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mission 5 冒険者は 期間限定教師?

追加授業三時限目・覚悟のありよう 後編

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Side-アーシェ 5

「戦うことは、決して格好いいことではない。戦うことは命のやり取りをするということだ。殺さなければ殺されるという場面だって少なくない。避けられる戦いだってあるが、そうはいかないことも多い」

  デュエルの起こす波紋が、静かに広がっていくのを感じた。いちいち正論すぎて、一緒に冒険している自分の背筋も伸びる。

「…冒険者志望が多いようだが実際に目指すなら殺す覚悟と殺される覚悟、それを常に忘れるな。でないと自分が真っ先に死ぬことになる。
   冒険者に限らず、戦いに身を置くということはそういう事だ。それだけは肝に銘じておいてくれ」

  授業が始まるまで、冒険者への憧れを見せていた教え子たち。でも、今は戦うことへの認識が一気に変わったみたいだった。
「安易に冒険者を目指して、あっさりと死んでいく話はよく耳にする。俺も仲間を多く亡くしてきたから、君たちに同じ轍を踏んで欲しくない。何事も生きてこそだ」

  インパクトの多きすぎる授業。賛否両論ありそうだけど、これはデュエルなりの愛情を伝える手段だった。元傭兵だからこそわかる、命のやり取りと重さ。平和な日常生活を送る一般の人に正しく伝えるために、あえてショッキングな方法を取る目的。普段のデュエルからは想像つかない厳しさだった。

「実地で身につけた思いだからこそ、伝わるものもありますわ」
  ラグちゃんがハンカチを握りしめて、デュエルを賞賛する。
「うん…でも、これを見たら冒険者の夢を壊しちゃうかもしれないよ…? あたし達だって、結構怖い思いしもてるし」

  夢を持つのはいい事。でも、現実を知るのはもっと大切。
  多分デュエルは、覚悟を持つ間もなく傭兵になってたんじゃないかな? 命のやり取りに対する選択肢もなく…。だからこそ自分と同じ轍を踏ませないために、こんな授業をしたんじゃ?

  そこまで言った直後、生徒から手が上がった。確かあの砦の時にいた…ランディ?
「それでもオレ、戦えるようになりたい! この村を魔物や盗賊から守りたい!」
「…ランディ」
「ここはオレの育った村だ! この学校も家も、みんなみんなオレが守るんだ! それまでにしっかり強くなってさ!」
「その言葉を聞きたかった」

  その言葉にデュエルは晴れ晴れとした笑みを浮かべた。中途半端な覚悟ではない、教え子のその言葉。
  この言葉を聞いただけで、デュエルは報われたんじゃないかな? 

「ねーデュエルせんせー、何かポーズして!」
「うん、ムキムキ見たいー!」
  子供達から上がる無邪気な声。思いもよらないリクエストにオタオタしながら、その最後の授業に幕が下りた。

  あたしもラグちゃんも、ケタケタ笑う中、終業の鐘が鳴る。
  もうすぐ、この依頼も終わりなんだな…。
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