39 / 405
mission 1 俺たち、観光大使じゃない冒険者!
祭りの後の後日談
しおりを挟む
side-デュエル 15
「どういうことだい、あんたら!」
数日後。
やっとの思いで宿に帰り着いた俺たちを待っていたのは、いつも以上にごった返す一階の酒場兼食堂と女将の説教だった。この惨状はフランシスのイベント凱旋によるもので、再び人気を勝ち得た彼のポスターがあちこちに貼られている。見覚えのないアルバイトが増えていると思ったら、限りなく影の薄いマスターが急きょ増やしたらしい。入り口近くに手書きの求人ポスターの残骸が風に揺れていた。
客に配慮した女将はそのまま俺たちを隠し部屋に連行すると、説明と説教のエンドレスコースに入った。病み上がりに配慮してほしいと思うのは、贅沢なんだろうか?
俺たちの呪いは間違いなく解けている。だが通常の病と同じく速攻で全快というわけにもいかず、余波が抜けるまでしばらくかかるといろいろ詳しいラグにも聞いた。だが女将に報告できる余裕がある者もいるはずもなく(どの道この事件の顛末を見境なく広めることもできず)、現時点まで俺たちは沈黙を貫くほかなかった。
あの後。
遺跡から出るなり俺たちは屈強な自警団員に囲まれて、まとめて施療員を兼ねた大地母神の神殿に放り込まれてしまった。
どうやら先に担ぎ込まれたアーシェたちが心配してのことだったらしく、自室で療養するという俺たちの意思は完全に無視されてしまった。よりにもよって出口は、身動き取れない繁華街のど真ん中。それに加えて呪いの余波で弱っていた俺たちに抵抗するすべもなく、何より途中で力尽きたラスファのこともあり、折れざるを得なかった。
確かに数日でかなり回復はしたのだが、大人しくするばかりだと鈍ってしまう。ゆえにこっそり筋トレをしていたのだが、幾度か見つかってこっぴどく説教されてしまった。俺に回復が最も早かったのもあって、暇を持て余していたのだから仕方ない。
アーチにとってはここの環境は天国だっただろう。だが看護にくる若い女性神官を根こそぎ口説いて回っていたことがバレて、たちまちオバちゃん神官ばかりがあてがわれることになってしまったそうだ。そこから先は「こんな所さっさと出てやる!」と息巻いていたらしい。どこに行ってもブレないところは、ある意味感心する。ちなみに口説かれた神官たちは免疫がないせいか悪い気がしなかったらしく、時々こっそり会いに来る娘も居たらしい。「もう少しいてもいいかもな」と言い始めた頃に施療院を追い出され、未練タラタラだったことは想像に難くない。
大変だったのは、三倍の呪いを受けて一番重症だったラスファだ。あれからしばらく熱が下がらなかったらしく丸二日の間、意識が戻らなかったらしい。遺跡から出るときも思ったが、あの状態でよくもまああれだけ意地を張れたもんだ。しかも、後で聞いたら自力で帰る気だったらしい。いくらなんでも、そりゃ無理というものだ…。彼の場合は大した用もないのに、しょっちゅう部屋を覗きに来る女性神官たちに嫌気がさしたようで「こんなところで落ち着いて休めるか!」と帰り支度を始めた。当然、挙句に見つかって怒られた上で再び倒れたそうで…なんとも気の毒な話だ。後で聞くと彼はそこの神官長とも知り合いだったらしく「調子が回復したら、また薬草を届けてくれ」と頼まれていた。ちょくちょく狩りに行く度に薬草取りもしていたらしい。意外な人脈だ。
俺が大まかな事情を把握しているのには訳がある。実はその間、ラインハルトが何度か見舞いに訪れていたのだ。最初に依頼をした手前、責任を少なからず感じていたらしい。幾度か様子を見にきては、事件の後始末の状況を俺に伝える目的もあったようだ。なぜ俺にかというと、答えは単純。単に回復が早かったからだ。
最初に捕まえたスイカ男は名声目当ての下っ端に過ぎず、ろくに何も知らなかったこと。崩れた部屋があって、進めず遠回りを強いられたこと。何故か氷漬けで見つかった奴もいたが、解凍しても怯えきっていてろくに何も話さないこと。あと、派手な戦いの跡が見られた部屋には誰もいなかった事を聞くと、俺はこっそり安心した。
帝国が動く気配がないという知らせにはホッとした。そして…最後の部屋が、人知れず封印された事も。他の連中の話は、その合間に上ってきたのだった。
ついでというのもなんだが…あのフランシスがしょっちゅう訪れ、諸々の感謝を述べていったがその度に叩き出されていた事も付け加えておく。決して悪い奴じゃないとは思うんだが、もう少し場を弁えて行動すべきだろうに…。しかも、自分のやかましさを自覚できないというのはタチが悪すぎる。
「どういうことだい、あんたら!」
数日後。
やっとの思いで宿に帰り着いた俺たちを待っていたのは、いつも以上にごった返す一階の酒場兼食堂と女将の説教だった。この惨状はフランシスのイベント凱旋によるもので、再び人気を勝ち得た彼のポスターがあちこちに貼られている。見覚えのないアルバイトが増えていると思ったら、限りなく影の薄いマスターが急きょ増やしたらしい。入り口近くに手書きの求人ポスターの残骸が風に揺れていた。
客に配慮した女将はそのまま俺たちを隠し部屋に連行すると、説明と説教のエンドレスコースに入った。病み上がりに配慮してほしいと思うのは、贅沢なんだろうか?
俺たちの呪いは間違いなく解けている。だが通常の病と同じく速攻で全快というわけにもいかず、余波が抜けるまでしばらくかかるといろいろ詳しいラグにも聞いた。だが女将に報告できる余裕がある者もいるはずもなく(どの道この事件の顛末を見境なく広めることもできず)、現時点まで俺たちは沈黙を貫くほかなかった。
あの後。
遺跡から出るなり俺たちは屈強な自警団員に囲まれて、まとめて施療員を兼ねた大地母神の神殿に放り込まれてしまった。
どうやら先に担ぎ込まれたアーシェたちが心配してのことだったらしく、自室で療養するという俺たちの意思は完全に無視されてしまった。よりにもよって出口は、身動き取れない繁華街のど真ん中。それに加えて呪いの余波で弱っていた俺たちに抵抗するすべもなく、何より途中で力尽きたラスファのこともあり、折れざるを得なかった。
確かに数日でかなり回復はしたのだが、大人しくするばかりだと鈍ってしまう。ゆえにこっそり筋トレをしていたのだが、幾度か見つかってこっぴどく説教されてしまった。俺に回復が最も早かったのもあって、暇を持て余していたのだから仕方ない。
アーチにとってはここの環境は天国だっただろう。だが看護にくる若い女性神官を根こそぎ口説いて回っていたことがバレて、たちまちオバちゃん神官ばかりがあてがわれることになってしまったそうだ。そこから先は「こんな所さっさと出てやる!」と息巻いていたらしい。どこに行ってもブレないところは、ある意味感心する。ちなみに口説かれた神官たちは免疫がないせいか悪い気がしなかったらしく、時々こっそり会いに来る娘も居たらしい。「もう少しいてもいいかもな」と言い始めた頃に施療院を追い出され、未練タラタラだったことは想像に難くない。
大変だったのは、三倍の呪いを受けて一番重症だったラスファだ。あれからしばらく熱が下がらなかったらしく丸二日の間、意識が戻らなかったらしい。遺跡から出るときも思ったが、あの状態でよくもまああれだけ意地を張れたもんだ。しかも、後で聞いたら自力で帰る気だったらしい。いくらなんでも、そりゃ無理というものだ…。彼の場合は大した用もないのに、しょっちゅう部屋を覗きに来る女性神官たちに嫌気がさしたようで「こんなところで落ち着いて休めるか!」と帰り支度を始めた。当然、挙句に見つかって怒られた上で再び倒れたそうで…なんとも気の毒な話だ。後で聞くと彼はそこの神官長とも知り合いだったらしく「調子が回復したら、また薬草を届けてくれ」と頼まれていた。ちょくちょく狩りに行く度に薬草取りもしていたらしい。意外な人脈だ。
俺が大まかな事情を把握しているのには訳がある。実はその間、ラインハルトが何度か見舞いに訪れていたのだ。最初に依頼をした手前、責任を少なからず感じていたらしい。幾度か様子を見にきては、事件の後始末の状況を俺に伝える目的もあったようだ。なぜ俺にかというと、答えは単純。単に回復が早かったからだ。
最初に捕まえたスイカ男は名声目当ての下っ端に過ぎず、ろくに何も知らなかったこと。崩れた部屋があって、進めず遠回りを強いられたこと。何故か氷漬けで見つかった奴もいたが、解凍しても怯えきっていてろくに何も話さないこと。あと、派手な戦いの跡が見られた部屋には誰もいなかった事を聞くと、俺はこっそり安心した。
帝国が動く気配がないという知らせにはホッとした。そして…最後の部屋が、人知れず封印された事も。他の連中の話は、その合間に上ってきたのだった。
ついでというのもなんだが…あのフランシスがしょっちゅう訪れ、諸々の感謝を述べていったがその度に叩き出されていた事も付け加えておく。決して悪い奴じゃないとは思うんだが、もう少し場を弁えて行動すべきだろうに…。しかも、自分のやかましさを自覚できないというのはタチが悪すぎる。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
異世界召喚された俺は余分な子でした
KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。
サブタイトル
〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる