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mission 5 冒険者は 期間限定教師?
追加授業二時限目・種族と偏見
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Side-アーシェ 3
アーちんに続いて、今度は兄貴の授業になった。気のせいじゃないよね、周りで見学する女の先生が増えたのって…。
特にあたしのすぐそばで授業を見学するオバちゃん先生の鼻息が荒い。教室に入ってきた兄貴に、オバちゃん先生が華やぐピンク色のオーラを出した。でもこれ絶対兄貴気づいてないよね。
「最後の授業のテーマは、役割や偏見についてだ」
そのある意味異様な空気を物ともせず、兄貴は授業を始めた。
「冒険者というのは、それぞれ違う特技を持ったメンバーで構成されている。前線で戦う者に、後方から魔法を使う者。全員同じ特技で集まって冒険者になった…というのも、なくはないんだが」
ああ、確かに。あたしは真っ赤なビキニアーマーのアマゾネス軍団を思い出した。あれは極端すぎる冒険者よね。
「例えば戦士が前線で敵を止めるお陰で、魔術師は魔法を飛ばせる。逆に、前線で戦士が敵を食い止めてくれているお陰で呪文の詠唱ができる…と行った具合に、互いに助け合う事は大切なこと。日常でも信頼関係というものは必要な事だ」
兄貴の授業をうっとりと聞き入る外野。子供は飽きたみたいで聞いちゃいない。ちょっと…しっかりしなよ兄貴…。
「魔術師には偏見がありがちだが、実のところ大半が真面目な学生だ。そんな偏見が最初にあったら、信頼関係も協力ももてはしない。種族についても同様だ。ところで…」
そこで兄貴は問う。
「異種族については、どんなイメージを持っている?」
兄貴に指された女の子は、おどおどしながら蚊の鳴くような声で答えた。
「え、と…ちょっと怖そう」
「…まあ、そんなとこだろうな」
ちいさくため息つきながら兄貴は女の子を座らせる。
そこで、兄貴はずっと身につけていた耳隠しのバンダナをいきなり解いた。露わになる、エルフ族特有の細長い耳。
すると、教室中に激震が走った!
ちょ…ちょっとなにしてんの兄貴! ただでさえ目立つの嫌いなのに、そんなことしたら…! 何らしくないコトやらかしてるの!
あたしの動揺をよそに、兄貴は平然と問いを重ねる。
「私はこういう種族の者だが、これで何か印象が変わったか? 急に怖いと思ったか?」
その言葉に、教室は静かになった。稀少種族で知られるエルフ族。通常は出会うことなどほぼ無い種族の一人が、ずっと目の前にいたなんて思わなかったんだろうな。
しばらくの沈黙の後、一人が恐る恐る手を上げた。砦で助けた子の一人、サシャだ。
「びっくりしたけど、せんせー怖くない。いろんなこと教えてくれたし、あたしせんせー好き」
サシャの発言を皮切りに、あちこちで賛同するように手が上がる。
そういえば思い出した。あたしの隣に座ってるオバちゃん先生は、軽く異種族に嫌悪感を持っていたはず。ハーフエルフのあたしにも風当たりはキツめだった。でも…。
兄貴の正体を見て、教室の現状を見て。少なからず動揺しているみたいに辺りを見回している。
この先生の異種族嫌悪が、今すぐ治るとは思ってない。でも、何かが変わるきっかけにはなるかもしれない。
この教室の子供達みたいに柔軟に受け入れる事はできなくても。
何かのきっかけにはなるかもしれない。あたしはそう信じたかった。
アーちんに続いて、今度は兄貴の授業になった。気のせいじゃないよね、周りで見学する女の先生が増えたのって…。
特にあたしのすぐそばで授業を見学するオバちゃん先生の鼻息が荒い。教室に入ってきた兄貴に、オバちゃん先生が華やぐピンク色のオーラを出した。でもこれ絶対兄貴気づいてないよね。
「最後の授業のテーマは、役割や偏見についてだ」
そのある意味異様な空気を物ともせず、兄貴は授業を始めた。
「冒険者というのは、それぞれ違う特技を持ったメンバーで構成されている。前線で戦う者に、後方から魔法を使う者。全員同じ特技で集まって冒険者になった…というのも、なくはないんだが」
ああ、確かに。あたしは真っ赤なビキニアーマーのアマゾネス軍団を思い出した。あれは極端すぎる冒険者よね。
「例えば戦士が前線で敵を止めるお陰で、魔術師は魔法を飛ばせる。逆に、前線で戦士が敵を食い止めてくれているお陰で呪文の詠唱ができる…と行った具合に、互いに助け合う事は大切なこと。日常でも信頼関係というものは必要な事だ」
兄貴の授業をうっとりと聞き入る外野。子供は飽きたみたいで聞いちゃいない。ちょっと…しっかりしなよ兄貴…。
「魔術師には偏見がありがちだが、実のところ大半が真面目な学生だ。そんな偏見が最初にあったら、信頼関係も協力ももてはしない。種族についても同様だ。ところで…」
そこで兄貴は問う。
「異種族については、どんなイメージを持っている?」
兄貴に指された女の子は、おどおどしながら蚊の鳴くような声で答えた。
「え、と…ちょっと怖そう」
「…まあ、そんなとこだろうな」
ちいさくため息つきながら兄貴は女の子を座らせる。
そこで、兄貴はずっと身につけていた耳隠しのバンダナをいきなり解いた。露わになる、エルフ族特有の細長い耳。
すると、教室中に激震が走った!
ちょ…ちょっとなにしてんの兄貴! ただでさえ目立つの嫌いなのに、そんなことしたら…! 何らしくないコトやらかしてるの!
あたしの動揺をよそに、兄貴は平然と問いを重ねる。
「私はこういう種族の者だが、これで何か印象が変わったか? 急に怖いと思ったか?」
その言葉に、教室は静かになった。稀少種族で知られるエルフ族。通常は出会うことなどほぼ無い種族の一人が、ずっと目の前にいたなんて思わなかったんだろうな。
しばらくの沈黙の後、一人が恐る恐る手を上げた。砦で助けた子の一人、サシャだ。
「びっくりしたけど、せんせー怖くない。いろんなこと教えてくれたし、あたしせんせー好き」
サシャの発言を皮切りに、あちこちで賛同するように手が上がる。
そういえば思い出した。あたしの隣に座ってるオバちゃん先生は、軽く異種族に嫌悪感を持っていたはず。ハーフエルフのあたしにも風当たりはキツめだった。でも…。
兄貴の正体を見て、教室の現状を見て。少なからず動揺しているみたいに辺りを見回している。
この先生の異種族嫌悪が、今すぐ治るとは思ってない。でも、何かが変わるきっかけにはなるかもしれない。
この教室の子供達みたいに柔軟に受け入れる事はできなくても。
何かのきっかけにはなるかもしれない。あたしはそう信じたかった。
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