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mission 5 冒険者は 期間限定教師?

課題提出の時間

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Side-デュエル 15

 翌日。俺たちはエルダードへの帰路についていた。定期的に行き交う乗合馬車の中で、何気なく外を眺める。
 のどかな田園風景を突っ切るように延びる街道には、たまにすれ違う荷馬車が砂埃を上げていく。俺たちの他にも乗客はそこそこ多く、大半は観光客と思われた。

「けっこう楽しかったねー」
 アーシェがポツリとこぼした呟きをすかさずラグが拾い上げる。
「ええ、ええ! やはり教師って素晴らしい職業ですわ! 大変な仕事ですが、やりがいがありましたわ…」
「でもさ、生徒で面白い子がいてさ…」

 少女たちのさえずり声を背で聞きながら、俺はウトウトと舟を漕ぐ。暖かい日差しは眠気を誘うには十分だ…。浅い眠りの中で、俺は別れのシーンを思い返していた。



「「「せんせー!!!」」」
「「「ありがとー!!!」」」

「オレさ、アーチせんせーの宿題解っちゃった! あのロープと崖のやつ?」
 朝イチでアーチに教わった生徒らしい子供たちが一斉に集まってきた。どうも以前の課題の答えが判ったらしい。崖っぷちに追い詰められて追手からどう逃げるか、という内容と思われるが…。

「うんうん! じゃあ一緒に言おうか! せーの…」
「「「「ロープで一気に崖を降りて、下からロープを燃やしちゃう!!」」」」
 集まった子供たちの誰もが自信に目をきらめかせながら、アーチの答えを待っている。
 ややあってアーチが口を開いた。

「惜しい、半分だけ正解だ!」
「「「「え~!! じゃあ正解は?」」」」
 騒ぐ子供たちに、奴は心底嬉しそうに笑みを深める。

「いいか、ロープってのは硬く締められてるから、実は思ったほど急にゃ燃えねぇんだ。だから、緊急時にゃあらかじめロープにランタンの油を染み込ませて燃えやすくするってのが定石だ。冒険者ってのは、とっさの判断が生死を分けることが多い。いろんな事態を想定して準備するってことが大事なんだぜ」

 その答えに子供たちが感心したようにうなる。

 だが俺は知っている。うっかり人妻に手を出しかけた時に、その油ロープを使って屋敷の二階から降りたせいで滑って派手に落っこちた事件を。あの時は大変だった。

 奴から学ぶ事も多いが、この女癖まで真似るんじゃないぞ子供たち…。


 その後は村をあげての盛大なお見送り。
 涙を流しながらの見送りにもらい泣きしたラグがアーシェに慰められたり、ある意味で狙われてたラスファをどさくさ紛れで揉みくちゃにする女の子たちがいたりと賑やかなものだった。

「…また来てもいいかもな」
 そして暖かい日差しの中、ぽこぽこと軽快に蹄を鳴らして乗合馬車は帰路についた。
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