上 下
57 / 405
intermission 2 ~わらしべアーシェ~

可愛い櫛さん、さようなら…。

しおりを挟む
side-アーシェ 4

 可愛い櫛、可愛い櫛~♪
 占い学の実験で、交換を繰り返すってのを一日がかりでやってたけど…なんか楽しくなってるあたし。
 猫じゃら草から始まって、飴玉・羽ペン・ルプアの実ときて…じゃじゃーん、この可愛い木の櫛!
 うふふ、まだ日は高いけど…実験終了でいいんじゃないかな? いいよね、いいよね? 依頼してきたナナ先輩は、交換してゲットしたものはあたしが貰っていいって言ってたし!
 
 そう思ってあたしは、町外れの運河沿いの道を抜けて街中に戻ってきた。だって、おじいさんのくしゃみとか馬とか、もうビックリする事はこりごりだし! このまま報告したらこの櫛、貰っていいって事だもんね?
 
 足取りも軽く賑やかな通りで、近道の路地を抜けようとしたその時だった。
「ちょっと待ってくれたまえ~」

 脇道からから突然声をかけられて、びくりとあたしは立ち止まった。あ、これまずいパターンだ。恐る恐る振り返ると、薄暗い路地裏で長い金髪を振り乱した不気味な人影がゆっくりと手招きしている!
「ひいいいいいいいっ!?」
 なになに、ナニこの金髪ワカメ!  きらびやかな服装とのギャップが、よけいにこわいんですけど! 古代の騎士の亡霊かなんかですか!?

 思わず攻撃魔法を唱えようとしたあたしに、慌てたようにそいつは後退る。
「いやいや、ちょっと! ボクだよボク! 無茶しないでくれたまえ!」
「ボクって言われても! あたしワカメに知り合いいないから!」
 そりゃあたし魔力あるから、こういうの見えるっちゃ見えるけど。兄貴と違ってこんなはっきり見えないから!
「ワカメ? 何のことだい? だからボクだって!」
 そう言うとワカメは髪をかきあげた。そこには見知った顔がある。
「え、ふ…フランシス…?」
 

 「ちょっとね。突風に煽られて髪がこの通り乱れちゃってね」
「は…はあ…」
 落ち着いて話を聞くと、突風に煽られて髪がボサッちゃって、人前に出られず困り果てて路地裏に潜んでたんだって。
「全く人騒がせな! もう少しで路地裏に大惨事を巻き起こすとこだったじゃないの!」
「え…ボクのせいになるのかいそれ?」
「うん」
 正直なあたしの意見に、フランシスはうなだれる。だけどさっさと気を取り直してあたしに向き直った。意外とメンタル強いね。
「すまないが、その手にある美しい櫛…貰えないかい? 普段持ち歩いてた櫛が、ショーの殺陣で折れちゃってね。代わりを手に入れるのを忘れていたんだ。この通り!」
 …あー…実験再開だわ、うん。さようなら、あたしの可愛い櫛さん…。


 やだなあ…可愛い櫛が、よりによってフランシスのショーのチケットになっちゃうなんてさ。あたし的にいらないものとして、五本の指に入るわよ?
 これは、サクッと交換してもらわなきゃ! 

 ところが、こういう時に限ってなかなか交換希望者が出てきやしない。ねえ、ここにはプラチナチケットがありますよ~? なんて通りすがりの誰かに売り込んで見たいけど、流石にそこまでの勇気もないわ。
 態とらしくピラピラなびかせてるけど、観光客のお姉さん方は見ちゃいない。さっさと交換してよ~!
 その時、いきなり激しい路地風が吹いて、あたしの手からチケットが飛んで行った。え、ちょっと!まだ一応は実験中なんだけどー?!
 慌ててあたしは追いかけるけど、観光客の群れの中に飛び込んだのか見つからない。
 
 どうしよ? 実験失敗? 困ったよお…このままじゃナナ先輩に生贄にされちゃうかも知んないじゃん!?
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

愛人がいらっしゃるようですし、私は故郷へ帰ります。

hana
恋愛
結婚三年目。 庭の木の下では、旦那と愛人が逢瀬を繰り広げていた。 私は二階の窓からそれを眺め、愛が冷めていくのを感じていた……

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...