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mission 1 俺たち、観光大使じゃない冒険者!
暗殺者と一緒♪
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Side-アーチ 4
ったく、ガキども除いて三人、揃ってタイマン勝負とはね。
初っ端に引き離されたデュエルは別口の通路に行っちまってる。さっき聞こえたかすかな金属音は、楽しいパーティの真っ最中ってか?
ラスファの奴も、あの金髪海藻頭の精霊使いに下の階層に落とされちまって勝負ときた。
そんで、崩落に巻き込まれかけて慌てて逃げたオレの前には…。
「やっとテメェと勝負できて嬉しいぜ」
腕組みしてニヤニヤ笑う黒髪黒目、色黒肌の暗殺者モドキ。広範囲の照明用に、高い位置にランタンを照らすとオレは思わず、肩をすくめてため息をついた。
「どうした?」
「いや、だってよ…どうせなら、綺麗なねーちゃんなら相手のしようもしがいもあったのによ? ンなふてぶてしいゴリラが相手と思うとため息の一つも出るってもんだろ? 今からでもチェンジ可能か?」
オレの軽口混じりの挑発に、奴は乗る様子もなかった。
「悪いな。今は俺のサービスタイム中でな? 時間いっぱいまでたっぷりと付き合ってやるよ。少なくとも、テメェが生きてる間って意味だけどな?」
ふん。まあ、いまは軽いジャブってとこだしな。乗らなきゃのらねぇで、まだやりようもあるってもんだ。
そのまま暗殺者もどき改めゴリラ野郎は、大ぶりで肉厚な短剣を構える。その得物にオレは目を剥いた。
「おいおい、汚ったねェ短剣だな! ちょっとバカ飛沫の手入れが悪いんじゃねぇの? 使った後は手入れぐらいしとけよ、不衛生だろうが! 言ってくれりゃ、砥石ぐレェなら貸してやらんでもねぇぜ?」
ところどころ黒ずんだ血糊がこびりついた短剣なんぞ、よく持つ気になれるもんだ! あんな短剣で切りつけられてたまるかよ! いやまあ…ヤバげな毒とか塗られてても、それはそれで嫌だけどよ。半分マジなオレの提案に、ゴリラ野郎は暗殺者特有の虚ろな笑みを浮かべて刀身を舐めた。うげ、悪趣味!
「問題ないさ、武器なんざ使い捨てだ。そろそろ行くぞ?」
チッ、しょーがねぇな。まあいいさ、要は斬られなきゃいいんだろ! オレは愛用の短剣を二本取り出して逆手に構えた。
「いいご身分だよな、オレなんぞ金がねぇから武器は大事に大事に手入れしてるぜ? なんなら、切れ味試してやろうか? 暗殺者ってのは、さぞかし儲かる仕事なんだろうな…。良いぜ、来いよ」
同時にゴリラが、意外と軽いステップで踏み込む。おーお、頑張るねぇゴリラ! だが俺の方が数段速い! 軽く躱すとオレからも挨拶代わりに斬り込む。これまた躱されて、オレもゴリラ野郎と距離をとった。そしてのまま、しばらくの沈黙。壁や天井から滴る水が寒々しく音を立てる。ややあって、ゴリラが口を開いた。
「すまねぇな。俺は一人殺る都度、一本ずつ武器を用意するクセがついてんだよ。それが俺なりの、死者への敬意の表し方でな? 今回は時間がなくて、前のやつを渋々使ってんだ悪く思うなよ」
ほほう、暗殺者としての流儀ってやつか。まあオレには関係ねぇけどな。
「構わねぇぜ? どっちみち俺、簡単にやられるつもりもねぇし。いちいち新しい武器用意するのが手間ってんなら、もう2度と用意する必要もなくしてやるよ。いやあ、オレ様って親切♪」
それからしばらく、俺とゴリラの間に銀光と火花が交互に飛び交った。右、左と繰り出される攻撃に合わせて俺もステップを踏んで躱す。素人目に見りゃ、二人して洗練された剣舞でも舞っているように見えるんだろうよ。だが…この辺りで頃合いかね?
「ったく、オメー案外、中途半端だな」
幾度も刃を合わせて、軽口ついでにオレはわずかに乱れた息を整える。そのセリフが意味不明だったのか…訝しげな視線をオレに向けた。
「一撃一撃の重さじゃ、デュエルに遠く及ばねえ。かと言って速さでもラスファに敵わねぇ。鋭さにいたっちゃ、このオレにも全く届かねぇ。どう考えたってオメー、暗殺者に向いてねぇわ。なんなら、良い就職先の世話でもしてやろうか? ちょうど、うちの酒場で募集中なんだが、ウェイターとかどうよ? 暗殺者なんかやってるより、ずーっとお似合いだぜ?」
軽口に織り込んだ、パンチのきいた皮肉に流石に奴は反応を返しやがった。よっしゃ、そうこなくちゃな!
烈火のごとく目を血走らせ、汚れた短剣を振り回す。気合いは確かに増しただろうよ。だが、怒りに呑まれて攻撃が雑に、そして鈍くなり始めた。怒り任せの乱雑な剣戟なんざ、見切るまでもねぇ。鼻息も荒くごっつい短剣を振り回すが、オレは鼻唄混じりで軽々と躱しまくる。
「おいおい、オメーなんのために帝国なんぞに雇われたんだよ? その実力程度なら、捨て石もいいところだぜ? 悪りぃ事は言わねぇからよ、今からでも田舎に引っ込んで畑でも耕せよ。人生、平和が一番だぜ? その程度の腕でのし上がろうって腹だろうが、世の中そんな甘くねぇぜ?」
やつの神経を逆なでするように、オレは言葉を重ねる。確かにオレにはデュエルほどの武力もねぇ。ラスファと違って魔力もねぇ。オレの最大の武器は短剣と並んでもう一つ、この口先なんだからよ。どんな相手だろうと、何語を話すやつだろうとオレ様には関係ねぇ。どんな相手でも、言葉を理解するやつならこっちのもん。この舌先一つで、いくらでも翻弄してやラァ!
「ってか、オメー間違っても、鍛冶屋に就職なんかするなよ? 武器の手入れが悪すぎて、みてみろよ。ハエが止まってるぜ?」
そうこうしているうちに、奴がだんだんち焦れて来やがった。オレとしちゃ、もうちっとは無駄に動いてもらって消耗してもらいてぇんだけどよ。
だが、奴にはもう一つの隠し玉が存在しやがった!
「貴様だけは許さん…! 原型も残さず叩き潰してくれる!」
そう言うとゴリラ野郎は懐から取り出した何かを口に放り込み、奥歯で噛み潰した。がりっという、妙に生々しい音が聞こえる。その直後、オレは思わず目を見張った。やつの体がひとまわり大きくなった気がする。いや、実際にでかくなってやがるのか?
苦痛のうめき声を聴きながら、オレは素早く逃走準備とばかりにランタンを手元に取り戻す。その間にもメキメキと体が音を立てて膨れ上がり、ちぎれた服が弾け飛ぶ。そして、ごつい胸板が黒い毛に覆われていった。
ったく、ガキども除いて三人、揃ってタイマン勝負とはね。
初っ端に引き離されたデュエルは別口の通路に行っちまってる。さっき聞こえたかすかな金属音は、楽しいパーティの真っ最中ってか?
ラスファの奴も、あの金髪海藻頭の精霊使いに下の階層に落とされちまって勝負ときた。
そんで、崩落に巻き込まれかけて慌てて逃げたオレの前には…。
「やっとテメェと勝負できて嬉しいぜ」
腕組みしてニヤニヤ笑う黒髪黒目、色黒肌の暗殺者モドキ。広範囲の照明用に、高い位置にランタンを照らすとオレは思わず、肩をすくめてため息をついた。
「どうした?」
「いや、だってよ…どうせなら、綺麗なねーちゃんなら相手のしようもしがいもあったのによ? ンなふてぶてしいゴリラが相手と思うとため息の一つも出るってもんだろ? 今からでもチェンジ可能か?」
オレの軽口混じりの挑発に、奴は乗る様子もなかった。
「悪いな。今は俺のサービスタイム中でな? 時間いっぱいまでたっぷりと付き合ってやるよ。少なくとも、テメェが生きてる間って意味だけどな?」
ふん。まあ、いまは軽いジャブってとこだしな。乗らなきゃのらねぇで、まだやりようもあるってもんだ。
そのまま暗殺者もどき改めゴリラ野郎は、大ぶりで肉厚な短剣を構える。その得物にオレは目を剥いた。
「おいおい、汚ったねェ短剣だな! ちょっとバカ飛沫の手入れが悪いんじゃねぇの? 使った後は手入れぐらいしとけよ、不衛生だろうが! 言ってくれりゃ、砥石ぐレェなら貸してやらんでもねぇぜ?」
ところどころ黒ずんだ血糊がこびりついた短剣なんぞ、よく持つ気になれるもんだ! あんな短剣で切りつけられてたまるかよ! いやまあ…ヤバげな毒とか塗られてても、それはそれで嫌だけどよ。半分マジなオレの提案に、ゴリラ野郎は暗殺者特有の虚ろな笑みを浮かべて刀身を舐めた。うげ、悪趣味!
「問題ないさ、武器なんざ使い捨てだ。そろそろ行くぞ?」
チッ、しょーがねぇな。まあいいさ、要は斬られなきゃいいんだろ! オレは愛用の短剣を二本取り出して逆手に構えた。
「いいご身分だよな、オレなんぞ金がねぇから武器は大事に大事に手入れしてるぜ? なんなら、切れ味試してやろうか? 暗殺者ってのは、さぞかし儲かる仕事なんだろうな…。良いぜ、来いよ」
同時にゴリラが、意外と軽いステップで踏み込む。おーお、頑張るねぇゴリラ! だが俺の方が数段速い! 軽く躱すとオレからも挨拶代わりに斬り込む。これまた躱されて、オレもゴリラ野郎と距離をとった。そしてのまま、しばらくの沈黙。壁や天井から滴る水が寒々しく音を立てる。ややあって、ゴリラが口を開いた。
「すまねぇな。俺は一人殺る都度、一本ずつ武器を用意するクセがついてんだよ。それが俺なりの、死者への敬意の表し方でな? 今回は時間がなくて、前のやつを渋々使ってんだ悪く思うなよ」
ほほう、暗殺者としての流儀ってやつか。まあオレには関係ねぇけどな。
「構わねぇぜ? どっちみち俺、簡単にやられるつもりもねぇし。いちいち新しい武器用意するのが手間ってんなら、もう2度と用意する必要もなくしてやるよ。いやあ、オレ様って親切♪」
それからしばらく、俺とゴリラの間に銀光と火花が交互に飛び交った。右、左と繰り出される攻撃に合わせて俺もステップを踏んで躱す。素人目に見りゃ、二人して洗練された剣舞でも舞っているように見えるんだろうよ。だが…この辺りで頃合いかね?
「ったく、オメー案外、中途半端だな」
幾度も刃を合わせて、軽口ついでにオレはわずかに乱れた息を整える。そのセリフが意味不明だったのか…訝しげな視線をオレに向けた。
「一撃一撃の重さじゃ、デュエルに遠く及ばねえ。かと言って速さでもラスファに敵わねぇ。鋭さにいたっちゃ、このオレにも全く届かねぇ。どう考えたってオメー、暗殺者に向いてねぇわ。なんなら、良い就職先の世話でもしてやろうか? ちょうど、うちの酒場で募集中なんだが、ウェイターとかどうよ? 暗殺者なんかやってるより、ずーっとお似合いだぜ?」
軽口に織り込んだ、パンチのきいた皮肉に流石に奴は反応を返しやがった。よっしゃ、そうこなくちゃな!
烈火のごとく目を血走らせ、汚れた短剣を振り回す。気合いは確かに増しただろうよ。だが、怒りに呑まれて攻撃が雑に、そして鈍くなり始めた。怒り任せの乱雑な剣戟なんざ、見切るまでもねぇ。鼻息も荒くごっつい短剣を振り回すが、オレは鼻唄混じりで軽々と躱しまくる。
「おいおい、オメーなんのために帝国なんぞに雇われたんだよ? その実力程度なら、捨て石もいいところだぜ? 悪りぃ事は言わねぇからよ、今からでも田舎に引っ込んで畑でも耕せよ。人生、平和が一番だぜ? その程度の腕でのし上がろうって腹だろうが、世の中そんな甘くねぇぜ?」
やつの神経を逆なでするように、オレは言葉を重ねる。確かにオレにはデュエルほどの武力もねぇ。ラスファと違って魔力もねぇ。オレの最大の武器は短剣と並んでもう一つ、この口先なんだからよ。どんな相手だろうと、何語を話すやつだろうとオレ様には関係ねぇ。どんな相手でも、言葉を理解するやつならこっちのもん。この舌先一つで、いくらでも翻弄してやラァ!
「ってか、オメー間違っても、鍛冶屋に就職なんかするなよ? 武器の手入れが悪すぎて、みてみろよ。ハエが止まってるぜ?」
そうこうしているうちに、奴がだんだんち焦れて来やがった。オレとしちゃ、もうちっとは無駄に動いてもらって消耗してもらいてぇんだけどよ。
だが、奴にはもう一つの隠し玉が存在しやがった!
「貴様だけは許さん…! 原型も残さず叩き潰してくれる!」
そう言うとゴリラ野郎は懐から取り出した何かを口に放り込み、奥歯で噛み潰した。がりっという、妙に生々しい音が聞こえる。その直後、オレは思わず目を見張った。やつの体がひとまわり大きくなった気がする。いや、実際にでかくなってやがるのか?
苦痛のうめき声を聴きながら、オレは素早く逃走準備とばかりにランタンを手元に取り戻す。その間にもメキメキと体が音を立てて膨れ上がり、ちぎれた服が弾け飛ぶ。そして、ごつい胸板が黒い毛に覆われていった。
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