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intermission 1 ~観光大使の野望~

朝のスケジュール ~野望と激励~

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Side-フランシス 5

 クラウスさんから受け取った台本を一読して、ボクは大きく頷いた。うん、間違いなくこれは人気作になる! 意欲的に取り組んでいこうじゃないか!
「素晴らしい…! 頑張っていきますよ、ボク! ところで…この台本での共演者は決まってるんですか?」
 何気ないボクの質問に、局長は少し考えるそぶりを見せた。
「主役がユーだという以外はまだ検討中なんだけどね。多分、ユーと同じ白銀亭に所属の『アマゾネス・リンダ』にお願いすることになるんじゃないかな? スケジュール的にもちょうどいいところだし、この前の結果もそこそこの成績を残してるし…いいと思わないかい? 盾も派手だし、何より華やかだしねえ」
 そう言いながら数冊の共演した舞台の台本を見せると、大げさな仕草でくるくるとターンしてみせる局長。でも、華やか…ねえ。あの姐さん、化粧濃いし普段からビキニ鎧だから、単に局長の好みだと思うんだけどね。しかし彼女、風邪ひくことってないのかなあ?
 まあ、ボクも個人的に嫌ってるわけじゃないけど…気が強い上に、常に上から目線だから苦手なんだよね。こんな時に、彼らがこっちの業界にきてくれたらって思わずにいられないよ! だって、そうだろ?

 超絶華やかで美しい『王子系勇者』フランシスこと、このボク。その脇を固めるのは、そう、彼らさ!
 恵まれ過ぎた体格と精悍さを誇る『ガテン系戦士』デュエル。
 そしてどこか危険さをにじませる『ワイルド系盗賊』アーチ。
 さらに稀少種族の高貴さが人目をひくこと確実な『クール系精霊使い』ラスファ。
 
 ああ…目を閉じれば浮かんでくる熱狂ステージ、黄色い悲鳴…。気心は知れているから、さぞかしぴったりな殺陣もできるだろうね。考えただけでゾクゾクするよ!
「ところでフランシスちゃん。この度は人気ランキング二位おめでとう! 随分と急なイベントになっちゃったけど、ユーはますますいい感じじゃない? その調子でこれからも頑張ってよ。あと新作の広報ポスターのモデルにも決まったから、月末は空けといてね」
 「わかりました、では朝のステージに行って来ます!」
「ああ、行ってらっしゃい。そうそう、クラウス君。季節限定の新作グッズの見本は、まだか~い?先方さんが是非とも…」
 
 相変わらず忙しそうな局長とクラウスさんの見送りで、ボクは最初のステージである噴水広場通りへと急ぐ。街に数カ所ある常設ステージの一つだから、お客さんも多く集まるんだ。そろそろボクの親衛隊長、ジェインがいい席を取っている頃だね。ああ、それにしても…なんて素晴らしい、バラ色の日々だろうか! 一度ステージの幕が上がれば熱を帯びた黄色い歓声が上がり、観客からは次々とサインを求められる。歌って踊ればあっという間に時が過ぎて行く。同業者の妬み? それはまあ、どこの業界でもあるものさ。でも、ボクは負けないよ…だって親衛隊のみんながいるからね!  


 熱狂のうちの午前のステージは終わりを迎え、サインを求める観客の皆さんや親衛隊に入会希望のお嬢さんたちと握手するうち、気がつけばもう昼に近い時刻。さあ、早く次のレッスン場所に向かわなくては! ちょうどここからだと近道になるし、もう一度白銀亭に顔を出して行こうかな。ファンももちろん大事だけれど、友情だって大切にしたいボクなのさ!

 我が白銀亭の扉をくぐれば、そこはまさに戦場だった。ほぼ満席のカウンター席を占めるのは相変わらず女性客ばっかり。テーブル席でさえも観光客がほとんどを占めており、その間を縫うようにリンダやデュエル達がトレイを手に動き回っている。ここからは見えないが、ラスファも厨房で忙しく立ち回っているのだろう。女性客の視線でわかる。
 アーチの姿は見えないが、朝帰りだったからまだ寝てるんだろうね。
「やあ、相変わらず忙しそうだね。なかなか手伝えないのが心苦しいよ…まあ、また来るから頑張ってね」
 忙しそうだから、挨拶は手短にしよう。それだけ言うとボクは、白銀亭を後にした。去り際になぜか、ビキニ鎧の上にエプロンというありえない格好で給仕していたリンダがものすごい勢いで後ろからツボいっぱいの塩をたっぷりと浴びせて来たけど。…うん、多分彼女なりの激励だね。よし、ボクももっと頑張らなくては! ありがとうリンダ!
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