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mission 5 冒険者は 期間限定教師?
追加補習六時間目・魔力の理由
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Side-デュエル 6
最奥の部屋に近づくにつれ、どういうわけか空気が濃密になるような感覚に襲われた。これをどう表現すればいいものか…。例えるなら泳いでいる水に僅かにとろみがついた、というような感じだろうか? 感じかたに個人差はあるが、どうやらコレが濃い魔力の感覚らしい。
「こんな場所が近くにあったら、確かに植物も育つわ…ヘタな肥料よりも効果絶大ね」
「育ちすぎて魔物化しそうだけどな」
「兄貴、そのジョーク笑えない」
アーシェとラスファの会話からも、周囲に与える影響の大きさが分かる。だが…。
「なあ…この魔力って、常にこんなに漏れ出てるのか? その…なんとなく危なくないか?」
魔力には詳しくないが、俺が持った素朴な疑問に連れていた子供たちが答える。
「違うよせんせー。この砦、前にもこっそり入ったことあるけどさ。こんなになってるの見たことない」
「うんうん。ここ数日からかな?」
その会話に、サシャはポツリと答えた。
「あのね…『お友達』が…押さえてくれてたの、ずっと。そうじゃないと、溢れちゃうから」
…抑えてくれていた?
「ということは、何か異変があったということか?」
同様に気になったのか、ラスファがサシャに目線を合わせる。小さく頷くと、サシャは話し始めた。
「この砦にもともといた中の魔物たちは、一番奥の部屋には入らなかった。でも、そこに盗賊さんたちが住み着いてた」
ああ…魔力が全くないからこそ、都合良く判断して住み着いたのか。魔物も恐れる何かがあったという事にも気づかずに。
「んで…奥に住み着いたお馬鹿で鈍感な盗賊団が、そこにあった何かを呼び起こしちまった、と?」
アーチがニヤつきながら辛辣な感想を口にする。ホント楽しそうだなコイツ。不謹慎にも程がある。
「察するに、その盗賊団はギルドに非登録の連中だろうぜ。って事は…ギルドの連中に見つかったら、早晩『処される』だろうよ。奥のやつに喰われるか、処されるか…? どっちみち活動期間は長くねぇぜ」
声をひそめるアーチの衝撃的な事実に、俺は納得した。コイツは帰り次第、この事件がなくても盗賊団のことをギルドに報告する気だったんだと。幸いにして大きな被害は出ていないが、大々的に活動し始めればタダじゃ済まないだろう。
そうこう話しているうちに、最奥の扉の前まで来てしまった。
「…行くぞ」
独り言のようにつぶやくと、俺は扉に手をかけた。
最奥の部屋に近づくにつれ、どういうわけか空気が濃密になるような感覚に襲われた。これをどう表現すればいいものか…。例えるなら泳いでいる水に僅かにとろみがついた、というような感じだろうか? 感じかたに個人差はあるが、どうやらコレが濃い魔力の感覚らしい。
「こんな場所が近くにあったら、確かに植物も育つわ…ヘタな肥料よりも効果絶大ね」
「育ちすぎて魔物化しそうだけどな」
「兄貴、そのジョーク笑えない」
アーシェとラスファの会話からも、周囲に与える影響の大きさが分かる。だが…。
「なあ…この魔力って、常にこんなに漏れ出てるのか? その…なんとなく危なくないか?」
魔力には詳しくないが、俺が持った素朴な疑問に連れていた子供たちが答える。
「違うよせんせー。この砦、前にもこっそり入ったことあるけどさ。こんなになってるの見たことない」
「うんうん。ここ数日からかな?」
その会話に、サシャはポツリと答えた。
「あのね…『お友達』が…押さえてくれてたの、ずっと。そうじゃないと、溢れちゃうから」
…抑えてくれていた?
「ということは、何か異変があったということか?」
同様に気になったのか、ラスファがサシャに目線を合わせる。小さく頷くと、サシャは話し始めた。
「この砦にもともといた中の魔物たちは、一番奥の部屋には入らなかった。でも、そこに盗賊さんたちが住み着いてた」
ああ…魔力が全くないからこそ、都合良く判断して住み着いたのか。魔物も恐れる何かがあったという事にも気づかずに。
「んで…奥に住み着いたお馬鹿で鈍感な盗賊団が、そこにあった何かを呼び起こしちまった、と?」
アーチがニヤつきながら辛辣な感想を口にする。ホント楽しそうだなコイツ。不謹慎にも程がある。
「察するに、その盗賊団はギルドに非登録の連中だろうぜ。って事は…ギルドの連中に見つかったら、早晩『処される』だろうよ。奥のやつに喰われるか、処されるか…? どっちみち活動期間は長くねぇぜ」
声をひそめるアーチの衝撃的な事実に、俺は納得した。コイツは帰り次第、この事件がなくても盗賊団のことをギルドに報告する気だったんだと。幸いにして大きな被害は出ていないが、大々的に活動し始めればタダじゃ済まないだろう。
そうこう話しているうちに、最奥の扉の前まで来てしまった。
「…行くぞ」
独り言のようにつぶやくと、俺は扉に手をかけた。
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