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mission 5 冒険者は 期間限定教師?
六時限目・精霊属性とレアな逸材
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Side-ラスファ 2
あれから数日。
あの後は淡々と冒険者と教師という日々をこなしている。
魔物学に薬草学、魔法学…。時には才能を認めた教え子に特別な補習などを組みながら、日々は進む。
かくいう私も精霊魔法の才能を見出した数人に、手ほどきをしているところだ。そう広くない校庭の逆側の隅ではデュエルが武術訓練の素振りを、さらに別の場所ではアーチが軽業などの体術を教えている。
生徒は皆驚くほどやる気に満ちており、次々と特殊技能を自分のものにしていた。屋内ではアーシェやラグが何か教えていると思われる。
「今日は属性を確認してみるところだったな」
「せんせー、属性って何?」
勢いよくあげられた、小さな手。今まで縁がなかった魔法という事柄について学べることが嬉しくて仕方ないのか、大きな目が輝いている。
「かいつまんで言うと、精霊の種類だな。要するに、どの種類の精霊と相性がいいかの確認だ」
精霊は気まぐれで嫉妬深い。敵に回せば恐ろしいが、一度認められたらこの上なく頼もしい味方になる。属性はどう決まるかというと…概ね性格によって決まる。ミもフタもないが、そういうことなのだから仕方ない。
「よーし、まずはオレからだな!」
最初に名乗りを上げたのは最も血の気の多い、ベルクという名の男子だ。やんちゃを絵に描いたような彼は、おそらく火属性だろう。
「先ずは、火属性から試してみるか」
「わかったよせんせー!」
属性の見極めは単純だ。魔力を込めながら、それぞれの精霊に対応した特殊なシンボルを空中に描く。相性がいいほど描かれたシンボルが強く輝くのだ。精霊魔法を行使する際にも、この動作は求められる。故に基本、片手を空ける必要があるのだ。
「おおお、スゲー!! アチアチアチ!」
数パターン試したが、やはり彼は火属性で間違いなかったようだ。空中に燃え上がるように『火』のシンボルが熱く浮かび上がる。
彼に続いて次々と教え子が宙に文字を描く。歓声やため息がその場に満ちるが、そのうち一人が半泣きで私の上着を引っ張った。他の子に比べて目立たない印象で、サシャという黒髪の少女だ。
「せんせー…あたし、どれもあまり光らない…」
妙な話だ。通常、地水火風の四属性どれかには当てはまるはずなのだが…まさか…。
「もしかして…。ちょっとこれを試してみるか?」
示して見せたのは、少々特殊な位置付けのレア属性。光と闇、植物に雷や…氷。
「光った!!! せんせー、光ったよ!!」
驚いた。特殊属性全てに対応とは…本気で珍しいタイプだ。他の子に肩を叩かれながら満面の笑みを見せるサシャ。
もしかしたら、とんでもない逸材を発掘してしまったのかもしれない…。
「せんせーは? せんせーは、なんの属性?」
無邪気な瞳が集中する。あー…聞かれると思ったが、仕方ない。
描くのは『氷』のシンボル。サシャが飛び跳ねて喜ぶ。
「あー! あたしとお揃い! やったー!」
「元々は別の属性だったんだが、途中で属性が変わることがある。一応、覚えておくといい」
「「「「「はーい!!」」」」」
本日の授業は、ここまで!
あれから数日。
あの後は淡々と冒険者と教師という日々をこなしている。
魔物学に薬草学、魔法学…。時には才能を認めた教え子に特別な補習などを組みながら、日々は進む。
かくいう私も精霊魔法の才能を見出した数人に、手ほどきをしているところだ。そう広くない校庭の逆側の隅ではデュエルが武術訓練の素振りを、さらに別の場所ではアーチが軽業などの体術を教えている。
生徒は皆驚くほどやる気に満ちており、次々と特殊技能を自分のものにしていた。屋内ではアーシェやラグが何か教えていると思われる。
「今日は属性を確認してみるところだったな」
「せんせー、属性って何?」
勢いよくあげられた、小さな手。今まで縁がなかった魔法という事柄について学べることが嬉しくて仕方ないのか、大きな目が輝いている。
「かいつまんで言うと、精霊の種類だな。要するに、どの種類の精霊と相性がいいかの確認だ」
精霊は気まぐれで嫉妬深い。敵に回せば恐ろしいが、一度認められたらこの上なく頼もしい味方になる。属性はどう決まるかというと…概ね性格によって決まる。ミもフタもないが、そういうことなのだから仕方ない。
「よーし、まずはオレからだな!」
最初に名乗りを上げたのは最も血の気の多い、ベルクという名の男子だ。やんちゃを絵に描いたような彼は、おそらく火属性だろう。
「先ずは、火属性から試してみるか」
「わかったよせんせー!」
属性の見極めは単純だ。魔力を込めながら、それぞれの精霊に対応した特殊なシンボルを空中に描く。相性がいいほど描かれたシンボルが強く輝くのだ。精霊魔法を行使する際にも、この動作は求められる。故に基本、片手を空ける必要があるのだ。
「おおお、スゲー!! アチアチアチ!」
数パターン試したが、やはり彼は火属性で間違いなかったようだ。空中に燃え上がるように『火』のシンボルが熱く浮かび上がる。
彼に続いて次々と教え子が宙に文字を描く。歓声やため息がその場に満ちるが、そのうち一人が半泣きで私の上着を引っ張った。他の子に比べて目立たない印象で、サシャという黒髪の少女だ。
「せんせー…あたし、どれもあまり光らない…」
妙な話だ。通常、地水火風の四属性どれかには当てはまるはずなのだが…まさか…。
「もしかして…。ちょっとこれを試してみるか?」
示して見せたのは、少々特殊な位置付けのレア属性。光と闇、植物に雷や…氷。
「光った!!! せんせー、光ったよ!!」
驚いた。特殊属性全てに対応とは…本気で珍しいタイプだ。他の子に肩を叩かれながら満面の笑みを見せるサシャ。
もしかしたら、とんでもない逸材を発掘してしまったのかもしれない…。
「せんせーは? せんせーは、なんの属性?」
無邪気な瞳が集中する。あー…聞かれると思ったが、仕方ない。
描くのは『氷』のシンボル。サシャが飛び跳ねて喜ぶ。
「あー! あたしとお揃い! やったー!」
「元々は別の属性だったんだが、途中で属性が変わることがある。一応、覚えておくといい」
「「「「「はーい!!」」」」」
本日の授業は、ここまで!
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