古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は（俺・オレ・私・あたし・わたくし）のターン〜

mission 5 冒険者は 期間限定教師？

三時限目・ノリノリ授業は大人気？

Side-アーチ 1

 さーて、次の授業はオレの出番だ！

「よーし、席につけよ！ これからオレの授業オンステージだ！」
  興味津々って面持ちで教卓のオレに視線が集まる。っへへ、これだぜこれ！ 自慢のリュートをかき鳴らすと、十五人ほどのチビ達からどよめきが上がる。

「オレはアーチボルトってんだ…アーチでいい。んじゃ…まずはいっちょ、オレたちの武勇伝からいってみようか！」
 とりあえず、オレは自前の曲を唄い上げた。あいつらには内緒で作り上げた、今までの武勇伝の数々！ 

 っつーても実際は、公おおやけにゃヤバすぎて曲にできねぇエピソードの方が多いんだがな。それでもまあ、掴みは良かったと見える。ノリノリで手拍子を打ちながら歓声を上げ始めた。

 ちゃっかりと便乗して隅っこに陣取った教師…チェスターは、途中から入って来た。好奇心に負けたらしい。他にもあと二つあるクラスの連中も窓から覗き見に来ていた。
 まあこの村、確かに娯楽は少なそうだからな…。

 最後の一音をかき鳴らし終えると、周囲から割れんばかりの拍手が沸き起こった。へへ、どうよこの名演奏っぷりは！

「アーチ先生たち、ホントにゴブリンの大群にケンカ売ったのか？！」
「スッゲー！」
「昨日のデッカい、デュエル先生も強そうだったもんね！」
「あの砦、それならすぐに空っぽになっちゃうね！」
「怪我した先生たち、ひどい目にあってたからね…」

 ひとしきり称賛の声を浴びると、オレはおもむろにリュートを置いた。
「えー、もうおわりなの？ もっと冒険のお話し聞きたい！」
 教室に上がった不満の声は、サイコーの賛辞だぜ。

「そんじゃ、リクエストにお応えしてもうちょっと！ っつっても、今度はオメーらが考える番だ。前に体験した、ちょっとしたピンチをどうやって切り抜けたか…考えてみな？」
  再び上がったどよめきに被せて、オレはリュートを爪弾く。

「ちょっと前のことさ。オレらは依頼で、ある場所に向かった。そこで敵に追われることになっちまった。落ち合う場所を決めてバラバラに逃げたんだが、オレを追ってきたやつは特別しつこかった」

  オレの語りに、チビどもは真剣な眼差しを向けてくる。よしよし、いいぜ？
  さらにオレは続けた。
「そのまま崖っぷちに追い詰められて、敵はまだ追っかけて来やがる…。そん時にオレが持ってた使えそうな物っつったら…石鹸とランタンの油にフック付きロープと目潰しの粉、あとはマッチと盗賊七つ道具くらいだ」

「せんせー、それって無事に逃げられたの？」
  手を挙げてチビの一人が質問する。オレはいっそう胸を張った。
「おうよ！ んじゃ問題だ！ そん中のいくつかを使って、オレは無事に追っ手をまいた上に逃げおおせた。どうやったかわかるか？ これ、宿題な。次の授業までに考えてみな！」