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short mission 4 宅配戦線、異常あり!
ある意味で修羅場
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Side-アーシェ 6
ぬる~い空気が流れる中、ゴブリンの怯えた唸りと甥の焦った声が響いてる。そんな中で倒れたご婦人たちも目を覚まし、使用人のみなさんも珍しいものを見るように遠巻きにしていた。
黒幕だったはずの領主の甥は、テコでも動かなくなったゴブリンを押したり引いたりしてあたしたちに向かわせようとしてるけど叶わず。みっともなくて見てらんないわ、全く。
「芸術神さまの事件で大量に倒したゴブリンの残党だったら、そりゃ向かってこれないわ。操られても記憶はあるみたいね。目の前でばんばん狩られる仲間たちの惨状も」
「…デスヨネー…」
そのうち血の気が多い奴が一匹だけ向かってくるけど…天井のシャンデリアから飛んできた、兄貴の炎の矢で吹っ飛ばされてこんがりと焼き上がった。
「兄貴、躊躇なさすぎ」
「いやそう言われても」
残ったゴブリンたちはますます小さくなってひとかたまりになる。こりゃダメだわ…。
「なんだか…可哀想になってきました」
ラグちゃんはそう言うけど、でもゴブリンはゴブリンだからね? ほっといてもご近所の迷惑にしかならないよ?
「あー…というわけでいい加減、負けを認めてくんね?」
アーちんの提案に、領主の甥は睨み返す。
「いやそう睨むなっての。オメーにとっても悪りィ話じゃねぇぜ?」
「黙れ!! いつまで震えてんだ、このウスノロども! 僕の言うことが聞けないのか! さっさとあいつら倒して来い!」
その一言で、ゴブリンたちの震えが止まった。眼光が鋭くなり、武器を握る手に力がこもる。
「そうだ、わかればいい!」
でもその武器…どこに向かってるのか分かってる?
そう…ゴブリンたちは、たしかに向かっていった。
領主の甥に向かって。
悲鳴と怒号、雄叫びと命乞い。
冷めた料理は弾け飛び、テーブルは崩れ落ちる。
通常なら召喚した者の言うことは聞くはずの魔物。でも不完全な召喚符が、これ以上もなく仇となった。
自分の意思が残った状態で、勝ち目ない敵に無理やり向かわされたら。
さらに自分をけしかける召喚者が、自分たちよりもはるかに弱かったら。
生物として取るだろう選択肢に、思いもつかなかった。相手の立場に配慮する気もなかった。
その結果が、この喜劇めいた幕引きに繋がったのだ。
この時の貴族たちの逃げっぷりはすごかった。さっき倒れてたはずのご婦人たちまで一斉に大広間の出口にダッシュで向かい、それでも戸口から好奇心全開で中をのぞいている。
いやもう、仕方ないんだけどさ。助けたくないんだけど、お仕事だから形だけでも助けに入らないといけないのよね。冒険者って、たまに辛いわー。
フルボッコにされてる領主の甥を引き剥がし、ついでに会場もゴブリンも片付けて…。
なんとか収拾がついた頃には、真夜中になっていた。
ぬる~い空気が流れる中、ゴブリンの怯えた唸りと甥の焦った声が響いてる。そんな中で倒れたご婦人たちも目を覚まし、使用人のみなさんも珍しいものを見るように遠巻きにしていた。
黒幕だったはずの領主の甥は、テコでも動かなくなったゴブリンを押したり引いたりしてあたしたちに向かわせようとしてるけど叶わず。みっともなくて見てらんないわ、全く。
「芸術神さまの事件で大量に倒したゴブリンの残党だったら、そりゃ向かってこれないわ。操られても記憶はあるみたいね。目の前でばんばん狩られる仲間たちの惨状も」
「…デスヨネー…」
そのうち血の気が多い奴が一匹だけ向かってくるけど…天井のシャンデリアから飛んできた、兄貴の炎の矢で吹っ飛ばされてこんがりと焼き上がった。
「兄貴、躊躇なさすぎ」
「いやそう言われても」
残ったゴブリンたちはますます小さくなってひとかたまりになる。こりゃダメだわ…。
「なんだか…可哀想になってきました」
ラグちゃんはそう言うけど、でもゴブリンはゴブリンだからね? ほっといてもご近所の迷惑にしかならないよ?
「あー…というわけでいい加減、負けを認めてくんね?」
アーちんの提案に、領主の甥は睨み返す。
「いやそう睨むなっての。オメーにとっても悪りィ話じゃねぇぜ?」
「黙れ!! いつまで震えてんだ、このウスノロども! 僕の言うことが聞けないのか! さっさとあいつら倒して来い!」
その一言で、ゴブリンたちの震えが止まった。眼光が鋭くなり、武器を握る手に力がこもる。
「そうだ、わかればいい!」
でもその武器…どこに向かってるのか分かってる?
そう…ゴブリンたちは、たしかに向かっていった。
領主の甥に向かって。
悲鳴と怒号、雄叫びと命乞い。
冷めた料理は弾け飛び、テーブルは崩れ落ちる。
通常なら召喚した者の言うことは聞くはずの魔物。でも不完全な召喚符が、これ以上もなく仇となった。
自分の意思が残った状態で、勝ち目ない敵に無理やり向かわされたら。
さらに自分をけしかける召喚者が、自分たちよりもはるかに弱かったら。
生物として取るだろう選択肢に、思いもつかなかった。相手の立場に配慮する気もなかった。
その結果が、この喜劇めいた幕引きに繋がったのだ。
この時の貴族たちの逃げっぷりはすごかった。さっき倒れてたはずのご婦人たちまで一斉に大広間の出口にダッシュで向かい、それでも戸口から好奇心全開で中をのぞいている。
いやもう、仕方ないんだけどさ。助けたくないんだけど、お仕事だから形だけでも助けに入らないといけないのよね。冒険者って、たまに辛いわー。
フルボッコにされてる領主の甥を引き剥がし、ついでに会場もゴブリンも片付けて…。
なんとか収拾がついた頃には、真夜中になっていた。
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