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intermission 2 ~わらしべアーシェ~
占い学科、二度と行けな~い!
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Side-アーシェ 7
ひとまずラグちゃんとは賢者の院の前で別れ、その足であたしは占い学科に急いだ。昨日の報告と、この実験の目的を聞くために。
ラグちゃんの言う通り、この物々交換の魔法って面白いけど使いどころがわからない。どう応用して使うのか、気になって仕方なくなっちゃった。
占い学科の教室を開けると、そこには水晶玉を抱えた占い学科の生徒さんたちが数人、キョトンとこっちを見てきた。え、何? なんであたし、めっちゃ注目されてるの?
「キミ、昨日は面白かったよ!」
「そうそう! 遠見の水晶を見るのがこんな楽しいなんて、久しぶり!」
…え? なにそれ?
見に覚えのないことでお礼を言われるなんて、気持ち悪い。とりあえずナナ先輩に合わなくっちゃ!
あちこちでお礼言われて、その度に首をひねり。聞き込みを続けて見つけたナナ先輩は、奥の休憩サロンでお茶してるとこだった。
「あら、昨日はありがとね。あなたもお茶飲む?」
言いながらさっさとナナ先輩は香茶を入れてくれた。うわあ、お花のいい香り! あ、いやいや。香りに気を取られてる場合じゃなかった!
「ナナ先輩。昨日のあの実験…何だったんですか?」
「ふふ、それが最終的にあなたが手に入れたものなのね」
あたしの質問には答えず、ナナ先輩は髪飾りについて触れる。
「え…はい…。あの…これもしかして、報告と同時に提出ですか?」
少し不安になりながら、あたしは先輩の顔色を伺う。だって、心配なんだもん!
あたしの質問がよっぽど可笑しかったのか、先輩はくすくすと笑う。
「大丈夫よ、この実験で大切なのは交換した「もの」じゃないから!」
「…え?」
ますますわからない。なんなのよもう?
やがて笑いを納めて先輩はあたしに向き直る。
「先に謝らせてね。今回、あなたが果たした役割は大きかったのよ」
「はい?」
「あなたは、昨日行われた遠見の水晶の試験のお題だったの。昨日一日中で交換した物品をずっと見続けてリストに挙げるのが試験の内容だったのよ」
「え…ええ!?」
ちょっと待って? って事は…昨日一日のあんな失敗やこんなことも全部、大勢の人たちが操る千里眼の水晶玉で監視されていたってこと?
「あなたに何も知らせなかったのは、見られている事を意識せずのびのびと動いて欲しかったからなの。本当にごめんなさい」
あたしは、開いた口が塞がらなかった。
完全に予想外なことがあるって、何も言えなくなるもんだわ…。
「一日がかりのお題にしたのは、長時間の集中力を見るためよ。ちなみに物々交換の魔法は、こないだ偶然にできた私のオリジナル魔法なの。予想以上に面白く動いてくれたから試験は大成功よ。ありがとう!」
先輩がポカンとするあたしの手をとって、お礼を言った時だった。サロンに入ってきた他の人たちが口々にあたしを見て近づいてくる。
「あ、昨日の! こんな面白い試験、初めてだったわ! ありがとうね!」
「持ってたルプアを馬にかじられた時、思わず大爆笑しちまったわ。君サイコー!」
「チケットの時は災難だったね。助けてくれたお兄さん、また紹介してね♪」
「あわわわわわ…!」
あまりのことに、その場から全力ダッシュで逃げたかったけど…先輩がしっかりとあたしの手を握ってて離してくれない。
「あ、あの。その…!」
うろたえるあたしに、先輩は世にも恐ろしい質問を放つ。
「次に機会があったら、何か協力してもらっていいかしら? 生け贄とか、興味ない?」
限界。
「すっ…すいません~!!」
慌ててあたしはその場から逃げ出した。もう無理! 恥ずかしすぎ!
何もないところでコケた時も、馬にルプアかじられて目を点にした時も、タチの悪い観光客に絡まれたのも…ダダ漏れ! 全ッ部ダダ漏れ!
嘘でしょ~??
…それから。
あたしは占い学科の人たちの間で、ちょっとした有名人になってしまった。あちこちから「猫じゃら草ちゃん」と声がかかる。
なんでこうなんのよぉ…。もう占い学科なんて行かないからね!!!
余談…翌日。
「フランシス様ァ、どちらに行かれますのぉ?」
性格悪そうな二人連れの女性観光客に、一日中ベッタリとくっつかれていたフランシス。晩の営業中の白銀亭まで付きまとわれて、ほとほと困り果てながら扉をくぐる。
「「「あ」」」
ちょうど彼女たちと給仕姿のラスファが鉢合わせした。
「えっと…お知り合い?」
恐る恐る聞く彼女たちに、何故か胸を張るフランシス。
「もちろんだよ! 彼はボクの大親友さ!」
その言葉が終わる前に。
「ごめんなさーい!!!」
二人連れは風のように、白銀亭を後にしたのだった。
「なんなんだい、一体…?」
「さあな…?」
ひとまずラグちゃんとは賢者の院の前で別れ、その足であたしは占い学科に急いだ。昨日の報告と、この実験の目的を聞くために。
ラグちゃんの言う通り、この物々交換の魔法って面白いけど使いどころがわからない。どう応用して使うのか、気になって仕方なくなっちゃった。
占い学科の教室を開けると、そこには水晶玉を抱えた占い学科の生徒さんたちが数人、キョトンとこっちを見てきた。え、何? なんであたし、めっちゃ注目されてるの?
「キミ、昨日は面白かったよ!」
「そうそう! 遠見の水晶を見るのがこんな楽しいなんて、久しぶり!」
…え? なにそれ?
見に覚えのないことでお礼を言われるなんて、気持ち悪い。とりあえずナナ先輩に合わなくっちゃ!
あちこちでお礼言われて、その度に首をひねり。聞き込みを続けて見つけたナナ先輩は、奥の休憩サロンでお茶してるとこだった。
「あら、昨日はありがとね。あなたもお茶飲む?」
言いながらさっさとナナ先輩は香茶を入れてくれた。うわあ、お花のいい香り! あ、いやいや。香りに気を取られてる場合じゃなかった!
「ナナ先輩。昨日のあの実験…何だったんですか?」
「ふふ、それが最終的にあなたが手に入れたものなのね」
あたしの質問には答えず、ナナ先輩は髪飾りについて触れる。
「え…はい…。あの…これもしかして、報告と同時に提出ですか?」
少し不安になりながら、あたしは先輩の顔色を伺う。だって、心配なんだもん!
あたしの質問がよっぽど可笑しかったのか、先輩はくすくすと笑う。
「大丈夫よ、この実験で大切なのは交換した「もの」じゃないから!」
「…え?」
ますますわからない。なんなのよもう?
やがて笑いを納めて先輩はあたしに向き直る。
「先に謝らせてね。今回、あなたが果たした役割は大きかったのよ」
「はい?」
「あなたは、昨日行われた遠見の水晶の試験のお題だったの。昨日一日中で交換した物品をずっと見続けてリストに挙げるのが試験の内容だったのよ」
「え…ええ!?」
ちょっと待って? って事は…昨日一日のあんな失敗やこんなことも全部、大勢の人たちが操る千里眼の水晶玉で監視されていたってこと?
「あなたに何も知らせなかったのは、見られている事を意識せずのびのびと動いて欲しかったからなの。本当にごめんなさい」
あたしは、開いた口が塞がらなかった。
完全に予想外なことがあるって、何も言えなくなるもんだわ…。
「一日がかりのお題にしたのは、長時間の集中力を見るためよ。ちなみに物々交換の魔法は、こないだ偶然にできた私のオリジナル魔法なの。予想以上に面白く動いてくれたから試験は大成功よ。ありがとう!」
先輩がポカンとするあたしの手をとって、お礼を言った時だった。サロンに入ってきた他の人たちが口々にあたしを見て近づいてくる。
「あ、昨日の! こんな面白い試験、初めてだったわ! ありがとうね!」
「持ってたルプアを馬にかじられた時、思わず大爆笑しちまったわ。君サイコー!」
「チケットの時は災難だったね。助けてくれたお兄さん、また紹介してね♪」
「あわわわわわ…!」
あまりのことに、その場から全力ダッシュで逃げたかったけど…先輩がしっかりとあたしの手を握ってて離してくれない。
「あ、あの。その…!」
うろたえるあたしに、先輩は世にも恐ろしい質問を放つ。
「次に機会があったら、何か協力してもらっていいかしら? 生け贄とか、興味ない?」
限界。
「すっ…すいません~!!」
慌ててあたしはその場から逃げ出した。もう無理! 恥ずかしすぎ!
何もないところでコケた時も、馬にルプアかじられて目を点にした時も、タチの悪い観光客に絡まれたのも…ダダ漏れ! 全ッ部ダダ漏れ!
嘘でしょ~??
…それから。
あたしは占い学科の人たちの間で、ちょっとした有名人になってしまった。あちこちから「猫じゃら草ちゃん」と声がかかる。
なんでこうなんのよぉ…。もう占い学科なんて行かないからね!!!
余談…翌日。
「フランシス様ァ、どちらに行かれますのぉ?」
性格悪そうな二人連れの女性観光客に、一日中ベッタリとくっつかれていたフランシス。晩の営業中の白銀亭まで付きまとわれて、ほとほと困り果てながら扉をくぐる。
「「「あ」」」
ちょうど彼女たちと給仕姿のラスファが鉢合わせした。
「えっと…お知り合い?」
恐る恐る聞く彼女たちに、何故か胸を張るフランシス。
「もちろんだよ! 彼はボクの大親友さ!」
その言葉が終わる前に。
「ごめんなさーい!!!」
二人連れは風のように、白銀亭を後にしたのだった。
「なんなんだい、一体…?」
「さあな…?」
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