隠せる場所を見つけることが急務になりそうだ。
それに…似ているのだ。かつてそばにいた、大切な人に。姿形などではなく、その心のありようが。故郷を捨てるきっかけになった相手ではあるが、身を引いた今でも忘れることなどできない人に。
「あの…もう一つだけ、お願いがあるんです…」
アーシェたちのところに戻りかけた時、遠慮がちに再び呼び止められた。
「?」
「あの時、アーサーは私の目の前で確かに殺されました。出来れば、彼は今どこに眠っているのか…わかったなら教えて欲しくて…。ごめんなさい、依頼料は払えそうにないけれど…」
ああ、やはり似ている。自分の思いにまっすぐなところが…。
ナディアに彼女の姿が一瞬重なって見えて、わずかに胸が痛む。
「わかった、必ず突き止めよう。依頼料は気にしなくていい。それもまとめて、フレデリック卿からの依頼に含めるつもりだ」
もし仮に連中が渋ったとしてても、その願いは自分が叶えるつもりで私は頷いた。
その私の答えに、ナディアは声をつまらせる。部屋の隅で困ったように見上げてくる召喚獣に「引き続き、そばにいてやってくれ」と伝えると、返事代わりに一声鳴いて彼女に寄り添う。…本当に、役立つ召喚獣だな。
戻りぎわ、腕に巻かれた包帯がわりのスカーフをちらりと一瞥すると、その雑念を振り払った。さっさと仕事に戻らなくては。
後の連中の聞き込み結果が気になって来た。衛視の詰所から戻るデュエルの拾った情報が気になるところだ。
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